孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  近づく債務上限引き上げ期限 機能麻痺した米議会 17日以降何が起こるのか?

2013-10-13 23:01:48 | アメリカ

(9月24日 医療保険改革法関連予算の打ち切りに向け、審議妨害のための21時間に及ぶ長時間演説を行う共和党ティーパーティー系のテッド・クルーズ上院議員。演説と言っても、児童文学作家ドクター・スースの絵本を読んだり、テレビ番組の話をしたり・・・というものですが。日本の牛歩戦術みたいなものです。http://www.freewoodpost.com/2013/09/25/ted-cruz-jesus-died-to-save-himself-not-enable-lazy-followers-to-be-dependent-on-him/)

オバマ大統領、下院共和党の“6週間”案を拒否
オバマ大統領・与党民主党と野党共和党の対立が膠着しているアメリカでは、周知のように2014会計年度暫定予算案が成立せず政府機関の一部閉鎖(シャットダウン)が続いていますが、その影響は世界規模になると危惧されている債務上限引き上げ問題の期限とされる10月17日が近付いています。

下院で多数を占め、オバマ大統領の核心施策である医療保険制度改革に反対する共和党側は、6週間の短期に限った上限引き上げを認めるかわりに、支出削減のための財政協議機関設置を求める提案を行っていましたが、オバマ大統領はこれを拒否してるようです。

****米大統領、財政協議で下院野党案拒否 上院が焦点に ****
オバマ米大統領が野党共和党との財政協議で、ベイナー下院議長の譲歩案を拒否したことが12日明らかになった。

共和党が多数を占める下院との協議は行き詰まり、連邦債務の上限引き上げと政府機関の再開に向けて焦点は上院に移った。与野党の上院トップは同日会談し、協議を本格化させた。

米株式市場が取引を始める週明け14日までの妥結を目指すが、合意の見通しは立っていない。債務上限引き上げの期限とされる17日が迫り、与野党間の溝が埋まらなければ金融市場の世界的な動揺が予想される。

ベイナー議長ら下院共和党指導部は譲歩案で、債務上限を6週間分だけ引き上げ、政府機関も再開させる代わりに、社会保障関係費の削減を柱とした超党派による財政協議の機関設置を求めた。

米メディアによると、ベイナー議長は12日の議員会合で、オバマ政権側が譲歩案の受け入れを拒否し、交渉は停止したと説明した。オバマ氏は上限引き上げの期間が短いことなどに難色を示していた。

与党民主党のリード院内総務は、共和党のマコネル院内総務との会談後に「48時間以内に合意したい」との考えを表明した。

上院は12日の審議で、債務上限を来年末まで無条件で引き上げる法案の採決に向けた手続きを進めようとしたが、採決に至らなかった。オバマ大統領はリード氏ら上院民主党指導部と会談し対応を探った。【10月13日 日経】
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共和党上院においては、“現在の資金水準で政府を6カ月間程度再開させ、各省庁に減額された資金での業務遂行を調節する柔軟性をより多く与えることを柱としたスーザン・コリンズ上院議員(メイン州)の提案について細部の詰めを行った。いずれにしろ、この上院案は医療保険改革に盛り込まれた医療機器への課税の廃止または延期を求め、1月末まで債務上限を引き上げる内容となっている。”【10月12日 ウォール・ストリート・ジャーナル】といった案の検討も報じられています。

オバマ大統領は“6週間”案に乗り気だとも当初報じられていました。
医療保険制度改革を骨抜きにするような支出削減協議をセットにした短期間の上限引き上げでは、問題をほんの少し先送りするだけであり、共和党側に“譲歩した”実績を与えることになる分だけ、オバマ大統領にとってはデメリットが大きいように思えます。


債務上限問題・・・何か起きるか、はっきりしたことは誰も分からない
毎度のアメリカ財政問題ですが、シャットダウンの問題と、債務上限引き上げが認められないことによる債務不履行(デフォルト)について、概要を整理したのが下記記事です。

****政府機関閉鎖より怖いデフォルトの足音****
米財政 債務上限引き上げに失敗すれば世界経済は計り知れないダメージを受ける

1日に始まった米連邦政府機関の一部閉鎖と、17日に迫る連邦政府の債務上限問題。2つの問題は混同されがちなので、ここで少し整理しておこう。

政府の一般歳出には義務的経費と裁量的経費がある。義務的経費は制度的に支出が義務付けられている経費で、基本となる法律が変わらない限り支出される。社会保障給付などの公的扶助費は義務的経費の一部だ。

