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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  サイクロン「Nargis」の被害と軍事政権

2008-05-08 20:55:58 | 災害

(支援物資を手渡しで運ぶサイクロン「ナルギス(Nargis)」被災者
“flickr”より By TZA
http://www.flickr.com/photos/tza/2505469195/)

GWの旅行から帰国して新聞を眺めると、大方は旅行前と同じようような流れで世の中動いているようにも思えましたが、そんななかで目を引いたのがミャンマーのサイクロン被害のニュース。
最初このニュースを見て、「またか・・・」という印象を持ちました。
と言うのは、昨年11月にサイクロン「シドル(Sidr)」に襲われ3500人を超す死者を出したバングラデシュと混同してしまったからです。

今回ミャンマーを襲ったサイクロン「ナルギス(Nargis)」も、「シドル」のときと同様に低地デルタ地帯を直撃するコースだったようです。
国営放送は、7日午後5時現在で死者数が2万2980人、行方不明者が4万2119人に達したと伝えています。
ヤンゴン駐在の米国代理大使は国際NGOの話として、「推定で、デルタ地帯での死者が10万人を超える可能性がある」とも述べているそうですが、正確なところは誰もわからないというのが実態のようです。

昨年のバングラデシュの被害は、同様のサイクロン被害(70年には約30万人、91年には約14万人が死亡)に比較すると、それらを下回っています。
バングラデシュでは91年の被災以降、低地の住民を高波や高潮、強風による住居倒壊から守る切り札として、各国政府、非政府組織(NGO)などの支援を受けてコンクリート造りの避難シェルター建設が進んでおり、被災当時、シェルターは全国で約2500棟存在していました。
91年に並ぶ強さとされる「シドル」に直撃されながら死者が下回ったのは、シェルターが一定の役割を果たしたとみられています。(もちろんまだ数も不足していますし、有効に使いこなせなかった面も多々ありますが。)

ミャンマーでも、河川の入り乱れた低湿地の地形、家屋の脆弱さ、護岸工事の未整備といった点はバングラデシュ同様ですが、更にバングラデシュのようなシェルターの備えなど対策が何も講じられていなかったことが今回の被害を大きくしているように思えます。
海と住宅地の間の緩衝地帯として機能していたマングローブ林の破壊が、多くの死者が出た原因の一つであるとの意見もあります。【5月7日 AFP】

事前の避難措置に関しては、インド気象局の担当者は「我々はサイクロンが上陸する48時間前に、ルートや規模などすべてのデータをミャンマー側に連絡していた。避難など必要な措置を取る時間は十分にあったはずだ」と述べ、ミャンマー軍政当局が住民への適切な警告や避難勧告を行わなかったとの見方を示唆しています。
かねてからミャンマー軍事政権を批判しているアメリカのローラ大統領夫人は5日、「脅威を認識しながら、警告を発しなかった。軍事政権は国民の基本的ニーズを満たすことができない一例だ」と改めて軍事政権を批判しています。

ミャンマー軍政を若干弁護するなら、サイクロン被害に対する危機感が軍政だけでなく、ミャンマー国民全体にあまり徹底していなかった面はあるのではないでしょうか。
昨年正月にミャンマーを旅行しましたが、そのときのガイド氏は「ミャンマーは過ごしやすい国です。台風・地震のような自然災害がありませんから・・・」なんて言っていました。

しかし、各国・国際機関からの救援の申し出に対する対応の鈍さは“やっぱり、軍政というものは・・・”と思わざるを得ないものがあります。
多数の援助団体関係者が入国を申請しているものの、ビザが発給されず、入国できない状態が続いているとか。
国連ですら、ビザの取得が必要ないアジア人職員4人以外の緊急援助担当職員については、ミャンマー政府のビザ発給を待っている状況です。
ビザが出ないため支援チームが足止め状態にある米国のブッシュ大統領は「軍政は支援チームを受け入れるべきだ」と求めています。

ロイター通信によると、国際機関や各国が表明した物資・資金の総額は、7日段階で約2800万ドル(約29億円)にのぼっています。
EUの欧州委員会は200万ユーロ(約3億3千万円)の拠出を発表。
米政府も325万ドル(約3億4千万円)の支援と災害支援対応チームの派遣を決定。
ミャンマーと関係が深い中国は100万ドル(約1億円)相当の物資提供を発表。
インドも医薬品など約8トンの物資提供。【5月7日 朝日】
日本政府も5日に表明した約2800万円相当の緊急援助に続いて、毛布や簡易水槽など約3600万円相当の追加援助をすると発表。

アメリカはバングラデシュでも救援の艦船を派遣しましたが、今回もタイ沖で演習中の艦船派遣を申し出ています。しかし軍事政権は受け入れる可能性は低いとみられているとか。【5月7日 毎日】
“お金・物資は受け入れるが、人は入れない”というミャンマー軍政の姿勢には国民の生命を守るという意思が感じられません。

河口地域には少数民族が住み、過去には反政府活動もあった地域で、軍事政権が外国人の立ち入りに特に神経質になっている可能性もあるとの報道も。【5月7日 毎日】
被災に自力で十分に対処できない現状を外国人の目にさらしたくないという「メンツ」が理由とも。
また、欧米などの「敵対的な国」からの支援は受けたくないとの思惑も強いようです。
甚大な被害の実態が国際社会に知れ渡った場合、欧米などから国民投票の延期を求める圧力がかかると警戒しているのではとも推察されています。【5月8日】

軍事政権は新憲法案の賛否を問う国民投票を一部被災地以外で10日に強行する方針です。
かつてミャンマーのASEAN加盟が問題となったとき、「素行の悪い娘を嫁に迎えるのは・・・」という主張あったものの、「嫁に迎えてからしっかりしつければいい」ということになったとか。
結局誰も躾けができないまま年月が過ぎているようです。

コメント
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