孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  鉄道建設外交 ミャンマーは白紙へ トルコでは高速鉄道を建設 日本の新幹線は?

2014-07-28 22:04:50 | 中国

(7月25日 中国企業が建設に参加したトルコの首都アンカラとイスタンブールを結ぶ高速鉄道の第2期工事が完成し、運行を開始 【7月28日 Recoed China】)

アフリカ全土に中国製の鉄道網を張りめぐらせる構想
毛沢東時代のタンザニア鉄道以来、鉄道建設は中国外交の中心的役割を果たしています。

中国は近年、中東に依存していた原油をはじめ資源の調達先を増やすため、アフリカへの関与を強めていますが、そこでも鉄道建設が通信インフラ整備とならんで活用されています。

“欧米の資源メジャーに対抗するために取ったのは、政府ぐるみの便宜供与。資源の採掘や積み出しのための鉄道や港湾、発電所といったインフラ建設を中国が請け負う。資金は中国政府の援助に加え、国有の中国輸出入銀行や国家開発銀行も有利な融資を提供した。”【6月24日 朝日】

****中国とアフリカという高速列車を加速する****
・・・・中国の李克強(リーコーチアン)首相は5月前半にエチオピア、ナイジェリア、アンゴラ、ケニアを歴訪した。

中国が2年前、エチオピアの首都アディスアベバに2億ドル(約200億円)を投じて建設したアフリカ連合の本部で演説し、アフリカ全土に中国製の鉄道網を張りめぐらせる構想を打ち出した。

ナイロビでは、中国が総工費36億ドルの9割を借款として融資し、中国の国有企業が建設する鉄道の調印式に出席した。

ケニアのケニヤッタ大統領のほか、いずれ鉄道が伸びる計画があるウガンダのムセベニ大統領、ルワンダのカガメ大統領、南スーダンのキール大統領も駆けつけた。

線路は、植民地時代に敷設された狭軌より幅が広い標準軌に変わり、コンテナも運べるようになる。いずれアフリカ内陸部の資源が、これに乗ってモンバサ港からインド洋を渡り、中国へと運ばれていく。

建設にあたる中国路橋工程有限公司の熊仕伶ケニア事務所副総経理は「モンバサからナイロビまで15時間かかっているところを4時間に短縮する。これでケニアのGDPは1・5%高まる」と指摘する。

ケニア鉄道局のマイナ局長も、新たな鉄道は「ケニアの人々の利益になる」と地元への恩恵を強調した。(後略)【同上】
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豊富な資金を提供しながら、政治には口を出さない「内政不干渉」の原則を掲げて、欧米諸国が深入りを嫌う独裁政権にもカネを出して資源の獲得を重ねる中国方式は、逆に言えば中国の利益のためなら独裁政権でも支援するということでもあり、批判も多々あるところです。

支援を受ける側にとっては、うるさいことを言わない中国方式は好評ですが、現地住民との軋轢、賄賂の横行など、中国の進出に伴う弊害も指摘されています。

壮大な「中国の夢」 ミャンマーでは頓挫
当然ながら、支援を受ける側は国際状況を見て、中国の支援を受けるのが得策かどうか・・・判断する訳で、民主化に伴い欧米接近が強まるミャンマーでは、中国による“ミャンマーのど真ん中を西南から東北に貫くチャオピユー・昆明間の鉄道”建設計画が白紙に戻ったようです。

****ミャンマーが「中国による鉄道建設」を白紙に****
どうやらミャンマーは、中国を相手に強力なカードを切ったようだ。

7月22日に伝えられたところでは、ミャンマー鉄道運輸省当局者が、(1)2011年に中国との間で締結された鉄道建設に関する協定に記された3年の期限が過ぎても、中国側に工事着工の動きが見られない(2)当該鉄道建設にミャンマー国民の一部、社会組織、いくつかの政党が賛成していない――を理由に挙げ、「当該協定を実施しないことを決定した」ことを明らかにした。(中略)

今回のミャンマーの措置によって、中国が東南アジア大陸部で進めて来た鉄道ネットワーク構築計画におおきな狂いが生じかねないことだろう。

当初、昆明を基点に西南に進み、大理を経て瑞麗で国境を越え、ミャンマー側のムセーを結び、ミャンマー中央部を西南に下り、インド洋に臨む深海港のチャオピューまでの総延長810キロの路線が計画されていた。