これに対して、裁量的経費は政策的な判断で見直しができ、毎年議会の承認が必要だ。議会が合意できないときは、前年度と同水準の暫定予算を執行する「継続予算決議」が採択されるのが普通だ。
今回政府機関の閉鎖が起きたのは、この継続予算決議が採択されなかったためだ。

共和党優位の下院は、医療保険制度改革法(オバマケア)の施行を妨害する継続予算決議を採択し、民主党優位の上院は、妨害部分を取り除いた決議を採択して下院に送り返してきた(アメリカの議会は上下両院の議決が異なるとき、どちらかが優越するという決まりがない)。

こうして期限内に継続予算決議が採択されず、裁量的経費が払えなくなり、政府機関の閉鎖が始まった。
ただし行政管理予算局(OMB)が事前にマニュアルを配っていて、必要最低限の業務(刑務所の運営や空港業務など)は継続されている。
つまり政府の閉鎖は問題だが、とんでもないことにはならないよう(例えば受刑者が刑務所から出てきたりしないよう)手段が講じられている。

だが、債務上限問題は違う。3つの危険な選択肢 連邦政府の債務残高が上限に達したら、政府は債務不履行
(デフォルト)に陥る、とよく言われる。
だが実のところ、何か起きるか、はっきりしたことは誰も分からない。なぜならそんなことは今までに一度も起きたことがないからだ。

通常、財務省は議会に言われた額の小切手を切り、議会に言われた税金を集め、その差額を借金(国債の発行)で賄う。ただし借金できる額は、法律で上限が設けられている。だから17日に手元資金がなくなったら、財務省は歳出と歳入の差を埋める資金を借りられなくなる。

このとき取り得る選択肢は、基本的に3つある。
1つ目は、バラクーオバマ大統領が政府の支払い義務は債務上限に優越すると判断して、国債発行を命じること。
2つ目は、オバマが財務省に一部の債務の支払いを命じること。
3つ目は一切の支払いをしないことだ。

一般に、第3の選択肢を選んだ場合、アメリカの国債(金融市場では最も安全な投資対象とみられている)は利払いがストップして、世界の金融市場は大混乱に陥ると考えられている。

第1の選択肢を取った場合でも、市場は最終的にデフォルトに陥る可能性が高いと見なし、激しく動揺するだろう。一方、財務省には債務の順位を決めるルールがないから、第2の選択肢も現実的ではない。

政府債務が上限に達したら、誰が何をするべきなのかも、はっきりしない。OMBのマニュアルもない。ただ恐ろしく不確実な時代がやって来る。

政府機関の閉鎖はいろいろな不便を生じさせるが、70年代と80年代にはよくあった。連邦政府の職員には給料が支払われないからワシントンでは一大事だったが、長引かない限り国全体を揺るがすことはない。

債務上限の突破はまったく別の問題だ。世界の金融市場は大パニックに陥り、世界的な恐慌が起きるのは確実、とまでは言えないが、そうならないとも言い切れない。何か起きるかは誰にも分からない。それはある意味で一番恐ろしいことだ。【10月15日号 Newsweek日本版】
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ティーパーティー:債務上限を引き上げなくても経済と市場にとって大惨事にはならない
債務上限問題は“未知の領域”であり、何が起こるのか誰もはっきりわからない・・・ということで、一連の財政問題で激しく抵抗している共和党の保守強硬派であるティーパーティー議員は、“言われているようなデフォルトは起きない、大統領側の脅しに過ぎない”としています。

****デフォルトの脅威にも動じないティーパーティー****
ティーパーティーの支援を受けている共和党のティム・ヒュールズキャンプ下院議員は落ち着いた様子で、連邦議会が来週末までに米国の債務上限を引き上げられなかった場合に生じかねない米国の債務デフォルトの脅威を一蹴する。

「ウォール街がこうした米国債の取引でカネを稼いでいるのは分かっているが、一般市民はどうか? 一般市民には何の影響も与えない」。カンザス州西部の平野部を選挙区とするヒュールズキャンプ議員は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)にこう語った。

同議員は政府の歳出を削減する必要性に言及して、「一般市民が最も気にしているのは長期的な構図、つまり、10月17日に何が起きるかではなく、今後10年間で何が起きるかということだ」と言う。

