
(アフガニスタンの勉強にいそしむ少女 アフガニスタン政府が崩壊し、アメリカが撤退するとき、タリバン支配のもとでこの少女は勉強を続けることができるのか? 欧米・日本的価値観と大きく異なる価値観を持つタリバンですが、国民の半数を占める女性の権利を殆ど認めないことに関しては、どうしても許容しづらいものがあります。 “flickr”より By codepinkhq
http://www.flickr.com/photos/codepinkalert/3963936258/)
【選挙結果の最終決定は?】
アフガニスタンの情勢はますます混迷の度を強めています。
ひとつは、大統領選挙の問題です。
一応、暫定結果によると、再選を目指すカルザイ氏は得票率54.6%で過半数を超え、主な対立候補、アブドラ元外相の得票率は27.8%でした。
しかし、EU選挙監視団のモリヨン代表が9月16日、投票総数の最大3分の1に相当する150万票に不正の疑いがあると指摘し、「不正疑惑票のうち110万票はカルザイ氏向け」「疑惑票を除けばカルザイ大統領の得票率は半数を割る」「最終的な選挙結果集計の前に(不正の)疑惑がある票を取り除かなければならない」と明かしています。
この“暴露”に対し、選挙管理委員会委員長は「信頼関係を損なった」と強い不快感を示しており、カルザイ大統領も17日、大統領選で指摘されている不正は「予断を交えず調査されるべきだ」とする一方で、選挙は公正だったと強調。大規模な不正を指摘したEU選挙監視団に不快感を示しました。
暫定結果で2位だったアブドラ元外相は17日、「腐敗した政権に加わるつもりはない」と、一部で指摘されているカルザイ政権への参加の意思を否定しています。【9月17日 朝日】
この後、どうなったのでしょうか?
私はバリ島に旅行に出ていたこともあって、情報が充分ではありませんが、カルザイ大統領の再選を認めるのか、それとも不正票を考慮して決選投票を実施するのか、再選挙を行うのか・・・ということに関する最終決定はまだ出ていないようですし、それに関する記事も全く見ないような気がします。
【治安安定か民主主義か】
ひとつ目にしたのは、国連のアフガニスタン対応の乱れに関する記事です。
国連のアフガニスタン担当においても、民主主義を優先し選挙のやり直しも検討すべきだと主張する立場と、アフガニスタン安定のために選挙結果を早期に認めてカルザイ大統領を中心とした政府が治安維持に取り組む環境を作るべきだとする立場がせめぎあっているようです。
****国連事務総長:アフガン担当次席特別代表解任 上司と対立*****
国連の潘基文(バン・ギムン)事務総長は30日、アフガニスタン担当の次席特別代表、ピーター・ガルブレイス氏を解任した。同氏は8月のアフガン大統領選の不正疑惑を巡って、上司であるカイ・エイデ特別代表と対立していた。
ガルブレイス氏は米国務省出身で駐クロアチア大使などを務め、ホルブルック米特別代表(アフガン・パキスタン担当)に近いとされる。先のアフガン大統領選では、カルザイ大統領周辺を含む広範囲で不正が行われたとして、ホルブルック氏と一緒に選挙のやり直しも検討すべきだと主張していた。
一方、上司でノルウェー出身のエイデ特別代表は、アフガン安定のために選挙結果を早期に認めてカルザイ大統領を中心とした政府が治安維持に取り組む環境を作るべきだと考えていた。
国連筋によると、治安安定を優先するエイデ特別代表と民主主義を優先するガルブレイス氏の間で対立が続き、事務総長が解任を決めたという。この問題についてクリントン米国務長官は「国連内の話だ」と干渉しない姿勢を示した。【10月1日 毎日】
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今のアフガニスタンに、これ以上の欧米的“完全な民主主義”を求めても、無理があるようにも感じます。
カルザイ政権を否定して、タリバンに対抗しうる新たな民主的政権が出来るとも思われません。
ないものねだりをして政権の基盤を弱めるよりも、“6,7割の民主主義”で妥協して、カルザイ新政権の腐敗・汚職をできるだけ少なくする方向に道を求めるしかないように思われます。
【大規模増派か敗北か】
アフガニスタン問題で、もうひとつ混迷しているのはアメリカ・オバマ政権の増派への対応です。
オバマ政権は3月に2万1千人の増派を決定し、米軍兵力を年末までに6万8千人規模に引き上げると発表していますが、情勢は一向に好転していません。
むしろ悪化しつつあるなかで、アフガン駐留米軍のマクリスタル司令官が更に4万人前後の部隊増派を求めています。
増派を求めるマクリスタル司令官が8月末にゲーツ国防長官に提出した戦況評価報告は公表されていませんでしたが、「米軍をさらに増派しないと8年に及ぶ戦争が失敗に終わる」と指摘する内容が21日付の米紙ワシントン・ポストに“リーク”され、オバマ政権はこの対応に苦慮しています。
オバマ政権のアフガニスタン・パキスタン包括戦略においては、タリバンの攻撃から市民を保護し世論を味方につけることを最優先する方針をとっていますが、マクリスタル司令官の増派要求は、タリバンの脅威が差し迫る南部・東部の重要6州に米軍を配備して市民を保護し、治安を改善するために必要な兵員ということで積算されたものです。増派しなければ、あるいは増派規模を縮小すれば、それだけタリバンの危険に曝される地域が増えることになります。
オバマ大統領は選挙期間中から、イラクよりアフガニスタン・パキスタンを重視する立場をとってきましたが、アメリカ国内のアフガニスタンにおける戦争にたいする評価は厳しくなってきています。
****アフガン戦「支持」初めて4割切る*****
米CNNテレビが15日公表した世論調査によると、アフガニスタンでの対テロ戦争に対する「支持」は39%にとどまり、2001年に米軍がアフガンに派兵を開始して以来、初めて4割を下回った。逆に「不支持」は58%に達し、アフガンへの米軍増派を検討しているオバマ政権は、苦しい選択を迫られそうだ。【9月17日 産経】
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また、北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は28日、マクリスタル司令官が報告書で示したアフガニスタン戦争に対する厳しい見通しについて、同様の認識を持っているとしながらも、「戦闘部隊よりアフガン治安部隊の訓練の方が欧州は貢献しやすいと思う」と述べ、NATOに対する増派要請については消極的な姿勢を見せています。【9月29日 AFPより】
国内世論から見放されつつあり、ISAF参加国のこれ以上の増派も期待しづらい状況で、ひとりアメリカが更に大規模増派に踏み込むのか・・・・。間違えるとベトナムの二の舞にもなりかねない、しかし、増派しないと「8年に及ぶ戦争が失敗に終わる」・・・オバマ大統領は何とも苦しい決断を迫られています。
先月30日には、正副大統領のほかゲーツ国防長官、クリントン国務長官、アフガン・パキスタン担当のホルブルック特別代表、マレン統合参謀本部議長らが出席して、アフガニスタン情勢に関する全体会議が開催されました。
オバマ大統領は今後数週間をかけ、政権の命運を握る判断を下すと報じられています。