孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

地球の鉱物資源は枯渇しつつあるのか?

2012-06-21 23:15:30 | 環境

(6月2日 ノルウェー調査船で北極海を視察するクリントン米国務長官 北極圏には天然ガスや鉱物など多くの埋蔵資源があり、そのうちの石油だけでも900兆ドル(約7京円)の価値があるとも言われています。昨今の温暖化に伴い北極圏の海氷が溶解することで、海底に眠る豊富な資源を狙う国々により大争奪戦が展開されることも懸念されています。 【6月4日 AFPより】)

日本にも大規模油田? 「面積では海外の大規模油田に匹敵する」】
日本は原油の約9割を中東からの輸入に依存しています。
日本国内でも全く産出されない訳ではなく、新潟県・秋田県の日本海沿岸、および北海道(勇払平野)などで原油が採掘されてはいます。しかし、石油生産量は年間で86万キロリットル程度(2004年度)と、国内消費量全体に占める比率は、0.3%に過ぎません。

先日、佐渡島の南西沖で“大規模油田”の存在が確認されたとの報道がありました。
****新潟県沖に大規模油田か、来春にも試掘*****
経済産業省は18日、新潟県沖で油田・天然ガス田の商業開発に向けて試掘に入ると発表した。
来年4月にも掘削を開始し、埋蔵量を3年かけて調査する。地質調査の結果では国内最大の油田・ガス田となる可能性もある。

試掘地点は、新潟県の佐渡島から南西約30キロの水深約1000メートルの海底。2003年に周辺海域で試掘した際、少量の石油やガスの産出が確認されていた。
経産省資源エネルギー庁は、08年に導入した3次元物理探査船を使用して地層構造を精密に分析した結果、海底から2700メートル下にある地層のうち、約135平方キロに及ぶ範囲で石油や天然ガスの埋蔵の可能性があるとのデータを得た。面積はJR山手線内の約2倍に相当し、同庁は「面積では海外の大規模油田に匹敵する」としている。

政府は09年、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を策定し、日本の排他的経済水域(EEZ)内の資源開発に本腰を入れた。日本近海の11か所で3次元調査を進めたところ、新潟県沖が最も有望と判断した。試掘の結果が良好なら、同計画の第1号として17年の商業化を目指す。【6月18日 読売】
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商業化のためには採掘コストが問題となります。
“水深約1000メートルの海底”で、“海底から2700メートル下にある地層”・・・・ということで、素人的にはなんだか大変そうにも思えます。
しかし、“商用として世界で初めて海底油田を掘削したのは、日本の尼瀬油田(新潟県出雲崎町)であるとされる。 2007年現在、世界最深の油田は、アメリカ合衆国メキシコ湾岸油田でエクソンモービル社が保有する油田。水深8,600フィート(約2,580メートル)に達しているが、同地域では年々規模の拡大が続いており、水深10,000フィートを超える掘削リグの設置計画を持つ社も存在している”【ウィキペディア】とのことですから、技術的には問題ないのかも。

【「地球の鉱物資源は膨大であり、その供給は数千年間続く」】
石油の大量消費といった生活スタイルへの反省もあって、地球の資源はやがて枯渇する・・・・ということが、なんとなくイメージ的に定着していますが、探せばまだまだ地球には多くの資源が存在しているとの意見もあるようです。

****地球の資源はそれほど早くは枯渇しない****
地球の鉱物資源は枯渇しつつあるのだろうか。

ニッケルやプラチナなどの重要な金属を小惑星で採掘するという、最近広範囲に公にされている諸提案は、一つには地球の資源が遠くない将来に欠乏するとの見方が背景にある。 (中略)

米グーグルのペイジ最高経営責任者(CEO)と映画監督のジェームズ・キャメロン氏は4月、地球の資源は間もなく、100億に向かう世界の人口の技術的必要性を満たせなくなるとのメッセージとともに、ワシントン州のベルビューにプラネタリー・リソーシズ社を作った。

世界最大級の鉱業用機器メーカー、米キャタピラーは既に、米航空宇宙局(NASA)とともに宇宙鉱業設備の設計に取り掛かっている。同社のインテリジェンス・テクノロジー・サービシズのマネジャー、ミシェル・ブルボー氏は「月面や鉱業用途で使用できる同じタイプの技術を使った自立稼働設備を目指している」と話した。

しかし、地球での鉱業に資金を投じている企業は、地球は大きな、事実上無尽蔵の鉱山であり、宇宙と同じほど多くの未探査の場所があるとしている。英豪系の鉱業会社BHPビリトンの非鉄部門のCEOで地質学者のアンドルー・マッケンジー氏は「地球には文明のための鉱物があと1万年分残っている」との見方を示した。同氏は「もちろん文明は変化し、今とは異なった鉱物も出てくるだろうが、1万年以上分はある」としている。(中略)

