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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国レアアース輸出規制、今なお強い影響力発揮 レアアース製錬においても9割超の世界シェア

2025-06-16 20:52:28 | 中国
(レアアースのおよそ70%は中国で採掘されます。加工まで入れると87%。精錬まで入れると、実に91%が中国で行われます。【6月11日 NHK】)

【今再びレアアース 中国のレアアース輸出規制、トランプ大統領をびびらせる】
中国のレアアース輸出規制と言えば、2010年に沖縄県尖閣諸島を巡って日中が対立した際に、中国側が日本に捕まった中国漁船の船長の解放を求め、日本企業が高いシェアを誇っていた高性能磁石の原料となるレアアースの対日輸出を一時止めたことを思い出します。

日本経済がレアアースというあまり聞きなれないものによって対中国依存の脆弱性を有していることが知れわたり、大きな騒動にもなりました。

その後、中国がレアアースを戦略的・政治的に使用することへの警戒感が日本やアメリカで高まり、各国が中国依存度を下げるような取組を行い、その影響はブーメランのように中国にフィードバックし、中国レアアースの戦略的重要性はひと頃より低下した・・・・と認識していたもですが、必ずしも話はそう単純ではなさそう。

最近、再び中国レアアースの「威力」を垣間見ることが。

****米中レアアース戦争勃発か!?中国が繰り出す輸出制限、日本と世界はどう対応すべきか****
2025年5月20日付ワシントン・ポスト紙は、「中国は新たな供給網戦争を始めている」とのウィットマン米下院議員とハドソン研究所のシャドロウによる論説を掲げ、ネオジム磁石を中心としたレアアースにおける中国の独占状況への対応の必要性を指摘している。

最近中国はレアアース磁石の輸出制限を決めた。レアアースは米国と同盟国の供給網で最も脆弱である。特に磁石が厳しく先進電子産業にとり深刻だ。

議会とトランプ大統領が共同行動すれば対応を強化できる。電池や半導体と共に磁石は日常生活と国家安全保障の重要な構成要素だ。

モーター、発電機、駆動装置の中枢にあり、携帯電話、ロボット、半導体、ドローンとほとんどの軍事的機器を含む先進電子装置の稼動を可能にする部品だ。レアアース磁石、特に軽量で高耐熱性のネオジム鉄ホウ素磁石抜きには、米国が頼るほとんどの技術は使えない。

中国は対米レアアース供給を握り、その輸出制限で米国のほとんどの防衛・商品生産を止められる。世界中のほとんどのレアアース磁石生産者は、素材か機材を中国に依存している。

米国海軍の艦隊や潜水艦、MRI、衛星は、中国が製造・採掘した磁石で動いている。米国はレアアース磁石供給網全体への対応を再検討する必要がある。

米軍は磁石で供給網危機に直面する可能性があるが、これは生存に係る。米国は、中国の許可を得ずに最重要の防衛能力を製造しうるべきだ。

中国が磁石に追跡装置を潜ませ対米戦争で起動させる可能性もある。数年前国防省は、F35の磁石に中国製合金が混ざっていることを発見し計画を停止した。現状を変えなければ米国の対中依存は高まる。(後略)【6月10日 WEDGE】
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米中が異様な高関税を互いにかけあう事態から、5月トランプ大統領が一転して大幅な引き下げに応じた背景には、中国側の対米レアアース輸出規制に「TACO」(Trump Always Chickens Out(トランプ米大統領はいつもびびってやめる))トランプ大統領がひるんだため・・・とも言われています。

2025年4月、中国はサマリウムなど7種類のレアアースおよび磁石の輸出制限を開始し、米欧日メーカーの供給を大幅に滞らせました。 結果として、米国の自動車・防衛産業に深刻な影響が及び、例えばフォードはシカゴ工場の生産を一時停止に追いやられました。

