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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア アフリカ諸国にトルコ経由で穀物供給 陸上輸送ではウクライナと中東欧でバトル再燃、WTO提訴

2023-09-19 23:19:39 | 欧州情勢

(ロシア・ソチで会談に臨むプーチン大統領(右)とトルコのエルドアン大統領(2023年9月4日公開)【9月5日 AFP】)

【ロシア 黒海経由の穀物輸出合意(黒海イニシアティブ)に復帰せず】
ロシアは、トルコと国連が仲介した黒海経由の穀物輸出合意(黒海イニシアティブ)について、西側諸国がロシア産の穀物と肥料の輸出が阻害される要因を取り除いていないとして、7月に履行を停止。

これにより世界有数の穀物輸出国ウクライナからの穀物輸出のメインルートが止まっています。

注目されたトルコ・エルドアン大統領とプーチン大統領との会談でも、進展はありませんでした。

****ウクライナ穀物輸出問題で進展なし ロシア・トルコ首脳会談****
ロシアのプーチン、トルコのエルドアン両大統領は4日、ロシア南部ソチで会談し、ロシアが7月に離脱したウクライナ産穀物の黒海経由の輸出合意に復帰できるのかについて協議したが、進展はなかった。ただし、両国はこの問題を引き続き協議していくと説明している。

プーチン氏は会談後の記者会見で、ウクライナが黒海経由の穀物輸送ルートを悪用し、ロシアを攻撃しているなどと主張。また、食糧不足に見舞われているアフリカの国々に向け、ロシア産穀物を無料で提供すると改めて説明するなど、輸出合意への復帰に後ろ向きな姿勢を崩さなかった。

一方、輸出合意の仲介役を務めてきたエルドアン氏は「短期間で期待に沿えるような解決策を得られると信じている」と述べ、協議を継続する姿勢を示した。その上で、ロシアが満足できる解決法を探り、同じく仲介役である国連とも協議していくことを明らかにした。【9月5日 毎日】
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ロシアは合意履行停止と並行して、ドナウ川を利用した代替ルート施設を含むウクライナの港湾施設や穀物倉庫などを繰り返し攻撃しており、ウクライナと西側諸国はロシアが食料を戦争の武器として使用していると非難しています。

****露、穀物輸出港への攻撃激化 食料危機あおる狙いか****
ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する「穀物合意」の失効後、主要な代替輸送ルートを担ってきた同国南部オデッサ州のドナウ川流域への露軍の攻撃が激化している。

3、4日には港湾施設が相次いで攻撃され、農耕機械や倉庫が被害を受けた。条件付きで合意復帰をちらつかせるロシアは、ウクライナの穀物輸出を妨害して世界の食料危機をあおり、自身の要求を国際社会に聞き入れさせる思惑だとみられている。
4、
ウクライナ軍によると、露軍は3日未明、オデッサ州をイラン製の自爆無人機(ドローン)25機で攻撃。4日未明にも17機以上のドローンで攻撃した。ウクライナ軍が大半を撃墜したが、攻撃でドナウ川流域の港湾施設が損傷。露国防省は「燃料貯蔵施設を攻撃した」などと主張した。

ロシアの離脱で穀物合意が7月に失効した後、ウクライナは代替輸送ルートの構築に着手。8月に黒海に独自の「代替回廊」を設定したが、運搬船が露軍に攻撃される恐れもあり、これまでに4隻の利用にとどまっている。

一方、露軍の支配下にないドナウ川流域の港の役割が拡大している。

しかし、ロシアは合意離脱後、オデッサ港やドナウ川流域のイズマイル港、レニ港などへのミサイルやドローンによる攻撃を激化。ウクライナ当局の8月末の発表によると、同月だけで港湾インフラが少なくとも8回の露軍の攻撃を受け、計27万トンの穀物が失われた。港湾施設の損傷で港の搬出能力も低下している。

ロシアは港湾施設への攻撃を続ける一方、「条件が満たされれば合意に復帰する」とし、国際社会を揺さぶる構えだ。ロシアは合意復帰の条件として、国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」への露農業銀行の再接続などを提示。ロシアは合意復帰をてこに対露制裁を緩和させ、自国産穀物の輸出を拡大して食料価格高騰に苦しむ貧困国などへの影響力を強める思惑だ。

