孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  批判の集中砲火で、不法移民の親子引き離し措置撤回 収容施設での虐待、薬漬け疑惑も

2018-06-22 22:12:16 | アメリカ

(【6月22日 日テレNEWS】保護施設に赴いたメラニア夫人のジャケットに「私にはどうでもいい。あなたは?」との文字が。何か意味があるのかと波紋を広げていますが、夫人の広報官は「隠された意味はない」と説明しています。

引き離し政策を撤回したトランプ大統領は、共和党議員との会合で“娘のイバンカが(親子分断を)終わらせるよう勧め、私もその必要性を認識した”と語っているそうです。【6月21日 時事より】

メラニア夫人の異例の発言や保護施設訪問サプライズ、イヴァンカ氏の要請など家族の絆を強調するのは、トランプ氏の一種の危機管理対応でしょうか。ただ、国家の政策が家族間のやりとりで決まっていくというのも・・・

メラニア夫人のジャケットは、夫の尻ぬぐいに都合よく使われることへの不満なのか・・・とも勘ぐってしまいますが・・・・)

親子引き離しはやめる 「ゼロ・トレランス政策」は維持 すでに引き離された親子は・・・・
アメリカに不法入国した親や成人の保護者から引き離された未成年者が、5月末までの6週間で約2000人に上ったと発表されたことや、「米国は全ての法を順守する国であるべきだが、心ある統治を行う国家でなくてはならない」というメラニア夫人の異例の批判的発言などについては、6月18日ブログ“アメリカ トランプ大統領の不法移民親子引き離しにメラニア夫人が異例の批判的発言”で取り上げたところです。

子供が泣き叫ぶ音声や金網に囲まれた収容施設の様子が米メディアで取り上げられると批判が噴出。

批判は民主党やメディア、あるいは国連(グテレス事務総長)や外国政府(イギリス・メイ首相、カナダ・トルドー首相やメキシコ外相など)だけでなく、共和党内部(ハッチ上院財政委員長、マケイン上院軍事委員長ら有力上院議員12人がセッションズ司法長官に宛てて中止を求める書簡を送付)や支持基盤であるカトリック団体などからも上がる“集中砲火”状態に。

周知のように、批判を浴びるのが“常態”化しているトランプ大統領としても撤回せざるを得ない状況となっています。

****移民親子「引き離し」を大統領令で撤回、迷走するトランプ政権 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代****
<足下の共和党内からも強く批判されていた不法移民の親子引き離し措置を、トランプが大統領令で撤回。しかし対応の詳細は決まっておらず人道危機は続いている>

メキシコとの国境地帯で「逮捕した不法移民の親」を「子供」から隔離する「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ、つまり一切の例外を認めないこと)」措置について、アメリカでは連日テレビのトップニュースとなっています。

今週19日の時点では、隔離された子供だけを収容した施設で「両親を恋しがる泣き声であふれている」という音声(移民弁護士が録音したもの)が公開されたり、あるいは「10歳のダウン症の子どもが親から引き離された」という事例が発見されたりするなど、事態は一刻の猶予もないところまで来ていました。

そんな中で、所轄官庁である国土安全保障省のニールセン長官は、こともあろうに「メキシコ料理店」で食事をしているところを他の客に見つかって、「恥知らず」という罵声を浴びせられています。(中略)

また、国境州の多くでは「不法移民を逮捕すると、子供との隔離という深刻な人道危機を招く」として、州の判断で国境パトロールを中止することを決めました。

さらに、中南米に多くの路線を運航しているアメリカン航空は、「隔離された子供の強制送還措置には協力できない」という声明を出しています。

日に日に高まる批判に対して、トランプ大統領とその側近は「この危機は民主党が作り出したものだ」とか「自分たちも憎むべき事態だと思う」などと言って居直っていました。

特にケリーアン・コンウェイ顧問は、出演したCNNの番組で「張本人は議会であり、特に民主党。大統領が悪いというのはフェイクニュース」だと突っ張って、キャスターのクリス・クオモと罵倒合戦になっていました。

大統領サイドの説明はこうです。「民主党は国境の壁建設予算に反対しており、これでは移民政策が決められない」「従来は移民審査の期間中は親子で一緒にいられたが、20日を超えて小児を強制執行施設に入れるのは違憲だというルールを民主党が作ったから現在の危機に至った」と言うのです。

この弁明ですが、要するに「民主党の作ったルールでは、親子が20日以上、強制執行施設にはいられない、その場合は人道的観点から子供を保健福祉省が保護しなくてはならないので、そうしているだけ」というのです。

