孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

世界人口70億人  家族計画による出生率コントロール 資源分配を巡る対立激化の懸念

2011-10-30 20:44:04 | 人口問題

(色が濃い国ほど人口増加率が高くなっています。人口減少に転じている日本や、日本以上に人口減少が激しいロシアなどは色が薄すぎて、まるで地図から消えてしまったように見えます。もちろん、人口減少・少子高齢化問題も人口爆発同様、深刻な問題です。 “flickr”より By Digital Dreams http://www.flickr.com/photos/digital_dreams/3902667852/

【「2030年までに第2の地球が必要となる」】
国連の推計によると、世界の人口が明日31日で70億人に達するそうです。
急速な人口爆発は、食糧・水・資源・エネルギーを巡る深刻な対立を招きかねませんが、人口抑制のカギである家族計画については、宗教的な保守派による避妊や中絶へのアレルギーがあって、国際的な取り組みはなされていないのが現状です。

****世界人口10月末で70億人、地球の限界はどこまで****
世界の公式人口はこの4半世紀足らずの間に20億人も増加し、来る10月31日に70億人に達しようとしている。今後も何十億人かの増加が見込まれる中、環境的破滅を回避できる道は唯一、資源利用の革命だけだと専門家たちは言う。

この60年で世界の出生率は約半分に減った。現在、女性1人当たりの子どもの数は平均2.5人だ。しかし、この値は実は国によって大きく異なる。地球人口が最終的に安定するのは90億人なのか、100億人なのか、150億人なのかはアフリカを中心とする人口増加の速い開発途上国にかかっている。

■2030年までに第2の地球が必要?
人類は増加するごとに、地球の資源をむさぼってもきた。米環境NPO、グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)の試算によると、現在のペースでいけば、人類の欲望を満たし排出物を吸収するためには、2030年までに第2の地球が必要となる。繁栄を支える化石燃料の使用に伴い温室効果ガスも排出し、気候変動によって、われわれの糧を生み出している地球の生態系自体をも破壊しようとしている。

2012年6月に行われる「国連地球サミット」(通称:Rio+20)の調整役の1人、仏外交官ブリス・ラロンド氏によると、人口増加によって、資源の利用方法は根本からの挑戦を迫られている。「2030年までにもう10億人増えるだろう。数十億の貧しい人びとのために、いかに食糧安全保障を向上し、基本的な公共サービスを提供しつつ、それを水や土地、エネルギーの利用を増やさずにできるかが問題だ」

■出生率抑える家族計画が鍵
出生率に歯止めがかかっていることで、世界人口は80億人程度で安定し、ひいては貧困国は救われ、天然資源への負担は減り、気候変動に対する脆弱性も抑えられるのではないかという専門家もいる。
 
自発的な受胎調節が鍵となるという主張もある。米調査研究機関、ウッドロー・ウィルソン国際センター「環境の変化と安全保障プログラム」のディレクター、ジェフ・ダベルコ氏は、女性が避妊手段を得られない場合の例としてソマリアを挙げる。
内戦と貧困に苦しめられながら、現在約1000万人のソマリア人口は、2050年までに2260万人に達すると予想されている。出生率は国別で8番目に高く、1世帯平均の子どもは7人だ。
国連児童基金(ユニセフ)によると、内戦が本格化する以前の段階で、すでにソマリアの子どもたちの3分の1は低体重だった。一方、既婚のソマリア人女性の99%は家族計画に接する機会がない。

一方、解決の道は貧困抑制と教育の向上にあり、特に女性の教育が重要だと主張する経済学者たちもいる。2010年のコロンビアの研究によると、家族計画によって下がった出生率はわずか10%足らずで、出生率低下の大きな要因は、生活の質の向上だった。

■国際会議でタブー化している人口問題
そうした中、地球の未来を形作るはずのさまざまな国際会議では現在、真っ向から人口増加に触れることはほとんどタブーだという。

過激な行動で知られる環境団体「シー・シェパード(SS)」のポール・ワトソン代表は、その変化をこう語る。「ストックホルム会議(1972年国連人間環境会議)に出席した時の1番の議題は、人口増加の制御不能状態についてだった。けれど、1992年のリオの会議(国連環境開発会議、地球サミット)に出た時には、それは議題に挙がらず、もう誰も話題にさえしていなかった」

人口統計に関する議題は同様に、地球人口が60億に達した2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット)でも不在だった。「地球の限界は何人か」という問いがなぜ、世界のサミットの場で不在なのだろう。

理由のひとつは、宗教的な保守派による避妊や中絶への反対だ。政治家たちも、頭痛の種にしかならない一方で、実際に起きるのは何十年も先の問題に取り組むことに、利益を見出さないのだろう。
しかし、一部で警告があるように「人口対策」とは、1970年代のインドで実施された強制避妊術や中国の「1人っ子政策」のような過ちと同意語で、男児偏重による人口の不均衡を招きかねない。【10月30日 AFP】
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家族計画と女性の地位
世界人口の今後の推移については、出生率次第ですが、今世紀末までに100億人に達すると見られていますが、出生率如何によっては150億人の可能性もあるとか。

