(強制収容所を監視する北朝鮮女性兵士 中国からの脱北者強制送還が増加し、北朝鮮は女性用強制収容所を拡充しているとか。北朝鮮側は強制収容所の存在を否定していますが、強制労働・暴力・飢餓・処刑などに服役者はさらされており、何千人もの服役者が死亡しているとも 【9月21日 Mail Online】http://www.dailymail.co.uk/news/article-3242787/North-Korea-expands-space-women-notorious-gulags-large-numbers-forcibly-returned-China.html
ありそうな話ですが、これも実態はよくわかりません。)
【特別激励金支給報道の一方で、臨時徴収の報道も】
北朝鮮については、毎回取り上げるたびに断るように、情報統制が厳しい「不思議の国」ですから実際のところはよくわかりません。
そんな北朝鮮について、びっくりするような話が。
来月10日の朝鮮労働党創建70周年記念日を前に、全住民に1カ月分の生活費に当たる特別激励金を支給するとか。
****金正恩氏が全住民に1カ月分の生活費 激励金支給へ****
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が来月10日の朝鮮労働党創建70周年記念日を前に、全軍人と住民に1カ月分の生活費に当たる特別激励金を支給する。朝鮮中央通信が25日に伝えた。
軍人や労働者のほか、年金や補助金、奨学金の受給者にも支給するという。このため大学生や退職者、無職の人も含め、高校生以下を除く全住民に支給されるとみられる。
元朝鮮労働党幹部の北朝鮮脱出住民(脱北者)によると、過去に金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代に成果を上げた企業所や農場に対し特別激励金を支給したことはあったが、全住民に支給するのは初めてという。
朝鮮中央通信によると、今回の決定は23日に発表された最高人民会議(国会に相当)常任委員会の政令によるもの。【9月25日 聯合ニュース】
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本当でしょうか?
今の北朝鮮に、どこを探せばそんな資金的余裕があるのか?
紙幣印刷の輪転機を回してバラ撒けば出来ないこともないでしょうが、それでは経済が大混乱しそうです。
一方で、党創建70年記念行事に合わせた建設事業や閲兵式への支援名目に8月、住民1世帯当たり中国元で40元(約750円)が徴収されたという、まったく逆の話も報じられています。
****【北朝鮮情勢】羨望のはずの海外勤務辞退者続出のわけ…党創建70年行事で外交官に1億円超ノルマ、工作員も外貨稼ぎに追われ****
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が10月10日の朝鮮労働党創建70年行事の費用を捻出するため、住民からの徴収に加え、外交官らに1人当たり最低100万ドル(約1億2千万円)の外貨融資取り付けを課していることが23日、複数の消息筋への取材で分かった。
ノルマに耐えかね、羨望の的とされた海外勤務を辞退するケースも続出。対外的には、核実験やミサイル発射を示唆する強硬姿勢で臨み、経済難にあえぐ内部にも圧迫を強め続ける実態が浮かぶ。
北朝鮮幹部と接触のある消息筋らによると、党創建70年記念行事に合わせた建設事業や閲兵式への支援名目に8月、住民1世帯当たり中国元で40元(約750円)が徴収されたという。北朝鮮の一般労働者の月給に倍する額だ。
水害復旧名目としても成人1人当たり2千ウォン(約260円)や軍手などの現物供出が課されたという。地方によっては、記念日を前に金日成(イルソン)・正日(ジョンイル)父子の銅像建設にも動員され、大干魃(かんばつ)に見舞われた国民生活に追い打ちをかけている。
巨額の外資誘致を義務付けるなど、在外公館勤務者にはいっそう過酷なノルマが求められ、業績低迷から幹部を30、40代の若手に交代させる動きもみられる。
工作機関の偵察総局は海外の工作員に、今月までに1人20万ドルを上納するよう指示。「未納者はクビだ」と迫られ、諜報活動などの本来業務よりも外貨稼ぎに追われる状況だという。
ノルマに耐えかねて自ら帰国を申請する海外要員も増えているとされる。外国文化に触れ、外貨を手にできることから北朝鮮で憧れの仕事といわれてきた海外勤務の志願者も目に見えて減少しているという。
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)にも記念行事への出席を募っているが、1人約30万円の参加費に加え、通行料などとして追加出費を強いられ、敬遠する空気が強いとされる。
党創建70年を前に、北朝鮮は新たなミサイル発射や核実験実施を相次ぎ示唆している。長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の開発だけで、北朝鮮住民1年分の食糧に相当するトウモロコシ約250万トンを賄える約8億5千万ドルを費やしたと試算されている。
中朝関係の悪化で主力の石炭輸出も振るわず、慢性的な外貨不足に拍車が掛かる。党創建70年行事を「史上最大の負債まみれの宴だ」と自嘲する北朝鮮関係者もいるという。【9月28日 産経】
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こちらの情報も、韓国・北朝鮮に厳しい産経の記事ですから鵜呑みにはできませんが、前記の“全住民に1カ月分の生活費に当たる特別激励金支給”とは真逆の“住民1世帯当たり中国元で40元(約750円)が徴収”とのことです。
もっとも、40元(約750円)が北朝鮮の一般労働者の月給に倍する額というのはどうでしょうか?