確かに、現時点では2000人を超える子供たちは保健福祉省所轄の収容所に入られており、親は逮捕のうえ、国土安全保障省の施設に入れられているのは事実です。

ですが、このルールがあるのに「全員即時逮捕」という政策を取れば、このような「親子隔離」になるのは「分かってやっている」のは間違いありません。

そんな中で、大統領は「悪いのは議会」という強弁を続けていたのですが、ホワイトハウスの周辺では「このままでは政治的ダメージが大きくなる」という声も出ていました。

また政治的には、共和党の支持者の中に深刻な分裂が生まれていました。

世論調査によれば、共和党支持者の53%が「親子隔離」も「やむを得ず」としているというのですが、例えば穏健派のジョン・ケーシック(オハイオ州)知事は「こんな蛮行を許していては、レーガンとブッシュ親子の共和党が崩壊する」と激しく政権を批判していましたし、保守派の中でも宗教保守派からは「家族の価値を蹂躙するもの」という批判が出ています。また、アメリカのカトリックからの反発も強くなってきていました。

そして今週20日になって「親子は一緒に扱うように」という「大統領令」が突然出されました。

トランプ政権としてはめずらしく、政治的な方針転換がされたのです。ただ、この大統領令は他の法律や、実態との整合性を取ることなく、唐突に出されたものです。従って今後については、まったく予断を許さない状況が続くようです。

まず「全員逮捕」という「ゼロ・トレランス政策」の看板は下ろしていません。ですから、親子一緒に被疑者扱いがされることになります。

そんな中で、被疑者用の施設に入れることができる限度である20日以内に、審判が下りる保証はありません。そこで、審判を待つ間は、子供用の収容所に親も入れるように改造して、それを「家族用の収容所」にするというのですが、現時点では詳細は未定です。

最大の問題は、この大統領令では「現時点で親子が引き離されている2000以上の家族」については、一切何も触れていないということです。

つまり、現在引き離されている家族が一緒になれる見通しは立っていません。そんな中、親は「国土安全保障省」の所轄、子は「保健福祉省」の所轄ということで、縦割り行政の中で「お互いの居場所が分からず、連絡も取れない」というケースが多くなっています。米国内の人道危機は日々局面を変えながらも、続いているのです。【6月21日 Newsweek】
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嘘や根拠不明の発言、不倫やセクハラ、人種差別、あるいは放尿プレイにロシア疑惑・・・そうしたものは「まあ、トランプだから・・・」で済まされても、罪もない子供を犠牲にしてはならないという“タブー”には、さしものトランプ大統領でもいかんともしがたいようです。

トランプ大領にも言い分はあります。
“国土安全保障省によると、昨年10月から今年2月までに子供を帯同した不法入国者数は4倍以上となった。トランプ氏は20日、共和党議員との会合で不法入国者が「子供を入国するためのチケットとして使っている」と非難した。”【6月21日 産経】(国土安全保障省のあげている数字の内容・意味は吟味する必要がありますが)

移民の子らの収容を委託している保護施設で虐待や規定違反が横行か
“既に親から引き離されている子ども2300人以上を親と再会させる計画は今のところ示されていない”【6月22日 AFP】という状況で、移民の子らの収容を委託している保護施設における“虐待や規定違反の疑い”も報告されています。

****移民の子らの保護施設で虐待や規定違反横行か 米調査報告****
米政府が移民の子らの収容を委託している保護施設10か所以上で、虐待や規定違反の疑いが後を絶たないことが、20日に発表された報告書で明らかになった。
 
ニュースサイトのテキサス・トリビューンと調査報道センターによる共同調査の報告書は、ドナルド・トランプ大統領が移民政策を転換し、対メキシコ国境での移民親子引き離しを停止する大統領令に署名した同日に公開された。大統領はこの政策をめぐり、国内外から激しい非難にさらされていた。
 
報告書は政府などの調べに基づいてまとめたられたもので、移民の子らを長期にわたって保護する民間施設で発生したとされる身体的・性的虐待や、子どもの安全とケアに関する基準違反が記されている。
 
テキサス州の監査員らからは、けがや病気の放置、投薬ミスといった事例が指摘されている。
 
報告書によると、難民再定住事務所と契約を結んだ70以上の民間団体が移民の子らを収容。その大半が宗教団体や非営利団体で、単身で米国入りしたり、移民当局によって親から引き離されたりした子らが身を寄せている。
 