実は中国は、中国西南、ミャンマー、ラオス、ヴェトナム、タイ、カンボジア、マレーシア、シンガポールに跨る泛亜鉄路と呼ぶ鉄道ネットワークを構想していた。昆明を基点にミャンマーを通過する西線、ラオス・タイを貫くマレーシア・シンガポールと進む中央線、ヴェトナム・カンボジア・タイと繋ぎマレーシアからシンガポールを結ぶ東線の3ルートによって、これらの国々を結び付けてしまおうというものだった。

その上、重慶・成都・新疆ウイグル・中央アジア・東欧を経てドイツ・オランダへと繋がる鉄道を、さらに昆明、シンガポールへと繋げることで、中国を仲介役にヨーロッパと東南アジアを鉄道で結んでしまおうという「渝新欧国際鉄路大道(渝=重慶、新=シンガポール、欧=ヨーロッパ)」計画までぶち上げていた。

最近では北京からシベリア東部を経てベーリング海峡を越え、南北アメリカとも鉄道で結んでしまおうという計画――「中国の夢」というのだろうか――まで話題に上がり始めた。

いわば今回のミャンマーの対応によって、「中国の夢」が白日夢に終わってしまう可能性も考えられないわけではない。ミャンマーは中国の喉元に鋭い匕首を突きつけたともいえる。(後略)【7月25日 樋泉克夫氏 フォーサイト】
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ヨーロッパと東南アジアを鉄道で結び、更にシベリア東部を経てベーリング海峡を越え、南北アメリカとも・・・・とは、何とも壮大な「中国の夢」です。

その現実性とか、鉄道で結ぶ意味などのいろんな問題はさておき、このような大風呂敷を広げられる“勢い”は、閉塞感漂う日本から見るとうらやましくもあります。
もし本当に動き出したら、朝鮮半島から対馬海峡を渡って東京へもつなげてほしいものです。

日々の生活、現実に直面している様々な問題も重要ですが、「夢」を語ることも大切なことです。

“(日本)政府は、無人探査機による月面着陸・調査に向けた研究開発を本格化させる。月の地質調査などを行い、資源利用の可能性を探る計画だ。2019年度の打ち上げを目指し、文部科学省が15年度の概算要求に関連予算を盛り込む方向だ。”【7月15日 読売】なんて話もあっていいのでは。

トルコで、中国が国外で請け負った最初の高速鉄道建設プロジェクトが開通
話を中国の鉄道輸出に戻すと、これからの鉄道建設の中心は高速鉄道になります。
中国は、日本の新幹線技術などをベースにして高速鉄道網の総延長で日本を抜き世界トップに立っていますが、海外への高速鉄道輸出にも乗り出しています。

****トルコの高速鉄道開通=中国が初の建設請け負い****
27日付の中国共産党機関紙・人民日報によると、中国が建設に参加したトルコの首都アンカラと最大都市イスタンブールを結ぶ高速鉄道の2期工事が完了し、25日、エルドアン首相がアンカラからイスタンブールに向けた一番列車に乗り、開通を祝った。

中国が国外で請け負った最初の高速鉄道建設プロジェクトで、同紙は高速鉄道の「海外進出」を進める上で重要な意義があると強調した。【7月27日 時事】 
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もっとも、このトルコ高速鉄道の開通式はさんざんだったようです。

****トルコ高速鉄道が開通、首相乗車も一時停止で遅延****
トルコで25日、首都アンカラと最大都市イスタンブールを結ぶトルコ高速鉄道(YHT)の完成記念式典が行われ、初走行の列車にレジェプ・タイップ・エルドアン首相が乗車した。

しかし、技術的な問題が発生したことで走行は約30分間停止。首相は予定より遅れて目的地に到着した。

高速鉄道の運行開始により、2大都市間の所要時間はおよそ半分にまで短縮されて約3時間半となる。首相は完成を祝う演説で、この鉄道は新しいトルコの象徴だと誇らしげに語ったが、開業日は着工以来、数回にわたって延期された上、複数の事故も発生した。

首相に同行するテレビ局の記者や高官レベルの代表らを含む招待客を乗せた初走行の列車は、アンカラからイスタンブールに向けて順調な走行を続けていたものの、衛星都市イズミットで突然に停止した。

