孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  ウクライナ情勢をめぐり、戦局でも、国際関係でも色濃い苦境

2022-09-19 23:22:55 | ロシア
(ウクライナ軍の攻撃ドローン「R18」【9月18日 YAHOO!ニュース】)

【ロシア ドローンも弾薬も兵士も不足】
アメリカの空軍戦力の主力が従来の有人戦闘機から無人機ドローンに変わりつつあること、アゼルバイジャンがトルコ製ドローンを駆使してアルメニア軍を大破したことで戦闘の形が変わったと言われていること・・・など、ドローンが現代の戦闘の重要な部分を担うようになっていますが、そのあたりは野戦砲など「古いタイプ」の兵器が目立つウクライナの戦地でも同様のようです。

****戦場のウクライナ兵に直接聞いた…“電光石火作戦”でロシア軍敗走 陰の主役は「中国製ドローン」だった【報道1930】****
(中略)(ウクライナ軍の戦果について)こう語るのはウクライナ軍の空中偵察部隊チーム長、マジャル氏。ヘルソンでウクライナ軍が攻勢を見せているのは、米国供与の高機動ロケット砲システム=ハイマースが届いたことに加え、ドローンが重要な役割を果たしているという。

マジャル氏 「見てください。ドローンを持った兵士です。私の後ろにいる兵士らは、1つのシフトで50回くらいドローンを飛ばします。ドローンは攻撃や砲撃を受けたり、ドローン妨害装置が使われることもあるので、手動で操作することが多いです。つまり、ナビゲーション、距離計や高度計を使わないで、カメラだけで操作している状態です。戦闘地では必要不可欠なスキルです」

マジャル氏は実際にドローンを飛ばしている映像を送ってくれた。 「これは中国製の民間用ドローンで、MAVIC3です。DJI社が製造しています。」

ドローンは「偵察用」「爆弾を落として戻ってくるタイプ」「自爆型」など何種類かを駆使して攻撃を行っていると明らかにした。そして、ドローンは消耗品なので質、量ともにもっと必要だと語る。

「様々なドローンはありますが、その中に、100キロも飛べるドローンや高高度ドローンがあり、ドローン妨害装置の電波が届かないので有利なのですが、このようなプロフェショナルなドローンは、非常に数が少なく不足しています」(BS-TBS『報道1930』 9月13日放送より)【9月14日 TBS NEWS DIG】
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戦闘のさなかに兵士がカメラ映像を観ながらピコピコ操作している・・・というのは奇妙な絵でもありますが、それが現代の戦闘の一端でもあるようです。これからはゲームオタク的な人材が優れた兵士になるのかも。

その重要な武器である無人機でもロシアは不足をきたしており、イランに頼っているとか。ただ、イラン製は信頼性に欠けるとも。

****イランのロシアへの無人航空機提供の脅威と限界****
イランはウクライナでの使用のために無人機をロシアに送った。しかし、米高官によれば、そのいくつかはすでに機能不全を起こしたと言う。(中略)

ロシア軍がイランに重要技術を頼らなければならないのは、その武器在庫がどれほど足りないかを示すものだ

イランとロシアの軍事協力が、無人機をイランがロシアに提供するなど進んでいる。イランとロシアの同盟関係ができつつあるのではないかと懸念する向きもあるが、イランとロシアの関係は伝統的に相互不信が強く、信頼関係に裏打ちされた同盟関係になることは考え難いように思われる。

今回の無人機の取引は、ロシア側の無人機需要と制裁下のイラン側の輸出収益確保願望が一致したので成立したものと考えていいのではないかと判断できる。【9月13日 WEDGE】
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同様の現象は戦闘に不可欠な弾薬でも起きています。ロシアが弾薬で頼ったのは、あの北朝鮮。

****ロシア、武器不足浮き彫り 北朝鮮から弾薬「数百万発」調達へ協議*****
バイデン米政権は6日、ウクライナに侵略を続けるロシアが北朝鮮から大量の弾薬の調達を打診していることを明らかにした。ロシアはイランから無人機を調達したことも判明している。経済制裁の影響で兵器や弾薬の不足に悩むロシアが、権威主義国家に支援を求める実態が浮き彫りになった。(中略)

電子機器の禁輸など対露経済制裁が弾薬の製造や在庫に影響を与えていると指摘されており、バイデン政権は、ロシアがイランに続き北朝鮮にも触手を伸ばしたことについて、「ロシアが補給の最前線でさまざまな困難に直面している証左」(国防総省のライダー報道官)と注視している。(後略)【9月7日 産経】
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北朝鮮製弾薬には不発弾が多いとのことで、ウクライナ軍の攻勢に苦しむロシア軍にとっては、更に悩みの種にも。