カナダ・オンタリオ州の鉱業会社HTXミネラルズのスコット・マクリーンCEOは「地球に鉱物を供給するのに宇宙の小惑星に依存しなければならないなんて想像もできない」と述べた。同CEOは、そのアイデアは「面白いし、こうしたことを考えるのは幻想的だ」としながらも、「地球の鉱物資源は膨大であり、その供給は数千年間続く」と指摘した。(中略)

地殻は3~30マイル(4.8~48キロメートル)の厚さがあるが、ほとんどの場合、掘削されるのは表面から半マイル(800メートル)だけだ。スウェーデンのコンサルティング会社ロー・マテリアル・グループの上級パートナー、マグナス・エリクソン氏は「鉱物採取のために削っているのは表面だけだ」と指摘した。コロラド・スクール・オブ・マインズのエコノミスト、J・E・ティルトン氏は、氷山の一角を見ただけでも埋蔵量の推定値は相当なものだとし、「現在の消費ペースでいけば、地球の地殻中の銅は1億2000万年、鉄鉱石は25億年持つ」と述べた。ただ、これには採掘コストは考慮されていないという。

鉱業会社は地球上にはグリーンランドやカナダの北極圏、モンゴル、それに海底など、ほとんど開発されていない多くの場所があるとしている。
水中ロボットを用いれば、海底の「ブラックスモーカー」による鉱床から鉱物を掘り出すことができる。ブラックスモーカーは、銅、金、その他の金属を含んだ熱水を海底から噴き出している煙突状のもの。パプアニューギニア沖合の海底では2010年代末までに銅の採掘が始まる見込みだ。

陸上について鉱山会社のエンジニアたちは、鉱物を溶解してそれをパイプで吸い上げたり、高圧の水を放射して鉱石を抽出したりする新しい技術によって可採粗鉱量が増える可能性がある、と述べている。【6月6日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
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世界のエネルギー需給を一変させている「シェールガス」】
採掘コストを考慮せずに“地殻中”の埋蔵量を云々しても仕方がない感もありますが、埋蔵確認技術や採掘技術の進歩で、以前は利用できなかった資源が利用できるようになっているのも事実です。
その一番の事例が、“シェールガス”ではないでしょうか。

シェールガスとは、“頁岩(けつがん)=シェール=に含まれている天然ガス。通常の天然ガスに比べて採掘が難しい「非在来型天然ガス」の一種だが、水圧破砕などの技術が確立したことで商業生産が可能になった。天然ガスの可採埋蔵量は約60年とされていたが、シェールガスの開発によって160年を超えるとの見方もある”【2月10日 産経】とのことです。

****シェールガス、日本恩恵 採掘方法確立、LNG値下がり 北米からの輸入焦点****
原発停止、代替火力需要を賄う
「シェールガス」と呼ばれる新型の天然ガスが世界のエネルギー需給を一変させている。頁岩(けつがん)と呼ばれる堆積岩の中にあり取り出すことが難しいとされていたが、採掘方法が米国で確立され、利用可能な天然ガス埋蔵量が飛躍的に増加した。

原発の稼働停止で液化天然ガス(LNG)輸入が急増する日本も量的、価格的に恩恵を受けている。さらに現在は行われていない米国からの直接輸入が実現すれば、エネルギー安全保障のうえでも大きなメリットとなる。
                   ◇
日本が2011年に輸入したLNGは7853万トン。原発が再稼働できないため、火力発電用の燃料として需要が急増し、輸入量は10年に比べて12・1%、850万トンあまり増加した。これだけの需要増にもかかわらず、日本が安定的にLNGを調達できた背景にはシェールガスの開発があった。

11年の輸入増加分のうち、約半分はカタール産。世界最大のLNG輸出国であるカタールは、米国向け輸出を想定し液化設備を増強したが、シェールガスの生産が増えた米国向けのLNG輸出は期待通りには拡大していない。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の伊原賢上席研究員が「シェールガスがなかったら、日本は調達に苦しんだはず」と指摘するように、シェールガスの影響でカタールはLNGを日本に回す余裕が生じた。

 ◆電力危機を救う
シェールガスは価格を引き下げる効果もあった。
電力各社がLNG火力への依存度を強めている影響もあって、日本向けLNGのスポット(随時契約)価格は世界でもっとも高いとされる。天然ガス売買の単位である100万BTU(英国熱量単位)当たりの価格は昨秋には18ドル前後まで高騰、シェールガスで国内のガスがだぶつく米国に比べ、価格差は一時約6倍に開いた。それでもエネルギー業界の関係者は「シェールガスがなかったら、価格はもっと上がっていた」と口をそろえる。

さらに日本のLNG需給を一変させる計画も進む。米国ではメキシコ湾岸にあるLNG受け入れ基地を輸出向けに転換し、シェールガスを輸出する計画が前進。カナダでも太平洋岸にLNGプロジェクトが浮上している。
米国はエネルギー安全保障の観点から自国産エネルギーの輸出を原則として禁じてきた。だが、米LNG事業者チェニエイルが韓国ガス公社などとLNGの長期契約を締結するなど、シェールガスは米国のエネルギー政策も変えつつある。