平均月収が約400円ということでしょうか?
韓国銀行(中央銀行)が昨年発表した2014年の北朝鮮の名目国民総所得(GNI)は、韓国の通貨基準で換算すると、1人当たりで138万8,000ウォン(約14万円)とのことですから、ひと月では1万円強になります。(韓国の北朝鮮に関する発表数字も政治的バイアスがあるかも)
実際の国民生活は、こうした公式の貨幣経済統計には表れないものにも依存しており、必ずしもこの数字が生活実態を反映しているものでもないかも。
臨時徴収を負担できるのは限られた階層でしょうから、全住民ではなく一部エリート層への課金だったのでは?
いずれにしても、そんな財政的に苦しい北朝鮮が全住民に特別激励金支給というのは、考えにくい話です。
【冷え込む“血で固められた友誼” ただ、北を見放せない中国】
中国との関係も「よく実態がわからない話」のひとつです。
****中朝の“血で固められた友誼”に亀裂 北兵士困窮し越境強盗 国境に高まる「緊張」****
“血で固められた友誼(ゆうぎ)”といわれてきた中朝関係がかつてないほど冷え込んでいる。
中国からの支援も中朝貿易も激減したことを受け、最近、困窮した北朝鮮側の兵士が国境を越えて金品を奪う事件が急増。中朝国境に緊張が高まっている。
「毎年の中秋節前は書き入れ時だが、今年はさっぱりだ」
吉林省の延辺朝鮮族自治州図們市。中国と北朝鮮を結ぶ図們大橋(通称・中朝友誼橋)の近くで今月下旬、土産店を経営する朝鮮族女性が嘆いた。毎日の売り上げは昨年の7割に落ちたという。
280元(約5300円)を払い橋を渡って北朝鮮を6時間観光するコースはあるが、今申し込むのは、朝鮮戦争を経験した老人とその家族だけだ。
この女性によると、金正日時代までは、北朝鮮と中国の要人の相互訪問が頻繁で、中国メディアが北朝鮮の特集を組むなど好意的に取り上げることがよくあった。中国人の中に北朝鮮に興味を持つ人が多かったが、そうした“宣伝”がなくなると、国境を訪れる観光客の数も激減した。(中略)
中国税関の統計によると、2015年上期の中朝貿易総額は約154億元(約2900億円)で、昨年と比べて約13・6%減少した。中国の地方政府や国有企業によるさまざまな名目の北朝鮮の支援もほとんどなくなったという。
北京の朝鮮問題研究者は「金正恩(キム・ジョンウン)政権内の親中派である張成沢(チャン・ソンテク)一派を粛清したことが習近平指導部の逆鱗(げきりん)に触れた」と指摘。
北京で3日に行われた抗日戦争勝利70周年の軍事パレードに出席した崔竜海(チェ・リョンヘ)・朝鮮労働党書記が冷遇され、中国共産党要人の誰とも会談できなかったのも、中朝関係の悪化を象徴している。
中国からの支援がなくなり、困窮した北朝鮮の兵士が国境を渡り、金品を奪うために中国人を襲う事件が急増。昨年12月と今年4月には中朝国境近くの中国人宅が2度襲われ、計7人の中国人が殺害された。
こうした事件は韓国紙の報道で表面化したが、ほんの一部にすぎないと証言する関係者もいる。延吉市内のタクシー運転手は「これまで北朝鮮に同情していたが、イメージが急速に悪化した」と肩をすくめた。【9月25日 産経】
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9月3日に北京で行われた抗日戦争勝利70周年については、北朝鮮側が軍事代表団を送ることを拒否していたとも。
****北朝鮮、中国式典への参加拒否していた 依然冷えた関係****
北朝鮮が、9月3日の中国戦勝70周年記念式典に軍事代表団を送ることを拒否していた。韓国の金章洙(キムジャンス)駐中国大使が18日、国政監査で答弁した。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記は中韓接近に不快感を持っているとされ、中朝関係が依然、冷却関係にあることを裏付けた。
金大使によれば、2013年ごろから中朝間の軍事交流がなくなった。北朝鮮は、関係改善を訴える中国の誘いを一切無視。中国は式典を巡り、北朝鮮に軍事代表団の派遣と軍事パレードへの北朝鮮軍の参加を求めたが、北朝鮮は拒否したという。
韓国政府は、中国が現在、北朝鮮に航空燃料は供給しているが、兵器や実弾の支援はないとみている。
また、金大使によれば、18日までに北朝鮮の核実験場や長距離弾道ミサイル発射基地に特別な動きはみられないという。【9月18日 朝日】
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中国の“要請”に従わない北朝鮮に、中国側は苛立ちを強めているように見えます。