「もしウクライナの最前線に届いたのなら、試射を行っても不思議ではありません。その結果、延坪島砲撃事件と同じくらいの高率で不発弾があることが判明すると、部隊全体が不安に包まれるはずです。士気は更に低下することになるでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)【9月16日 デイリー新潮】

ロシア軍が不足しているのは武器・弾薬だけでなく、そもそも兵士も足りません。

“(ウクライナ軍参謀本部)報告によると、ロシア軍は受刑者の動員を計画。重罪を犯した受刑者は6カ月の兵役で、ほかの受刑者は3カ月の兵役につけば、「犯罪歴を取り消す」などの条件を示しているという。また、薬物やアルコールの依存症の人たちも、数多く動員されているとしている。”【9月14日 日系メディア】

当然のようにロシア国内強硬派からは「戦時動員をかけて戦争のための人員を確保すべし」との声も出てきていますが、プーチン政権としては「特殊作戦」の失敗を認め、「戦争」に対する国民の忌避感を煽る危険があるため、そうした方策はとりたくないところ。

****ロシア、予備兵動員の議論否定 ウクライナによる領土奪還でも****
ロシア大統領府のペスコフ報道官は13日、ウクライナ軍が同国北東部ハリコフ地方のほぼ全域をロシアから奪還したのを受け、ウクライナに予備兵を動員するかどうかについて「現時点ではない、その議論はしていない」と語った。 

7カ月近くに及ぶウクライナとの戦闘でロシアは最悪の敗北の一つを喫し、ウクライナでの兵力強化のため全国から兵士を動員するように求める圧力が高まっている。 

ロシアのメディアは12日、政権与党の統一ロシアのシェレメト下院議員が勝利には「総動員」が必要と言及したことを報じた。 

野党の共産党のジュガーノフ委員長は13日、党ウェブサイトで発表した声明で、欧米と北大西洋条約機構(NATO)に対する「戦争」と呼ぶものに勝利するには「何よりもわれわれの力と資源を最大限に動員することが必要だ」と記した。 

ペスコフ氏は、動員を求める民族主義的な論客による軍指導部への批判は「多元主義」の一つの例であり、ロシア人は全体としてプーチン大統領を支持し続けていると主張した。 

プーチン氏はこれまでのところ、過去5年間に兵役に就いた約200万人のロシアの予備兵を動員していない。動員した場合、限定的な軍事作戦と称してきたのが実際には全面戦争であることを認めることになる。【9月14日 ロイター】
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プーチン大統領としては、もしウクライナで失敗したら軍の責任にするつもりのようです。

【戦局好転で強気増すウクライナ】
戦況の方は周知のようにウクライナ軍が電撃的な攻勢で目覚ましい成果をあげています。

****ウクライナ軍の反攻続く=東部ドンバスのロシア軍もろく****
ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドンバス地方のロシア軍を脅かす北東部ハリコフ州のオスキル川東岸に軍が前進したと表明した。18日夜の演説で「一連の勝利の後、現状は小休止しているように見えるが、これはさらなる(勝利への)準備だ」と宣言した。
 
米シンクタンクの戦争研究所は17日、ロシアがハリコフ、ルガンスク両州に大規模な援軍を出せなかったとして「ウクライナ北東部の大部分で、ロシア軍はウクライナの反攻に対し非常に脆弱(ぜいじゃく)な状態になっている」と分析した。英国防省によると、ロシア軍は攻撃対象を民間施設などに拡大している。【9月19日 時事】
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この状況を受けてウクライナ国民の領土奪還の思いは更に強まっています。

****領土割譲「認めない」87%に ウクライナ世論調査 軍の攻勢で****
ウクライナの世論調査会社「キーウ国際社会学研究所」が15日、発表した最新の世論調査結果で、回答した人の87%が、どんなに戦争が長引いても領土をロシアに提供することを「認めない」と答えた。

3月時点より5ポイント増加したという。ウクライナ軍が今月に入って東部と南部で領土を奪還したため、国民の士気が高まっているとみられる。(中略)

同社幹部は調査結果について、「国民に(戦争に対する)疲労はなく、ウクライナに(ロシアとの)和平を押しつけることは意味がない」とするコメントを発表した。【9月16日 毎日】
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ゼレンスキー政権も強気姿勢を強めています。