ロシアの揺さぶりは一定の結果を出しつつある。合意を仲介した国連のグテレス事務総長は8月末、ロシアの合意復帰に向けて「一連の具体的な提案」をロシア側に提示したと発表。ロシアに一定の譲歩を示す内容である可能性がある。

同じく合意を仲介したトルコも、ロシアの合意復帰に向け、露産穀物の輸出拡大を支援する案をロシアと協議する方針を表明。4日の両国首脳会談でもこの案が協議された。

ただ、ウクライナはロシアに安易な譲歩をしないようトルコや国連に求めており、合意再開を巡る先行きは曲折が続く見通しだ。【9月5日 産経】
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上記記事にある“国連グテレス事務総長が8月末にロシアに提示した「一連の具体的な提案」”の中身と思われますが、国連がロシアに対し、ロシア農業銀行がルクセンブルクにある子会社を通じて国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網に30日以内に「実質的に接続できるようにする」と伝えたことが明らかになっています。

「国際銀行間通信協会(SWIFT)」へのロシア農業銀行の再接続はロシア側が求めていたものですが、詳細はわかりませんが、ロシア側は合意復帰には不十分としています。

****国連、ロシアにSWIFT決済網への30日以内の接続可能と伝達****
国連がロシアに対し、ロシア農業銀行がルクセンブルクにある子会社を通じて国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網に30日以内に「実質的に接続できるようにする」と伝えたことが8日、分かった。ロイターが書簡を確認した。

国連のグテレス事務総長は8月28日、ロシアのラブロフ外相に「SWIFTは、RSHBキャピタルが現在の債券発行者としての地位に基づいて加盟を申請し、SWIFTの食品・肥料取引にアクセスする要件を満たしていることを確認した」と伝えた。

ロシアは今年7月に黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意を離脱しており、グテレス氏はロシアに復帰するよう説得するためにロシアの穀物・肥料輸出の改善を促進させる4つの措置を説明した。

グテレス氏はラブロフ氏に対し、国連は「ロシア連邦の黒海イニシアティブへの復帰と全面的な運営再開につながるという明確な理解に基づいて」あらゆる措置を直ちに進める用意があると語った。

ロシア外務省は今月6日の声明でグテレス氏の提案に懐疑的な見方を示し「ロシアが得たのは実際の制裁の適用除外ではなく、国連事務局からの新たな約束だけだった」と表明。「これらの最近の提案に新しい要素は含まれておらず、わが国の農産物輸出を正常な状態に戻すという点で具体的な進展をもたらす基盤にはなり得ない」と主張した。【9月9日 ロイター】
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【ロシアとトルコ アフリカ向けロシア産穀物輸出で合意 中東カタールが財政支援 ウクライナ問題で独自の対場をとる中東湾岸諸国】
一方、ロシアとしても単にウクライナ産穀物輸出を止めるだけでは世界の食糧危機をつくりだす“悪役”となってしまいます。

昨今の国際情勢においては、アメリカや欧州、あるいはそれに対抗するロシアや中国の意向だけでなく、それがどれだけ多くの国々の支持を得られるか、いわゆるグローバルサウスの存在が強く意識されるようになっています。(大国の考えだけでなく、その他大勢の国々の考えが意識されるという点では“民主的”になったのか? その実態は精査する必要がありますが)

ロシアも、冒頭【毎日】に“食糧不足に見舞われているアフリカの国々に向け、ロシア産穀物を無料で提供する”とあるように、そうしたグローバルサウスの支持を得るための動きも見せています。

トルコでロシア産穀物を小麦粉に加工してからアフリカ諸国へ提供する・・・とも報じられていますが、その具体的内容や“無料”の仕組み、更にその効果・影響についてはよくわかりません。

****ロシア、トルコがアフリカ向け穀物輸出で合意と発表 カタールが支援****
ロシアは6日、トルコがカタールの財政支援を受けて、ロシアがアフリカに輸出する予定の100万トンの穀物を割引価格で取り扱うことに基本的に合意したと発表した。

インタファクス通信によると、ロシアのグルシコ外務次官は記者団に対し「全ての原則合意が得られた。近く全ての当事者と実務的な折衝に入る」と述べた。

トルコがロシア産穀物の輸出を取り扱うとしているが、トルコが果たす役割の詳細は明らかにされていない。(後略)【9月7日 ロイター】
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アラブメディアは、今回のカタールなど、ウクライナ問題における中東湾岸諸国の役割を高く評価する向きもあるようです。