米中は2025年6月10日、ロンドンで通商協議を開催。中国はまず民生用レアアースの輸出を再開し、米側も関税を引き下げる合意に達しました。

****トランプ氏「中国との取引完了した」投稿も内訳不明な関税率****
アメリカのトランプ大統領は貿易問題を巡る米中の取引が完了し、自身と習近平主席の承認を待つだけだとSNSに投稿しました。

米中両政府は貿易問題を巡ってロンドンで2日間にわたって閣僚級協議を行い、これまでの合意を実行に移すための「枠組み」で一致しました。

協議の報告を受けたトランプ大統領は11日、自身と習近平国家主席の最終的な承認が必要としながらも「中国との取引は完了した」とSNSに投稿しました。

焦点となっていたレアアースの輸出規制について、中国はアメリカが必要とするレアアースを先行して供給する一方、アメリカは中国人留学生を受け入れるとしています。

また、トランプ大統領は「アメリカ側が55%、中国側が10%の関税を得る」と投稿し、両国の関係は素晴らしい状態だと強調しました。

米中両政府は5月にスイスで行われた閣僚級協議で互いに追加関税を115%引き下げることで合意し、現在、アメリカの対中関税は30%、中国の対米関税は10%となっています。 トランプ大統領が今回示した「55%」の税率の内訳は不明です。【6月11日 テレ朝news】
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【中国の戦略的対応 鄧小平「中東に石油があり、中国にレアアースがある」】
改めてレアアース市場における中国の重要性を検証すると、アメリカなどで産出したレアアースの大半も精錬のために中国に輸出する必要があるなど、依然として非常に強い影響力を有していることがわかります。それは「中東に石油があり、中国にレアアースがある」という鄧小平以来の中国側の戦略的対応の成果でもあります。まさに「先見の明があった」ということにも。

****レアアース覇権、環境汚染のみ込んだ中国 40年の計で生産ほぼ独占****
かつての中国最高指導者、鄧小平氏は「中東に石油があり、中国にレアアースがある」と言及した。

トランプ米大統領の「TACO(Trump Always Chickens Out、トランプ氏はいつも尻込みする)」を明確にしたのは中国のレアアース(希土類)だった。トランプ氏は中国に高関税をふっかけたものの、一方的におりた。中国の輸出規制で世界のサプライチェーン(供給網)が混乱したレアアースのパワーを読み解く。

レアアースはレアメタル(希少金属)の一種で計17種類ある。世界中で広く採取できる「軽希土類」と、存在量が少なくて中国に偏在する「重希土類」などに分類できる。

市場価値が高いのはハイテク製品の製造に欠かせないためだ。人の正常な生命維持に必要なビタミンに例えて「産業のビタミン」と呼ばれる。

例えば、中国が4月に輸出管理を強めたサマリウムやジスプロシウムは戦闘機や電気自動車(EV)に使う高性能磁石の材料となる。わずかに添加するだけで耐熱性や磁力といった磁石の性能を飛躍的に高められる。

中国がレアアース大国へ歩み始めたのは40年ほど前に遡る。改革開放を主導したかつての最高指導者、鄧小平氏がその戦略性に目を付けた。この頃レアアースを分離・精製する技術が進歩し、テレビの蛍光体やレンズ材料といった用途の開発も進んだ。米国を中心に生産が増えていた。

鄧氏が率いた中国は1986年に定めたハイテク振興計画「863計画」にレアアースを含む新素材を開発すると盛り込み、生産を本格化させた。92年の南巡講話では「中東に石油があり、中国にレアアースがある」と言及し、戦略物資との位置づけを鮮明にした。

80年代までは米国などが主要な生産地だったが、中国で鉱山開発の企業が乱立し低価格での輸出攻勢をかけた。採算が悪化した米国などの鉱山は閉山に追い込まれ、中国が世界のレアアース生産をほぼ独占する流れが加速する。

低価格を支えた一因に環境コストの低さがあった。当時は環境規制が緩く、軽希土類は採掘から精錬の過程で放射性廃棄物などが生じるが対策が足りなかった。重希土類ではレアアース抽出に必要な酸性液の処理が不十分で鉱山周辺の河川や土壌を汚染した。

深刻な環境破壊や健康被害という代償を伴いながらレアアース大国の地位を築いた。政府が排出規制や鉱山の国有化を通じて環境対策に本腰を入れたのは11年になってからだ。

中国はこの頃からレアアースを経済外交のカードとして使い始めた。10年に沖縄県尖閣諸島を巡って日本と対立した。日本に捕まった中国漁船の船長の解放を求め、日本企業が高いシェアを誇っていた高性能磁石の原料となるレアアースの対日輸出を一時止めた。

危機感を強めた日本や米国は対応に乗り出した。米国は2002年に閉山したカリフォルニア州南部のマウンテンパス鉱山で生産を再開させた。米地質調査所(USGS)によると、10年に9割以上だったレアアース生産に占める中国の比率は24年に7割まで低下した。