今後、日本が有力な輸出先になることは間違いない。カナダのブリティッシュコロンビア州コルドバ堆積盆地のシェールガスプロジェクトで権益を持つ三菱商事は、コルドバのガスをLNGにして日本に輸出することを検討している。

 ◆中東依存脱却へ
核開発問題を抱えるイランが、経済制裁の強化を受けて原油供給の大動脈であるホルムズ海峡封鎖の可能性に言及し、原油の8割以上を中東に依存する日本のエネルギー安全保障の脆弱(ぜいじゃく)さが改めて浮き彫りになった。

LNGについても2割超をカタールやアラブ首長国連邦(UAE)に依存。中部電力のようにカタールのウエートが7割まで増加しているところもある。政治的、経済的に結びつきが深い北米からLNGを調達できれば、エネルギー安全保障上、大きな意味を持つ。

調達先を多様化できれば、買い手である日本にも選択の余地が広がり、価格の引き下げも期待できる。「足りないから、高くても買うしかない」。LNGについてエネルギー業界からは今、こんな諦めの声が漏れるが、シェールガスはこうした現状を変えてくれるかもしれない。【同上】
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資源開発と環境問題
新たな技術による新たな資源開発は、新たな環境問題を引き起こすこともあり得ます。
シェールガスについても、水源の汚染の問題や、水圧破砕のために地中に注入された水が地震発生の引き金になっているとの指摘もあります。
また、2010年4月にアメリカで起きたメキシコ湾原油流出事故に見られるように、高度な技術に依存した採掘は、トラブル発生時にコントロール不能に陥る危険もあります。

もっとも、環境問題は資源開発についてまわる問題で、従来型の安易な採掘方法でも同様です。
誰でも採掘できるだけに、乱開発となりやすく、環境破壊がひろがる側面もあります。
中国のレアアース採掘にも、そんな環境問題があります。

また、資源という権益が腐敗・癒着・汚職といった社会的害毒を惹起することになる問題も、世界の資源開発の現場でよく見られます。

****レアアース王国・中国の「毒」、官民が結託し不正が横行****
「レアアースはヘロイン並みの利益をもたらすがヘロインほどのリスクはない。やれば必ず儲かる。やらないだけ損だ」。中国でいまレアアースをめぐり、官と民、そして裏社会も加わった一大狂騒曲が繰り広げられている。発言はある業界関係者のものだ。
中央政府の方針によって、レアアース企業の統合と採掘についての規制強化が進んだが、必ずしも効果を上げていない。レアアースの「毒」は簡単には消えないようだ。

昨年後半以降、中国南部の江西省カン州市でも、違法な採掘・生産、闇市場での取引、密輸などへの監視が強化された。正規業者は操業をやめたが、違法な採掘を続けるブラック業者がなくなったわけではない。違法業者は周辺住民に通報されないよう口止め料を払っている。

市政府は、採掘量や精錬企業に割り当てる生産量も一気に絞った。市の共産党委員会書記は各県(市の下に県がある)の書記に対し、「採掘業者の統合を進めないとクビ」と厳命した。市内の採掘場は10分の1になり、88件あった採掘の許可証は1社に一本化された。国からの割り当てを超えて採掘すればペナルティが科され、翌年その分は減らされる。

だが実際は、割り当てを超えて採掘され、違法な市場で売られることが多い。生産管理が十分ではないのには、鉱脈が浅い所にあり採掘が容易なことも関係する。こうした不正が起きるのは、村の主任レベルから町長、果ては鉱産物資源管理局の一部の職員までが、背後で結託しているとみられるからだ。(中略)

レアアース採掘による環境汚染も深刻だ。レアアースの精錬に使われる硫酸アンモニウムや、国の排出基準を大幅に超えるアンモニア、窒素を含んだ廃水は、土壌や農地汚染の原因になっている。
カン州市では、採掘の残滓が積み上がったハゲ山や廃棄された鉱山が放置されている。国は対策に乗り出しているが、その面積が広すぎて経費がかさみ、焼け石に水だ。(中略)

中央と地方との利害対立
中央政府の指示の下、レアアース業界で進む整理統合だが、中央企業(中央政府直轄の国有企業)と地方政府・地方企業との間で、水面下の戦いが厳しさを増している。

地方は採掘をめぐる主導権を簡単には手放したくない。(中略)
省政府はレアアースを経済発展の牽引役にしたいと考えており、事業の主導権を中央企業に持っていかれることに抵抗を示す。仮に中央企業が省外の工場で高付加価値品を製造すれば、省の税収に寄与しない。省としてはなるべく地元企業にかかわらせたいところだ。
地方企業も難題を抱えている。採掘をめぐる権利関係の処理が複雑なためだ。採鉱権は自社で保有していても、実際に採掘しているのは個人業者であり、こうした業者は山林権を農民から買い取っている。採掘の作業場も業者が自前で作ったものだ。地方企業が自主採掘を進めるには調整が必要だが、個人業者と地方政府当局者との結び付きもあって、事は簡単ではない。(後略)【6月14日 東洋経済】
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