****湾岸諸国による調停が、黒海の穀物合意を救うかもしれない****
(中略)この(プーチン・エルドアン両氏の)会談でプーチン氏は、ロシアが1カ月につき最大で100万トンの穀物をトルコに供給し、それをトルコが特に必要性の高い国々に輸出するという提案を行ったと報じられている。さらに、カタールがこうした活動の財務面において中心的役割を担うことが予想された。

最近カタール政府はウクライナ戦争関連の人道支援への関与を深めており、ウクライナにおける健康、地雷除去、教育の支援に1億ドルの拠出を行うなどしている。

この支援に関しては、7月に行われたカタールの首相と外相を兼任するシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー氏と、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談で話し合いが行われた。ゼレンスキー氏の10点平和計画に関する話し合いに加え、両氏はウクライナの将来的な再建と黒海の穀物回廊へのカタールの投資についても話し合った。

カタールは平和調停の取り組みにあたって、この問題を中立の調停国として扱うという意思を示したサウジアラビアおよびUAEと同じ道筋を辿っている。

2022年9月、サウジアラビアとトルコの支援により、ロシアとウクライナは英国、米国、モロッコからの国外ボランティアを含めた約300人の捕虜交換を行った。

そしてつい先月には、サウジアラビアがジェッダで首脳会談を開催し、ウクライナの領土保全に関するさらなる対話を呼びかけた。サウジアラビアは2月にもウクライナへの4億ドルの人道支援をとりまとめた。この支援の内訳は、1億ドル分の人道支援、3億ドル分のエネルギー資源という形となっている。

UAEも人道支援の提供や、さらなる捕虜交換の支援に対して積極的な関心を示している。昨年10月にサンクトペテルブルクを訪問したUAEの大統領を務めるシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下は、ウクライナとロシアの調停を申し出たと報じられている。

今回の戦争期間中、UAE政府はウクライナに対して常に人道支援の提供を行ってきた。まさに先週も、UAEはウクライナの医療セクター支援を目的として救急車23台を積んだ船を送っている。UAEは支援プログラムの一環として、2022年10月に行った1億ドルの人道支援に加え、ウクライナに合計50台の救急車を提供することを目標に掲げている。

穀物合意の更新を想像することは不可能ではないが、まずは複数の明確な障害を克服しなければならない。この合意はトルコ、そして潜在的には国連も関与して実現する可能性はあるが、両陣営が関与しない解決策は想像し難い。

しかしながら、ロシアは自国からの穀物輸出を促すため、この合意に自ら条件を付け足そうとする可能性が高い。さらに、この合意への資金援助や実行支援のため、新たに外部のアクターが引き入れられる可能性もある。そうなった場合、その役割を担うのは湾岸諸国になる可能性が最も高い。

穀物合意はこの戦争における唯一の厄介な問題というわけではなく、再交渉がその他の障害への解決策を見出すための並行的な外交努力に繋がる可能性はある。

ウクライナの人々(と西側諸国)が外交によってウクライナ再建への明確なプランがもたらされることを願っているのは明らかであり、ウクライナ政府にとっては湾岸諸国のパートナーたちによる統一戦略によりインフラ再建への資金援助が実現する可能性もある。

こういった取り組みは、湾岸諸国が協力することで成功の可能性が大きく高まるだろう。彼らは既に、他の世界のアクターに比べて優れた結果を出せることを示しているのだから。【9月14日 ダイアナ・ガリーヴァ博士(オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジの元アカデミック・ビジター) ARAB NEWS】
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【ウクライナ産穀物輸出の陸上ルートでは、中東欧諸国とウクライナでバトル再燃】
黒海ルート、その代替ルートが機能しないウクライナにとっては、中東欧を通過しての陸上輸送が(量的には大きく制約されるものの)当面の重要な穀物輸出ルートになります。

しかし、このルートに関しては通過国である中東欧諸国の国内市場に安価なウクライナ産穀物が流出し、国内農業部門に大きな打撃を与えるとの批判が中東欧諸国からあり、調停にあたったEUは中東欧諸国国内での販売禁止を認める期間限定措置をとっていました。