とはいえ米豪の生産は軽希土類が中心で、より希少な重希土類の生産は中国が世界市場のほとんどを牛耳ったままだ。

さらに米国などで産出した軽希土類の大半も中国に輸出する必要がある。中国は10年以上も製錬技術に磨きをかけ、製錬に欠かせない放射性物質の除去などを得意としているためだ。民意が環境問題に敏感な先進国には手を出しにくい分野だ。

中国はレアアースの製錬においても9割超の世界シェアを持つ。近年ではレアアースを添加した磁石の製造でも中国製の寡占が進んだ。4月の輸出規制では磁石の海外出荷も絞り込んだ。米フォード・モーターやスズキが工場稼働を一時停止させるなど世界のサプライチェーンを震撼(しんかん)させた。

鄧氏がレアアースを重要産業に位置づけた産業政策をまとめてから40年近くがたった。中国が握るレアアースの強みは習近平(シー・ジンピン)指導部のもとで、採掘や製錬という産業構造の川上から加工という川下へ広がり、貿易や安全保障で対立する相手国に切る交渉カードを増やした。【6月16日 日経】
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天安門では非情な判断を行った鄧小平ですが、改革開放路線にとどまらず、並々ならぬ見識の持ち主であったことは間違いないようです。

【日本は2010年以降、中国依存率を85%から58%に引き下げるも、“実質的な依存は継続”】
2010年の沖縄県尖閣諸島を巡るレアアース騒動以降の日本の対応は・・・中国依存率を85%から58%に引き下げたとされてはいますが、“実質的な依存は継続”しているとも。

****レアアースに関して、日本の中国依存度は現在どの程度?****
日本のレアアース(希土類)の中国依存度について、以下の通り最新状況を整理します。

現在の依存度
輸入全体に占める中国シェア(2009年 85% → 2020年 約58%)
経済産業省系の資料では、2010年代にかけた日本の取り組みにより、中国依存率を85%から58%に引き下げたと報告されています。 その後も支援策により維持され、現在でも「半分超」の状態です。

具体的な数字
2018年には約58%、最新近年のデータでも50%台後半で推移中と考えられます。


背後にある要因
加工能力での中国優位
採掘だけでなく、精製〜磁石製造などの加工段階でも中国が圧倒的多数を占めており、最終製品の主要工程が中国で行われるケースが多いです。

供給多様化の取り組み
オーストラリアやインド、ベトナムからの資源調達を拡充し、さらには南鳥島の海底レアアースなど国内資源の開発も進行中です。

政策面の支援
JOGMECや双日が連携し、オーストラリア(Lynas社)への投資、研究開発、再利用技術の推進、ストック増強など、強力な国家支援が継続しています。

しかし、精製・中間製品の技術標準で依然中国に追いついておらず、中国抜きのサプライチェーン構築には課題が残ります。

結論
現在の中国依存率は「約50〜60%」前後
一時には85%に達した依存度も、政策や資源多様化の成果で60%前後まで低下。しかし未だ半数超を占めており、加工・精製段階では中国の支配力が強く、実質的な依存は継続しています。

今後の鍵
海外の非中国系サプライヤー(オーストラリア・インド・ベトナム)の活用 国内海底資源の商用化 精製・磁石・中間製品分野での加工力強化
これらが進まない限り、完全な脱中国依存は難しく、今後も高い依存度は維持されると見られます。【ChatGPT】
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上記にもあるように、調達先の多様化を目指してオーストラリア(Lynas社)への投資など連携を強めてはいますが、「日本が中国のレアアース資源依存から脱却するにはまだ時間が必要だ」との中国側の認識も。

****日本企業が豪企業へ巨額の追加出資も、レアアース脱中国は「まだ時間かかる」と中国メディア****
2023年3月9日、中国のポータルサイト・百度(バイドゥ)に、日本企業がオーストラリアのレアアース調達に向けて巨額の投資を行うとする「金十新媒体」の文章が掲載された。

文章は、双日と独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構が現地法人を通じて今月7日に豪ライナス社に総額2億豪ドル(約180億円)相当の追加出資を決定したことについて「日本企業が今回取得するのはライナス社が新たに生産を開始する重希土類のジスプロシウムとテルビウムの権益。

この二つの元素は風力発電用モーターの小型化に使用できるため、日本にとって非常に重要な資源だ。日本企業は早ければ3月中にライナス社に約2億ドルを出資する予定で、これにより日本での需要量の3割近い年間数百トンを調達できるようになる」と伝えた。