記者らは、高架線に問題が発生して列車への電力供給が停止したことが原因と指摘したが、政府関係者はこれを否定。妨害行為があった可能性を否定できないと主張している。

一方、イスタンブール郊外、ボスポラス海峡のアジア側にあるペンディック駅で演説した首相は、列車が一時停止したことには言及せず、「トルコは70年前から鉄道の開通を願い続けてきた。現政権の発足以前は、高速鉄道の開業は夢見ることさえ不可能だった」 と述べた。

鉄道はまだ終点となるイスタンブール中心部までは開通しておらず、ペンディックからイスタンブールの中心部までは依然、長ければ2時間近くかかる。

政府は向こう数年で全線を開通させたい考えだが、完成予定の時期は今のところ未定だ。
首相によれば、鉄道運賃は開業から1週間は無料。2週目以降は、片道70リラ(約3400円)となる。【7月27日 AFP】
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気性の激しいエルドアン首相のこですから、責任者がどうなったのか他人事ながら心配です。

実績は台湾のみの日本・新幹線
日本にとっても、武器輸出が原則的にはできない国情、原発も国内で稼働していない現状では、新幹線技術を生かした高速鉄道は数少ない大型技術輸出プロジェクトですが、最高速度250キロ超の高速鉄道を建設・計画中の国はアジア、アフリカの新興国から米国やカナダまで22カ国に及ぶなかで、これまで日本が技術を輸出できたのは台湾だけというのが実際のところです。

****首相が売り込み****
2012年11月20日、ASEAN関連首脳会議のためにカンボジア・プノンペンを訪れた野田佳彦首相は、インドのシン首相と笑顔で握手を交わした。

この日のトップ会談で、インド西部のムンバイ―アーメダバード(500キロ)の高速鉄道計画について、「新幹線システムの採用を念頭に協議を進める」と双方が合意したのだ。だが、両首脳は表舞台を去った。

JR東日本などでつくる鉄道コンサルティング会社が建設に向けて調査を始めているが、欧州勢が猛烈に巻き返しを図る。

インドには、この区間を含めて総延長4600キロ、計7路線に及ぶ高速鉄道の建設構想がある。フランスやスペインがすでに事前調査などを受注。8月に来日を予定するモディ首相に、安倍晋三首相らが新幹線システムの採用を、トップセールスで売り込む。

総事業費9千億円と試算されるマレーシア・クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画は、早ければ来年にも工事の入札が始まる。JR東日本がシンガポールに事務所を置き、情報収集などを進める。(後略)【7月16日 朝日】
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欧州勢や、低コストと資金援助などで攻勢をかける中国といったライバルが多い中で、どうでしょうか・・・。
専用線方式で安全性には実績がありますが、建設コストも高く、乗継も不便というデメリットもあります。

アメリカがどの方式を採用するかも、世界標準としての影響力があるとされています。
米国高速鉄道協会(US HSR)は、全米の大都市を結ぶ2万7000キロ余りの高速鉄道の開発構想を掲げていますが、実現にはまだハードルがあるようです。

そのアメリカ高速鉄道のカギとなるのが、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ路線とされています。

****米加州の高速鉄道を全米への足掛かりに、推進派の期待高まる****
米カリフォルニア州で建設が計画されているサンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道の推進派は、先月開かれた関連会議で、今年の着工が実現すれば全国的にはまだ大きな動きにはなっていない高速鉄道構想が大きな転機を迎えるという期待感を示した。

バラク・オバマ大統領と民主党は高速鉄道建設を進めようとしているが、推進派は根強い反対があることを認識している。一例を挙げると米議会共和党は財政支出に難色を示している。

カリフォルニア州は2008年の住民投票で、29年の開通を視野に、建設費の一部として99億5000万ドル(約1兆100億円)の支出を承認。

サンフランシスコ-ロサンゼルス間(約840キロ)が最高時速320キロの高速鉄道で結ばれると、3時間未満で移動可能となる。

計画が順調に進めば22年までにサンフランシスコの南方約200キロのマーセドとロサンゼルス郊外サンフェルナンドバレーを結ぶ区間がまず開業する見通しだ。(後略)【3月16日 AFP】
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連邦政府と州の負担がどうなっているのは知りませんが、どちらも金欠状態です。しかも議会・共和党との対立で政治は機能マヒ状態・・・ということで、しばらくは動きはないのでは。
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