****中国外相、北朝鮮に自制要求=「安定かき乱すな」****
中国の王毅外相は19日、北京で開かれた北朝鮮核問題をめぐる国際セミナーで演説し、北朝鮮が長距離ミサイル発射や核実験実施を示唆していることを念頭に、「緊張をもたらしかねないいかなる新たな行動も取るべきではない」と述べ、自制を求めた。
王外相は「朝鮮半島に戦乱が起きることは誰にとっても何の利益もない。北東アジアの平和と安定の大局をかき乱す考え方ややり方は取るべきではないし、賢明ではない」と強調。国連安保理の対北朝鮮制裁決議にも触れ、「6カ国協議参加国は決議を履行する義務がある」と訴えた。
セミナーは北朝鮮が核放棄を約束した2005年9月19日の共同声明採択から10年を記念し、中国外務省のシンクタンク、国際問題研究院が主催。18、19両日に開かれ、各国から政府当局者や専門家らが参加したが、出席者によれば、北朝鮮の参加者はいなかった。【9月19日 時事】
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もっとも、中国としても、半島情勢の安定や6か国協議を考えると北朝鮮・金政権を切るに切れないところでもあるようです。
****それでも中国が北朝鮮を見放すことができない理由****
やはり中国にとって北朝鮮は手放せない相手、なのか・・・。
1~7月までに中国から北朝鮮へ原油50万トンや物資が「例年どおり」支援されていた。先週、韓国の統一省が国会に提出した資料で分かった。
13年に北朝鮮が3回目の核実験を行ったことを機に、表向きは中国の北朝鮮に対する冷遇が始まったとみられている。1月には、中国が北朝鮮向けの原油パイプラインを閉じたとの臆測も飛び交ったが、噂にすぎなかつたことが裏付けられた形だ。
韓国政府による発表は「北における交通量に変化がない」から、と状況証拠に基づく判断ではあるが、中国が北朝鮮を見限ることができない理由は確かにある。6力国協議の再開だ。
再開の見通しは立っていないが、中国は6力国協議を通じた北朝鮮問題の解決を今でも願っている。原油の支援を断つことができないのも、北朝鮮を協議に連れ戻すための「アメ」が必要だからだろう。
ただ、中朝両国とも自ら歩み寄る気配はなさそうだ。今月、中国の抗日戦争勝利70年記念式典に招待されていた金正恩第1書記は参加を拒否。朝鮮労働党の崔竜海書記が代理で参加したが、1人の官僚にも会えないという冷たい扱いを受けると、予定を繰り上げて帰国した。
中国としては「生かさず殺さず」といったところか。だが金にとっては、まんざらでもないのかも。【9月29日号 Newsweek日本版】
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【動きが報じられる核実験 動きが止まったミサイル発射準備】
前出【朝日】にもある核実験については、何らかの動きがあるとも報じられています。
****北朝鮮の核実験場に動き=「目的は不明」―米研究所****
米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は24日、北朝鮮北東部の豊渓里にある核実験場の18日付の人工衛星画像を公開した。
北朝鮮による核実験の観測が浮上する中、研究所は新たな活動を確認できると分析。ただ、目的は不明で、保守作業から実験の準備まであらゆる可能性があると指摘した。(後略)【9月25日 時事】
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ただ、韓国は、北朝鮮がまもなく核実験を行うという兆候は見当たらないと発表しているそうです。【9月26日 Iran Japanese Radio】
北朝鮮は2006年、2009年、2013年に3回の核実験を行い、これにより朝鮮半島の緊張が発生し、対北朝鮮制裁が行使されています。
一方、長距離弾道ミサイルについては、動きを止めて各国の反応を探っている可能性も指摘されています。
****北朝鮮、ミサイル発射準備が止まる 海外の反応探る?****
北朝鮮が、10月10日の朝鮮労働党創建70周年に際して示唆していた長距離弾道ミサイルの発射は、準備の動きが止まっている。
10月10日の記念日まで2週間となっても、平安北道東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場には機体が搬入されていない。2012年12月の前回発射時とは異なる動きで、海外の反応を探っているとの指摘や、発射の必要性に迫られていないとの見方もある。(後略)【9月28日 朝日】
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なにかと、よくわからない国です。