「債務返済を優先すれば、デフォルトは避けられる」
ヒュールズキャンプ議員は、10月17日以降、米国は資金が枯渇してすべての支払い義務を果たせなくなると繰り返し警告していることについて、ジャック・ルー米財務長官をほとんど嘲っている。

こうした支払い義務は様々で、債務の利払いから年金給付、請負業者への支払いまで含まれる。
「脅し作戦は明らかに、あまりうまくいかなかった」と同議員は言う。「財務長官の言葉を真に受けるのは難しい」

バラク・オバマ大統領は、見返りの条件を付けずに政府の債務上限を引き上げる「クリーン」な法案を求めている。これに対する共和党の反対論を動かす要素の1つは、債務上限を引き上げなくても経済と市場にとって大惨事にはならないという、保守派の間で広く浸透している見方だ。
彼らは、財務省は難なく他の支払い義務より債務返済を優先して、デフォルトを回避できると主張している。

オバマ政権、民主党議員、共和党の一部の主流派議員と多くの財界リーダーはこうした判断を、よくても慢心、最悪の場合は無謀だとして退ける。

財務省はまだ、10月17日以降の非常事態計画を明らかにしていない。だが、共和党の保守派を除けば、財政をうまく管理し、返済リスト上で国債保有者を他の債権者より優先させる政府の能力を試す意欲はほとんどない。
一部の請求書が未払いのままになれば、債務返済が滞る前に市場が急落し始める恐れがあるからだ。

共和党のジョン・ベイナー下院議長ですら、10月6日に、債務上限を引き上げられなければ、深刻な市場崩壊と景気後退につながりかねないという懸念に同意すると語った。

しかし、多くの共和党議員は、そうした見方にますます懐疑的になっている。「財務省のデフォルトという話はナンセンスだ。私の見るところ、オバマ大統領はあれほど賢いのだから、いざとなれば賢明になるだろう」。共和党のジョー・バートン議員(テキサス州選出)は今週、CNBC放送でこう語った。

同議員は10月17日以降の影響を、「全額支払わなければならない請求書もあるが、一部だけ支払う請求書もある」家計のやりくりの問題と比較してみせた。「債務の利払いはきちんと払わねばならないと思う。社会保障の給付金も払わねばならないだろう。だが、エネルギー長官の出張費を全額払う必要はないと思う」

今週公表されたピュー・リサーチの世論調査では、共和党を支持する有権者の過半数――54%――が、10月17日の期限を過ぎても大きな問題は生じないと考えていることが分かった。これに対し、危機を回避するためには債務上限の引き上げが不可欠だと考える共和党支持者は36%だった。

全体的には、米国人の47%が期限内に債務上限を引き上げることが重要だと考えているのに対し、39%が期限を越えても問題ないと考えていた。

10月17日以降どうなるか・・・
10月17日以降の状況――この日に米国政府の手元資金は300億ドル前後になる――に関する最も詳細な分析の1つは、シンクタンクの超党派政策センターがまとめたものだ。

同センターの試算では、120億ドルの社会保障費が給付期限を迎える寸前の10月22日から、政府は資金が足りずに一部の支払いが滞る可能性があるという。
債務については、60億ドルに上る最初の大きな利払いが10月31日に待ち受けている。
550億ドル前後の支払いをカバーしなければならない11月1日までには、米国はほぼ確実に一部の支払いが滞っているという。【10月10日 フィナンシャル・タイムズ】
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一言で言えば、「大統領、財務省がなんとかするさ。大した問題にはならない」という話ですが、なんとかできなかった場合どうするのか?・・・世界経済をリードする立場にありながら、非常に無責任な見識です。
問題が起きそうだという不安感が広がるだけで、市場は大きく混乱します。
“「金融市場が凍結し、ドルが急落して金利が急騰し、世界中に悪影響が波及する」とした上で「2008年の金融危機(リーマン・ショック)以上の不況に陥るおそれがある」(アメリカ財務省報告書)”【10月4日 朝日】

麻生太郎財務相「デフォルトになれば米国債が紙くずになる」】
米国債の債務不履行がおきそうだという懸念から市場が混乱すれば、大きな被害を受けるのは、中国と並んで米国債を大量保有する日本です。