****世界総人口、今世紀末には100億人に 国連白書****
国連人口基金(UNFPA)は26日、2011年版「世界人口白書」を発表し、世界総人口は今世紀末までに100億人に達するとの見通しを示した。出生率が少し上がれば150億人に達する可能性もあるという。

世界総人口は今月31日に70億人に達する。これを前に発表された同白書は、人口学的圧力によって貧困緩和や環境保護の面で非常に大きな課題が生じると警告。英ロンドンで白書を発表したUNFPAのBabatunde Osotimehinディレクターは、「全人類と地球にとって危機的な問題だ。挑戦であり、行動が必要とされる」と訴えた。

白書によると、世界総人口は2050年までに93億人、2100年までに100億人に達する見通し。特に出生率の高い国々で出生率がわずかでも上がれば、2050年に106億人、2100年に150億人に達する可能性もあるという。
一方、教育の改善や避妊技術の普及などで、60年前には女性1人あたり6人だった出生率は、現在では2.5人まで下がっている。それでも、世界総人口は毎年8000万人ずつ増え続けている。【10月27日 AFP】
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“宗教的な保守派による避妊や中絶への反対”については、アメリカでも社会を二分する問題となっており、特に、大統領選挙においても“踏み絵”として保守派から候補者へ突き付けられます。
アメリカがアフリカで支援するエイズ対策についても、宗教右派団体から支援を受けるブッシュ政権が、コンドームの使用より“禁欲”を重視する施策に転じたため、ウガンダなどでは減少していた感染率が上昇に転じた事例もあります。

そうした宗教的要素や中国の“一人っ子政策”のような国家的強制を除けば、家族計画による出生率のコントロールは社会における女性の地位と密接に繋がっています。
人口増加が著しいアフリカでの女性の地位が高まれば、出生率もある程度コントロールされるのでしょうが・・・。

女児の中絶、人身売買などによる“男児偏重による人口の不均衡”の事例は中国・インドだけでなく多くの地域で多々みられますが、これも“女性の地位”と表裏の関係にあります。

****不要」と名付けられたインド人少女150人、一斉に改名届****
インドで22日、両親に「不要」という名を付けられた少女100人以上が、女性差別撲滅に向けた運動の一環として、集団で改名を行った。インドの女性差別は、同国の男女人口比に大きな偏りを生み出している。

インド西部マハラシュトラ州で使われているマラティー語で「不要」を意味する「ナクサ(Nakusa)」と命名された女の子200人のうちおよそ150人が、サタラ地区当局の主導で改名を実施した。
同地区の女性差別に取り組んできた地区保健当局のバグワン・パワル氏は「222人のナクサを見つけた」と、AFPの取材に語った。「彼女たちがナクサと呼ばれた理由は、男児を望む家庭に生まれた2~4人目の女児だったからだろう」

伝統的に、特にインドの貧しい地方部では、結婚の際に新郎側に多額の持参金を払わなければならないため、女児は一家の経済的負担とみなされてきた。
地元の「セーブ・ガールチャイルド」運動を運営するスダ・カンカリア氏は、ナクサと名付けられた少女たちは、名前のせいで自尊心を持てず、気後れし、差別されており、少女たちが自分の娘たちにその不安感を受け継がせる危険性もあると語る。
カンカリア氏は「悪循環を打ち破らなくては。このプロジェクトは、今いるナクサだけでなく将来のナクサたちにも有益だ」と述べた。【10月23日 AFP】
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自分の娘に「不要」という名を付ける感覚は、なかなか日本では理解できないものがあります。

食料生産の過密地域では、すでに水資源は「限界に達した、または限界を突破」している
いずれにせよ、そのペースは別にしても、世界人口は今後も増え続けることは間違いなく、人々の生活水準向上への欲求も合わさって、今後食糧・水の問題が現在以上に深刻化することが予想されます。
これまで世界は“マルサスの亡霊”を技術革新で封じ込めてきましたが、今後もそうした対応が可能でしょうか?