****ロシア排除・中立化拒否、ウクライナが「安全の保証」で新提案****
ウクライナ大統領府は13日、ロシアに再侵略を許さないことを目的にした自国の「安全の保証」に関する作業部会の提案を公表した。

安全の保証を確約する国際条約からロシアを排除し、自国の中立化も拒否しているのが特徴で、3月末の提案から様変わりした。タス通信によると、露大統領報道官は14日、提案が「ロシアにとって主要な脅威になる」と反発した。(中略)

提案ではウクライナが侵略されないようにするため、米英仏独やカナダ、トルコ、豪州などと「キーウ安全保障盟約」と名付けた法的拘束力のある国際条約の締結を提唱した。ロシアの参加には言及していない。

安全の保証は、ウクライナのNATO加盟が実現するまで「暫定的に」必要だと強調し、ウクライナは「中立化」などの義務を負わないとも明記した。

ウクライナが3月29日のロシアとの停戦協議で提示した安全の保証に関する国際条約案では、ウクライナのNATO加盟を嫌うロシアに配慮し、ウクライナが「中立化」を確約する見返りに、自国の安全を保証してもらう内容だった。

新たな提案では、条約の適用範囲についても、「国際的に承認された領土」と位置付け、ロシアが2014年に併合した南部クリミアや、東部の親露派武装集団が実効支配する地域にも対象を拡大した。日本にも対露制裁など非軍事での貢献に期待感を示した。

ウクライナの副首相は13日、フランスのテレビ局とのインタビューで、ロシア側から、改めて停戦協議の打診があったことを明らかにし、ウクライナは拒否したと説明した。双方の停戦協議は5月中旬以降、中断している。【9月15日 読売】
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【旧ソ連構成国不安定化で明らかなロシアの影響力低下】
一方のロシアは前述のように兵士も不足する状況で、紛争を抱える旧ソ連構成国へ派遣している平和維持部隊から兵士をウクライナにまわそうともしていますが、そのことで派遣先の状況が不安定化し、結果的にロシアの影響力低下を明らかにすることにもなっています。

****上海協力機構、参加国間で紛争=ウクライナ侵攻でロシア影響力低下****
中ロが主導する上海協力機構(SCO)首脳会議は16日、ウズベキスタンの古都サマルカンドで2日間の日程を終えた。イランの正式加盟も決まり、採択された首脳宣言は「SCO拡大は地域安定に寄与する」と結束を強調した。

しかし、現実には開幕直前からアルメニアとアゼルバイジャン、キルギスとタジキスタンという参加国同士の国境紛争が起き、不安要素が残った。

「情勢悪化を非常に懸念している」。プーチン大統領は16日、サマルカンドで会談したアゼルバイジャンのアリエフ大統領に訴えた。SCO首脳会議を欠席したアルメニアのパシニャン首相とは事前に電話で協議しており、双方に自制を呼び掛けた形だ。

13日に再燃した両国の係争地ナゴルノカラバフの紛争は沈静化に向かったが、戦死者はアルメニア側135人、アゼルバイジャン側80人の計215人に上った。
 
キルギスとタジクは14日から国境地帯で交戦。相手による攻撃で始まったと非難し合った。ロシア紙コメルサントによると、衝突は「過去12年間で150件以上」と珍しくないが、SCO首脳会議に合わせてキルギスのジャパロフ、タジクのラフモン両大統領が急きょ会談する事態に。キルギス側の発表では、少なくとも36人が死亡している。

衝突したのはいずれも旧ソ連構成国。ロシア軍は、ウクライナ侵攻が長期化し、戦闘による死傷者が「7万〜8万人」(米国防総省)とも推計される。ロシアはナゴルノカラバフに派遣した平和維持部隊などからも兵士をかき集めていると言われ、それが地域の不安定化につながっているもようだ。

米シンクタンクの戦争研究所は15日、プーチン政権が2月に侵攻開始後、「旧ソ連圏に駐留するロシア軍部隊の大半が流出した」と指摘した。ロシアは今も勢力圏と見なすアルメニアやキルギス、タジクなどに在外基地を置くが、戦争研究所は引き揚げの動きが「旧ソ連圏でロシアの影響力を低下させるとみられる」と分析した。【9月18日 時事】 
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【上海協力機構(SCO)首脳会議 目立った中国との温度差】
その上海協力機構(SCO)首脳会議では、プーチン大統領に対し、インド・モディ首相からは「今は戦争の時ではない」とウクライナ侵略への苦言が。