2014年以降、13施設に対して深刻な違反が指摘されたにもかかわらず、ORRとの契約解除に至ったのはわずか2施設にとどまっているという。【6月21日 AFP】
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報告の内容はよく把握していませんが、おそらく「ゼロ・トレランス政策」発動以前からの収容児童らに関する事案ではないでしょうか。

ただ、そうであるにしても、そうした疑念を抱える施設に2000人以上の子供が短期間に収容されれば、そこで生じる出来事はおのずと推察できます。

【“薬漬け”の疑いも
大量の抗うつ剤などで“薬漬け”にすることで子供らを管理していた・・・という訴訟も起きています。

****不法移民の子どもは薬漬けで大人しくさせられていた****
<不法移民の親子引き離しが問題になっているアメリカで、移民の子供たちを大量の抗うつ剤などで大人しくさせていた疑いが浮上>

不法入国した親から子供を引き離して収容していることが非人道的とスキャンダルになっているアメリカで、収容施設に入れられた移民の子供たちが薬漬けにされているかもしれない──6月20日に明らかになった訴訟から、信じられないような疑いが浮上した。

問題の施設は、米テキサス州ヒューストン近郊にある。メキシコとの国境で親と引き離されたケースもある移民の子どもたちが、トラウマ(心的外傷)を受けないようにする強硬策として、当局から大量の向精神薬を強制的に飲まされていたという。

行動や精神に問題を抱える若者専門の治療施設、シャイロー治療センターに入れられた子どもは、どんな症状でもほぼ例外なく、親の同意を得ずに薬を投与されている、と主張するロサンゼルスのNPO、人権と憲法センターは、施設を管轄する米保健福祉省難民再定住室(ORR)を相手取り、4月16日に訴訟を起こした。

「施設の責任者から、君を大人しくさせるために注射すると言われた」──収容されていた子どもの一人は弁護士にこう語ったという。「職員2人に掴まれた状態で、医師に注射された。抵抗しても相手にされず、注射が終わるとベッドに放置された」

「シャイロー治療センターに入れられれば、ほぼ例外なく大量の薬を投与されることになる。もし親と引き離されて心が不安定になった子どもがいれば、向精神薬を投与されるはずだ」、と原告の代理人弁護士であるカルロス・オルギンは言った。

薬を飲まなければ施設から出られないと脅す
訴状によれば、薬を拒否した子どもは、体を押さえつけられて注射された。これはビタミン剤だよ、と言って子どもに信じ込ませる職員もいた。

「いくつかの薬はビタミン剤だ、君は栄養をつける必要があるからね、と職員に言われた。2回くらい種類が変わった。どっちを飲んだ時も感覚がおかしくなった」、と言った子もいるという。

朝に9種類、晩に6種類もの異なる薬を飲まされた例もあり、その中には抗精神病薬、抗うつ剤、パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬なども含まれていた。

子どもたちは職員から、薬を飲まなければ今後も収容されたままになる、と脅されたという。服用後、疲労感が襲ってきて歩けなくなる副作用があった、と話す子もいた。

裁判で原告側は、子どもが複数の向精神薬を同時に服用すれば深刻な症状を引き起こす恐れがある、と主張。薬が本当に必要な治療に使われず、逆に「飲む拘束衣」として悪用されるリスクを防ぐための監視体制の必要性を強調する。

これらの施設は、子どもに薬を投与する際は親の同意か裁判所による命令が必要とするテキサス州などの法律を無視し、独断で薬を投与しているという。

今回の裁判は、ORRが該当する州法を遵守し、子どもの収容期間を引き延ばせなくするよう政策を転換させることも目指している。

ある母親は、シャイロー治療センターは保護者の連絡先を知っていたのに、家族に何の相談もなく娘に薬を投与した、と言った。別の母親は、娘は強力な抗不安薬を投与されて数回倒れた、と言った。【6月22日 Newsweek】
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“朝に9種類、晩に6種類もの異なる薬を飲まされた例もあり、その中には抗精神病薬、抗うつ剤、パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬なども含まれていた。”・・・・まともな精神状態が維持できずに寝たきり状態になる危険性も十分に考えられます。

「家族用の収容所」を用意しなければならない、収容施設での扱いに関し、上記のような“虐待”や“薬漬け”といった疑惑で世間の目が厳しくなる・・・という状況で、「全員逮捕」という「ゼロ・トレランス政策」の維持が困難になることが予想されます。

おそらくそこでトランプ大統領が吠えるのでしょう。「だから壁だ!壁を作って誰も入れるな!」と。



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