その上で「今回の措置は、日本が中国へのレアアース依存から脱却できることを表すものか」と疑問を提起。日本に眠るレアアース資源は深海にあり、高コストな上に海洋環境破壊の懸念があると指摘したほか、埋蔵量自体対して多くないこと、レアアース採掘分野の人材が不足していることなどを挙げ「日本が中国のレアアース資源依存から脱却するにはまだ時間が必要だ」との認識を示した。(後略)【2023年3月14日 レコードチャイナ】
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【中国のアメリかやインドへの対応が、日本にも影響してくることも インドがレアアースの対日輸出停止か】
目下のところ、中国側の関心が関税戦争最中のアメリカに向けられていますが、米中対立のエスカレーション次第では、日本も間接的に影響を受けるとの指摘もあります。

****米中対立で、中国側のレアアース対米輸出規制が問題となっているが、日本に対する中国の姿勢は?****
米中対立に伴うレアアースの対米輸出規制に関して、日本に対しても完全に安心というわけにはいきません。整理しておくと以下になります。

中国の対日スタンス
✅ 表向き、日本に対してレアアースの輸出制約という動きを取ってはいないです。
→これは、日本が米国に近く米中対立に巻き込まれているものの、米国よりも依存関係も複雑に交差しており、日本に対して完全に「兵糧攻め」をするというような措置までは実施してこないという理由もあります。

✅ とは言え、日本も安心してはいられないという視点もあり、
中国がレアアースの対米輸出制約というカードを振るという時に、日本も同時に影響を被るというリスクも警戒してます。

たとえば:中国の対米制約に伴う供給不足が、日本企業の調達に影響してくる可能性あり
戦略物資という視点において、日本も「米国と近くにいる」とみなされ、将来的に対日措置に転用してくるリスクも完全には払拭してないという警戒感もあるという解読です。

対策も継続中
米国も、日本もレアアースの調達元の分散に動いています。
オーストラリア(Lynas)との協力 海底レアアースの開発 都内工場におけるレアアースのリサイクル 代替材料の探索・・・・という動きを伴って、自国のレアアース依存度の低下に努めています。【ChatGPT:】
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海底レアアースの開発、レアアースのリサイクル・・・短期的な効果はあまり期待できそうな感も。

中国のアメリかやインドへの対応が、日本にも影響してくる・・・といったことはすでに起きてもいます。

****インドがレアアースの対日輸出停止か、背景に中国の影響も―台湾メディア****
2025年6月16日、台湾メディア・Moneydj理財網は、インド政府が日本へのレアアース輸出を一時停止する指示を出したと報じた。

記事は、インド政府が、国内需要を優先するため、国営レアアース企業「IREL」に対し、日本へのレアアース輸出の一時停止を求めたと英ロイターが関係筋の話として報じたことを紹介。

インドは日本との間で12年に締結したレアアース関連の協力覚書に基づき、IRELが豊田通商の子会社にレアアースを供給しているとし、昨年はIRELの年間生産量の約3分の1に当たる1000トン以上が日本に輸出されたと伝えた。

また、ゴヤル商工相がこのほど自動車業界幹部との会議の中で、IRELに対して電気自動車(EV)用磁石に用いられるネオジムなどの輸出停止を要請したとの情報も紹介。

一方で、政府間合意に基づく日本への輸出を直ちに停止することは難しいと見られ、IRELも「友好的な協議を経て決定したい」との考えを示しているとした。

その上で、インド政府がレアアース輸出停止を求めた背景として、中国によるレアアース輸出規制による影響に言及。合弁会社を含むインドの自動車メーカーは5月末までに中国政府に約30件のレアアース輸入許可を申請したものの、現在のところ1件も承認されていないとし、現地の信用格付け会社CRISILは各メーカーで7月以降にレアアース在庫不足が発生し、EV発売延期などの問題に直面する可能性があると指摘したことを伝えている。

記事はさらに、レアアース不足がすでに日本の自動車メーカーにも影響を及ぼしており、スズキ傘下のインド最大手自動車メーカー、マルチスズキがレアアース供給不足を理由としてEV「e-Vitara」の4〜9月の短期生産目標を、当初の2万6500台から約8200台へと大幅に下方修正したことを紹介。

日本国内のスズキ工場でもレアアース供給不足により小型車「スイフト」の生産が先月末から今月にかけて一時停止したと伝えた。【6月16日 レコードチャイナ】
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