****水資源不足と人口急増、世界食料危機に直面 国連****
人口増加と水資源問題で地球が食料と環境の危機に向かっており、唯一の解決策は農業技術の向上と生態系のより賢明な活用しかないとの報告書を、国連が22日、スウェーデンのストックホルムで開幕した水問題の国際会議「世界水週間」で発表した。

35ページに及ぶ同報告書「水と食料の安全保障への生態系サービス・アプローチ」は、国連環境計画(UNEP)と国際水管理研究所(IWMI)がまとめたもの。複数の査読論文の推計値をもとに見通しを示した。

世界の人口は2011年の70億人から、2050年には最低でも90億人に達すると見られているが、水の需要は多くの国で現在すでに限界に近く、地球温暖化によりますます悪化する見通しだ。
中国北部やインドのパンジャブ地方、米国西部などの食料生産の過密地域では、すでに水資源は「限界に達した、または限界を突破」している。さらに気候変動が、降雨パターンや降雨量を変え、水資源不足に拍車をかけることになる。アフリカ大陸だけで、21世紀末には農業生産が15~30%減少する可能性があるという。

報告書は、現在の農業技術は常に高い収穫量と広大な土地利用に重点をおいているため、このままでは悲惨な結果につながると指摘。収穫量を高める技術革新で、食料不足と環境破壊をともに止めることを呼びかけた。
対策として、降雨量が少なかったり不安定だったりする地域に適した作物を選び、水資源の利用効率を向上させるかんがい技術の導入を提案。また、暑い国々では、降雨のない時季の農家を救うための貯水池が不可欠だと述べ、また、農地周囲への植林は、水の流出を防ぐとともに土壌の湿気を保つことに役立つだけでなく、動物たちの生息する点在した小さな森林を結びつける効果もあるとした。

報告書は、生態系を総合的に管理するよりよいガバナンス、いいかえると、政府と農家、都市生活者、専門家が1つになって、環境で必要な水量のバランスを取ることが重要だと述べた。
そのためにも、自然資源の価値を金額に換算することで、農家と消費者たちが自然保護の必要性をよりよく理解することができるようになると提案。世界の湿地帯の経済価値を700億ドル(約5兆4000億円)と見積もり、そのうち52億5000万ドル(約4000億円)がアフリカにあり、371億ドル(約2兆8000億円)がアジアにあると換算した。【8月23日 AFP】
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“世界の湿地帯の経済価値を700億ドル(約5兆4000億円)と見積もり・・・”というのは、欧州信用不安対策で取り沙汰されている「欧州金融安定化基金(EFSF)を再拡充し、支援に使えるお金を従来の4~5倍の1兆ユーロ(約106兆円)に増やす」といった話に比べると、桁違いに少ない金額にも思えます。

水資源問題については、10月18日ブログ「メコン川流域「ゴールデン・トライアングル」で中国輸送船襲撃  今後深刻化する水資源争奪戦」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20111018)でも取り上げたところです。

温暖化対策での先進国と途上国の対立も、限られた資源・環境をどのように配分していくか・・・という問題になります。
日本国内の視点からすれば、国際的規制の枠組みに参加を渋るアメリカ・中国・インドなどの対応は苛立たしいものがあります。
ただ、グローバル・長期的な視点からすれば、「今まで先進国が散々資源を食いつくしておいて、我々途上国が成長する段になると、成長の足かせになる厳しい制約を求めてくるのは手前勝手だ」という主張も、一定に理解できるものがあります。

いつものように長くなりすぎましたので、思い切りはしょりますが、“第2の地球”がない以上、限られた資源を賢明に分かち合う叡智が人類に求められています。

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2 コメント

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餌やれるだけ繁殖/女性が自分の人生 でバランス (なおみん)
2017-01-31 07:49:55
日本の場合は、生好きやり逃げ男に甘すぎ、いつまでも男が望むときに子供を生めと言ってるのが
人口減少の最大要因なので、マイナンバー連動DNAデータベース駆動し
婚外子実父を国が強制認知、養育費強制徴収、中絶させる男に講習で
底辺労働を移民に頼らなくても出生率はすぐに回復できます。
してはならないのは、学校給食無償化と、無料の子供食堂です。
子供たちは、貧しいふりしてたらタダで飯が食えることをここで学習し
納税するより社会保障に頼る大人になって繁殖し、地球を侵食します。

http://www.eonet.ne.jp/~river-basin/kenpou.html
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日本がマイナンバー連動DNAデータベース駆動させれば世界中に広がる (なおみん)
2016-04-10 22:46:04
女性の教育水準向上で人口減少に悩む日本が解決策となるマイナンバー連動DNAデータベースを駆動させ、福祉給付を求めに来た婚外子や嫡出否認子の実父を国が確定、国が強制認知養育費強制、払えなければ福祉関係の強制労働、妊婦殺人に厳罰化し中絶させる男を自転車違反並みの講習課す政策を参院選目玉公約にすれば、18、19歳の絶大な支持を受けます。また、これは人口増加に悩む途上国が女性の教育水準を高め、女性活躍と共に子孫も確保していこうとするとき、一夫一婦性を強制し不倫を批判するため http://jp.ibtimes.com/articles/330552のような制度よりはるかに効果的です。国会で批判するのは党幹部が不倫ばれたくない武漢の共産党と同じ理由で、批判が多ければDNA解散したらいいのです。9条も米軍駐留下でいじれば労働基本権ない自衛隊がスト権もある米軍の庸兵になるだけですが、マイナンバーDNAデータベースは性解放論や人口爆発、少子化、子供や女性の貧困に悩む世界に貢献できる画期的な政策です。
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