****プーチン氏「早く停戦できるよう最善尽くす」…侵略に苦言のモディ印首相との会談で言及****
ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相は16日、中央アジアのウズベキスタンで会談した。モディ氏が「今は戦争の時ではない」とウクライナ侵略に苦言を呈したのに対し、プーチン氏は「あなたの立場と懸念は分かっている。できる限り早く停戦できるように最善を尽くす」と述べた。

両者が対面で会談するのはプーチン氏が訪印した昨年12月以来で、ウクライナ侵略開始後は初めて。
インドは、武器調達をロシアに依存し、伝統的な友好関係にある。インドは、これまでも「対話と外交による解決」の重要性をロシアに訴える一方、米欧日による対露制裁には加わってこなかった。

プーチン氏が停戦条件を明示せず停戦に言及するのは異例だ。ただ、侵略が継続している理由について「ウクライナ政府が停戦協議を拒否すると宣言した」と述べ、責任転嫁する主張を崩しておらず、停戦が実現するかどうかは不透明だ。

モディ氏は「食料と肥料、燃料の確保が世界的な問題となっている」と述べた。侵略の長期化で国民生活に悪影響が及んでいることへの懸念が発言の背景にあるとみられる。【9月17日 読売】
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一方、ロシアにとって孤立化を避けるための頼みの綱でもある中国・習近平との会談では、(プーチン大統領も予想していたことでしょうが)積極的な支援策は引き出せず、深入りを避けたい中国との温度差を目立つ形にも。

****中露、ウクライナで温度差 プーチン氏「懸念を理解」****
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、15日にウズベキスタンで行われた首脳会談で中露の良好な関係を高く評価した。

ただ、ロシアが侵攻したウクライナの情勢に関しては、習氏が公の場での言及を避けた。プーチン氏も「中国側の疑問と懸念は理解している」と述べるなど、ウクライナを巡る両国の温度差が透けてみえた。

会談冒頭でプーチン氏は「この半年間で世界は劇的に変化しているが、変わらないものが一つある。それは中露の友情だ」と発言。台湾情勢に関しても「ロシアは米国や従属国による挑発を非難する」と述べ、中国への支持を鮮明にした。習氏も「激変する世界で、中国はロシアとともに大国の模範を示し、主導的役割を果たす」と応じるなど、蜜月ぶりをアピールした。

しかし、ウクライナ情勢に話が及ぶと、プーチン氏は「中国の中立的立場を高く評価する」と述べ、中国がロシアを完全には支持していないことを暗に認めた。習氏はウクライナに言及せず、ウクライナ情勢を念頭に置いたとみられる発言すらしなかった。

ウクライナ侵攻で中国は、対露制裁を発動した米欧などを非難する一方、ロシアへの支持も表明していない。ロシアに巻き込まれる形で国際社会で孤立したり、米欧の制裁対象とされたりすることを避けたいのが本音だ。タス通信によると、米国務省のプライス報道官は15日の記者会見で「現時点で中国がロシアに軍事支援や制裁回避手段を組織的に提供している兆候は見られない」と述べた。

他方で習氏には、米国への対抗軸を形成する上でロシアとの連携を必要としている事情がある。

ウズベクで16日に行われた上海協力機構(SCO)首脳会議で、習氏は米国による対中包囲網の形成を念頭に「陣営対立を作り出すことや、地域の安定を破壊する企てを食い止めるべきだ」と発言した。SCOの参加国拡大にも意欲を見せている。

習氏は同日、ウズベクでイランのライシ大統領とも個別に会談し、「内政不干渉の原則を守り、途上国の共通の利益を擁護したい」と強調した。

「地域の安全や広範な途上国、新興国の共通利益を守る必要がある」。プーチン氏との会談でこう訴えた習氏は、ロシアと連携し、米国と異なる価値観を持つ発展途上国をまとめ上げていく考えとみられる。【9月16日 産経】
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****“同床異夢”の中露首脳会談 表向きは対欧米での共闘だが…習氏が気にする「プーチンリスク」****
(中略)習近平指導部としては対欧米でロシアとの協力が重要と感じている一方、そうすることによって欧米だけでなく、ASEANやアフリカなど第3諸国からどう思われるかということを気にしている。

中国が最も懸念しているのは米国の存在以上に、諸外国の中国からの離反であり、ウクライナ侵攻という国際法違反を犯したロシアを第3諸国がどう見ているかを注視している。

習政権としては、“国際法違反を犯したロシアに隠れ蓑を与える中国”というイメージが先行することは避けたく、何が何でもロシアとの共闘というわけではない。(後略)【9月19日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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プーチン大統領にとっては、戦局も国際関係も、苦しい状況が色濃くなっています。
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