****110兆円保有の米国債は? 日本にも暗い影 10日からG20****
米政府債務問題をめぐり、国内でも経済への悪影響を懸念する声が出始めている。

日本の米国債保有額は7月末で1兆1354億ドル(約110兆1338億円)。中国に次ぐ世界2位の規模だ。
財務省によると、平成23年度末の外国為替資金特別会計に占める外国債の金額は、前年度比9兆7245億円増の64兆4339億円で、米国債がかなりの割合を占めるとみられる。三菱東京UFJ銀行など3メガバンクだけでも計約8兆円程度の米国債を保有しているもようだ。

今後、米議会が債務上限の引き上げで合意できず、米国債のデフォルト(債務不履行)や利払いが滞る事態になれば、損失リスクを回避しようと投資家が米国債を売り浴びせ、価格が下落(金利は上昇)する可能性がある。
この場合、日本でも国の債券運用益が減少するほか、銀行は多額の含み損を抱えるおそれがあり、「影響は非常に大きい」(麻生太郎財務相)。

動揺は金融商品にも広がる可能性も。市況の好転で銀行や証券会社では投資信託の販売が伸び、特に高利回りの新興国を投資対象とした投資信託が人気だが、米国債が不安定になれば「投資意欲そのものが大きくそがれる」(大手証券)。米国債で運用する米ドル建ての生命保険も、金融市場が動揺し、円高に巻き戻せば、受け取る保険金が減り、資産形成に思わぬ影響が出る可能性がある。

一方、生命保険各社は資産運用で戸惑いが広がる。生保各社には、資産の一部を国債より利回りが高い米国債に振り向ける動きが出ているが、米国債の変動率が高まれば、投資対象としての魅力が薄れるため、「運用益を確保したくても、投資先がなくなる」(運用担当者)との警戒感が強まっている。【10月7日 msn産経】
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10日開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、世界を揺るがすアメリカの財政不安に関心が集中しました。

****G20 危機感を共有 正念場****
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「米国の危機は世界の危機だ」
「デフォルトに陥れば、世界経済は深刻なダメージを受ける」
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、カナダのフレアティ財務相、フランス中央銀行のノワイエ総裁ら、G20に参集した各国・国際機関の要人は、異口同音に米国へ強い警告を放った。

とりわけ米国債を大量に保有する日本や中国にとって、万一にもデフォルトすれば深刻な影響が出る。
麻生太郎財務相は、米議会との調整を急ぐルー米財務長官と膝詰めで会談し、「米国だけの問題ではない」と危機感を直接訴えた。
麻生氏は「みな考えていることはほぼ同じ。デフォルトになれば米国債が紙(くず)になるのだから」と、会議場に張り詰めた緊張感を表現した。(後略)【10月12日 産経】
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【「共和党に非がある」53%
“10日に公表された世論調査では、茶会の主張を支持する回答者の割合は過去最低の21%を記録した。”【10月13日 産経】ということで、ティーパーティーの強硬姿勢が広く一般に支持されている訳ではあります。

しかし、共和党議員にとっては、共和党内の予備選挙を勝ち抜くためには、ティーパーティーの支持が必要という現実もあります。

“共和党の次期大統領候補と目される有力議員らが、医療保険改革(オバマケア)に反発する草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」との距離感を探っている。茶会の支持は党内での候補者選びを勝ち抜くために不可欠である半面、茶会の強硬路線に対する世論の反発は根強い。茶会に接近し過ぎれば支持基盤拡大が妨げられる懸念もあり、対応に苦慮しているようだ。”【同上】

一般国民はこの混乱について、共和党の姿勢に厳しい目を向けています。
****米政府機能停止「共和党に非」53%…世論調査****
オバマ米大統領と野党・共和党の対立で新年度予算が成立せず、米政府機能が一部停止している問題について、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとNBCテレビは10日、「共和党に非がある」と回答した人が53%に上るとの合同世論調査を発表した。

「オバマ大統領に非がある」と回答したのは31%、「双方に非がある」は13%で、国民が共和党への批判を強めている実態が明らかになった。【10月12日 読売】
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医療保険制度改革については、その実績を問う形でオバマ大統領が再選されたことで、国民によってとりあえずの方向性が示されています。
にもかかわらず、予算、アメリカ経済、ひいては世界経済を人質にとって抵抗する共和党保守強硬派の対応は議会制民主主義の常道を逸脱したものです。

ティーパーティー議員が今後対応を改めることは期待できません。
上記のような世論動向を踏まえて、共和党内部で良識ある選択ができる議員が出てくることを期待します。

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