孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン 民心を失う多国籍軍

2007-08-14 13:49:18 | 国際情勢


(写真はカブール市内で生活のためにささやかな“商売”をする戦争未亡人。
“flickr”より By rwhite73
オリジナルはRAWA(アフガニスタン女性革命協会)によるもの
カブールだけで5万人を超える戦争未亡人がいると言われています。
彼女達は子供を養うために必死の思いをしています。
UNIFEM(国連女性開発基金)によれば、カブールに暮す未亡人の65%が、今の悲惨な状態から抜け出るには自分の命を絶つしか他に途がないと考えているそうです。)
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「解放した」「まだ拘束中」「解放する予定」「10名の人質交換が前提」・・・・など情報が錯綜していましたが、アフガニスタンでタリバンに拉致されている韓国人のうち女性2名がようやく解放されました。
事件発生以来の始めてのいいニュースです。
残る19名の速やかな解放が実現するといいのですが。
赤十字国際委員会(ICRC)では「近日中に解放されるだろう」との期待を表明しているそうですが、根拠があるのか・・・。

9日からカブールでアフガン・パキスタン両国首脳、有力部族長等を集めて開催されていたジルガは、開会式を欠席したパキスタンのムシャラフ大統領も閉会式に参加し、テロリズムは共通の脅威で、テロとの戦いを着実に実行していくことをうたった宣言を発表し12日閉幕しました。

宣言は「アフガンとパキスタンはテロリストのための聖域や訓練キャンプの存在を許さない」と強調。両国から25人ずつ、計50人からなる委員会を設立し、国境地帯での治安維持に向け対話を促進することなどで合意しました。【8月12日 毎日】

アフガニスタン国内の状況は厳しいものがあります。
6月21日、23日のこのブログでも取り上げたように、タリバンが復活して攻勢を強めるなか(ジルガでも問題になったパキスタン領内で態勢を立て直しているとも言われています。)、アメリカはNATOが指揮する国際治安支援部隊ISAF(37か国3万7000人の兵士)を前面に出す形に以降しつつあります。(アメリカはNATOとは別に1万人規模の多国籍軍を主導)
ただ、NATO内でもドイツ・フランスなどは一歩引いた形で、イギリスなどとは温度差があるよう。

問題になってきているのは、この米・NATO軍の攻撃による民間人犠牲者が増大していることです。
非公式な推計では、NATO軍により、2007年だけで、250人の市民が殺害されたとするものもあると言われています。【7月24日 AFP】 http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2258811/1868578
このなかで、車を減速すようにとの検問指示に従わず英兵の発砲を受けて息子を失った父親は「子供達を自爆テロに出す。」「自分はタリバンとなって復讐する」と語っています。
市民のひとりは「彼ら来たときは90%以上が支持したが、今は90%以上が彼らの展開を望んでいない。」と憤っています。

5月14日にはドイツ国防大臣が、米軍主導の軍事作戦で一般市民の犠牲者が増加していることについてNATOを批判しています。【5月15日 AFP】

6月23日にはカルザイ大統領が3日間の戦闘で民間人52人が死亡したことに触れ、「以前から言っているように、戦闘で民間人が犠牲になることは受け入れられない。これ以上の犠牲は容認できない」と記者団に語り、NATO・米軍を批判しました。
民間人犠牲の原因としてカルザイ大統領は、「武力の濫用、必要以上の激しい攻撃、アフガン政府との連携欠如」を挙げています。
カルザイ大統領は、反政府勢力を掃討する上でアフガン国民は国際社会の協力に感謝していると話す一方で、「国民の生命は、安価なものとして扱われるべきではない」と指摘。
多くのアフガン国民が抱く「外国部隊は横柄で、文化的に無神経」との感情を代弁したと報じられています。【6月24日 AFP】

NATO側は「タリバンが市民を盾に利用している。」と反論しています。
しかし、自国へのテロ攻撃を防ぐためにアフガニスタンにやってきて、自国兵士の被害が最小になるよう空中や遠距離から爆撃・砲撃し、結果、アフガニスタンの市民が犠牲になる・・・というのは現地住民には承服しがたいものでしょう。
民心を失った外国からの軍隊は単なる侵略軍に堕ちてしまいます。

多国籍軍が今手を引けば、カルザイ政権はかつての南ベトナムやカンボジアのロン・ノル政権のように、さほど時をおかずタリバン勢力に飲み込まれてしまうのでは、また北部武装勢力との間の内戦に戻るのでは・・・とも思われます。

タリバンの原理主義的価値観は個人的には受け入れがたいものがありますが、さりとて、それを理由に外から武力で介入するのも・・・と悩ましく、思いは堂々巡りします。

コメント
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