EUが、その期間限定措置(今月15日が期限)の延長をしない決定をしたことで、この問題が再び表面化。ポーランドなど中東欧諸国がウクライナ農産物に対し独自の輸入規制を発表し、ウクライナと中東欧諸国間のバトルとなっています。

****東欧5カ国のウクライナ産穀物輸入規制 EU、延長を認めず****
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は15日、ポーランド、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアの東欧5カ国に認めていたウクライナ産穀物の輸入規制を、期限の15日以降、延長しないことを決めた。ポーランド、ハンガリー、スロバキアの3カ国は独自に規制を継続する方針を表明した。

ポーランドなど5カ国は、ロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナ産穀物の主要な輸出ルートとなっており、比較的安価なウクライナ産穀物が国内市場に流入し、農業に打撃を与えているとしてEUに対応を求めていた。このため欧州委員会は5月、9月15日までの期間限定措置として、ウクライナ産の小麦やトウモロコシなどの5カ国内での販売禁止を認めた。

欧州委員会は15日の声明で、こうした措置の効果で「5カ国での市場のゆがみはすでに解消した」と結論付け、今後、穀物の過剰供給を避けるため、ウクライナが輸出許可制度などの措置を30日以内に導入することで合意したと発表した。ウクライナは18日までに行動計画を提出する。

一方、既に独自の輸入規制継続を表明していたポーランド政府に続き、ハンガリー政府も15日、ウクライナの農産物24品目について独自の輸入禁止措置を発表。スロバキア政府もウクライナ産穀物の輸入禁止措置を発表した。
ルーマニア政府はウクライナの行動計画の発表を待ち、対応を決める。

4カ国とも、ウクライナ産穀物の国内通過は引き続き、認める方針。ブルガリア議会は14日、輸入規制の撤廃を議決している。

EUのドムブロウスキス欧州委員は15日、加盟国の独自の輸入規制について「ウクライナ産穀物に対する一方的な措置は控えるべきだ」と述べた。

欧州委員会の今回の決定についてウクライナのゼレンスキー大統領は15日、通信アプリ「テレグラム」で「ウクライナとEUの真の結束と信頼の模範だ」と歓迎する一方、独自の輸入規制については「近隣国の決定が、それにふさわしいものでなければ、ウクライナは文明的な方法で対応をする」と警告した。

シュミハリ首相は、「テレグラム」に「EUの加盟国には、ウクライナの農産物に対する違法で一方的な規制を控えるよう求める。そのような規制は世界貿易機関(WTO)の仲裁対象となり得る」と投稿した。【9月16日 毎日】
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上記記事にあるように、中東欧諸国はウクライナ産穀物の「通過」は認めていますが、ハンガリーは国内市場での販売禁止を野菜など24品目に大幅に広げています。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領は“文明的な方法で対応”と述べていましたが、ポーランド、ハンガリー、スロバキアの3ヶ国をWTOに提訴しました。更に、改善されなければ報復も辞さない構えです。

****東欧3カ国をWTO提訴 穀物輸入規制、報復措置も****
ウクライナ経済省は18日、安価なウクライナ産穀物の流入を警戒して独自の輸入規制措置を決めたポーランド、ハンガリー、スロバキアの東欧3カ国を世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。

ウクライナのカチカ通商代表は米ニュースサイト、ポリティコのインタビューで、3カ国の措置が「法的に誤っていることを証明することが重要だ」と指摘した。特に影響が大きいポーランドの措置が撤廃されなければ「報復を余儀なくされる」と述べ、ポーランド産の果物や野菜のウクライナへの輸入を規制する可能性を示唆した。【9月19日 共同】
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ハンガリー・オルバン首相はもともとロシア寄りでウクライナには冷淡ですが、ハンガリー同様にEU内では西欧的価値観への異論を示すポーランドはロシアの脅威を最も強く意識する国で、武器供与などでウクライナを積極的に支援しています。

ただ、話が国内農業などに及ぶとまた別の対応・・・ということでしょう。特にポーランドは来月に下院選挙を控えて与野党が接戦を繰り広げていますので、国内農業にマイナスの影響を与える措置は絶対に認められないところでしょう。

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