BE HAPPY!

大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

Chain(1)

2007-11-17 16:33:35 | Angel ☆ knight
     
「久々の『Angel☆Knight』です」
「どんな話か忘れてもうたわ」
「舞台は近未来、『世界の首都』と呼ばれるエスペラント・シティで日夜犯罪と戦うエスペラント・シティ警察のお話しだヨ」
「あー、そういえば、そんなんやったなあ」

  死に場所を探していた。全てを終わりにしたかった。
―腕のいい、命知らずのパイロットが必要なの。いえ、命知らずじゃ足りない。命なんかいらないっていう人間が欲しいのよ。
 彼こそがそういうパイロットだと、奴らも下調べをしてきたのだろう。こんな話がやばい仕事でないわけがない。が、レイオットは引き受けた。
「おや、天使のカードが出たね」
レイオットの隣でカードをめくっていた老婆が呟いた。トランプともタロットとも違う、珍しいカードだった。
「それも、敵陣の中に」
「ほう」
 エディという名の男も、カードを覗き込んだ。一緒に人質になったパブの客の中に、このあたりでは有名な占い師のユージェニー・ビクトリアがいたので、
―今生の思い出に、あなたにしかできないというカード占いをして頂けませんか。
と、言い出したのだ。
―じゃあ、お代は、生きて帰れたらということで。
と、ユージェニーも受けて、占いが始まった。
「敵陣の中に天使のカード。それは、どういう意味なんですか?」
「敵の中に、あんたの味方になってくれる人がいるってことさ」
 ユージェニーは言った。
「今の状況なら、あたしらを人質に取ったテロリストの中にってことかね」
「おい、ババァ、聞き捨てならねえことを言うな」
 銃を手に歩き回っていたロンが、ユージェニーの前に立った。
「てめえ、おれ達の中に裏切り者がいるって言うのか?」
「あたしは、ババァなんて名前じゃないよ。ユージェニーさんか、ビクトリアさんと呼んどくれ」
 ユージェニーは次のカードをめくりながら言った。
「ふうん。ダブル・ダブルか。あんたの今置かれている状況には、二重の意味があるね」
「ババァ、おれの質問を無視する気か」
 ロンが銃口でユージェニーを小突いた。後ろへ倒れそうになった彼女を、レイオットが支えた。
「こんな婆さん相手にムキになるなよ、ロン」
 ロンはきっとレイオットをにらみ据えた。
「そうか、天使のカードってのはてめえのことだな。他はみんな、何年も一緒に活動してきた仲間だ。てめえは最初からうさんくさかった」
「おいおい。パイロットが要るって声をかけてきたのは、そっちだぜ」
 レイオットは苦笑した。
「やれやれ。もう仲間割れかい。あたしは何も裏切り者がいるなんて言っちゃいないよ。カードにはそれぞれ、深い意味があるんだ。それを読み解くのが難しいのさ」
 よっこらしょ、と体を起こして、ユージェニーはまたカードに屈み込んだ。
 銃をかいこんで壁にもたれたまま、レイオットも占いの続きを眺めた。二重の意味か。案外、当たってるじゃないか。

 「人質は、16区3-A23所在のパブ『ムーンライト』の客及び従業員、約10名。いずれも16区の住人です」
 エスペラント・シティ警察長官エドゥアールは、窓の方を向いたままだ。スターリングは、高い背もたれに向かって報告を続けた。
「要求は、燃料を満タンにした救助セクション機シルフィード。そして、逃走資金100万スターです」
「とことんふざけた奴らだな」
 椅子がくるりと回転し、ようやくエドゥアールがこちらに顔を向けた。
「わたしを殺し損なっただけではあきたらず、シルフィードと100万スターを寄こせだと?」
「長官襲撃については、『フリーダム』という組織から犯行声明が出ています。『弱者を踏みつけにする権力者に死を与えるべく、われらは特攻要員を送った』」
「無能な特攻要員をな」
 エドゥアールは悪意のこもった笑みを浮かべた。
 先刻、彼を襲ったのは、小型機に乗った四人組だった。空から長官車を急襲し、銃撃したのだが、弾丸はいたずらに道路に穴を開けただけだった。燃料切れで不時着した彼らは、16区に逃げ込み、『ムーンライト』に集っていた人間を人質にしてたてこもった。
「何をぐずぐずしている。さっさと、対テロセクションをその店に突っ込ませてテロリストを逮捕しろ」
「それでは、人質の生命が危険にさらされます。彼らを説得しようと店に近づいた交渉人が、いきなり発砲されて負傷しました」
「そんな生ぬるいことをしているからだ。有無をいわさず突入させろ」
「お言葉ですが、長官が今回襲撃を受けたのは、そういうご方針だからだと考えます」
 スターリングの言葉に、エドゥアールの瞳が険を帯びた。
「何だと?」
「『フリーダム』のリーダーは、セス・ハーミッツ。この名前にご記憶がありませんか?」
「デル・ハーミッツの娘か?」
 スターリングは頷いた。デル・ハーミッツは、スターリングがシティ警察本部長に就任する前年、テロの犠牲になったジャーナリストだ。テロリストの主張には、社会の矛盾を衝いているものもある。力で制圧しようとするばかりでなく、テロの背景となる社会問題を解消してゆくことが、結局はテロの根絶につながる、という考えの持ち主だった。大胆にテロリストの活動領域に足を踏み入れて取材する彼を、『L』という組織が拉致した。『L』は、彼の身柄と引き換えに、エスペラント・シティ警察が逮捕した仲間の釈放を要求した。エドゥアールは応じなかった。
―拉致されたのは、ハーミッツの自業自得だ。われわれはテロには屈しない。
 要求期限が過ぎ、ハーミッツの遺体がシティ警察本部前に投げ出された。
「それが間違っていたと言いたいのか?」
「セス・ハーミッツが『フリーダム』を組織したのは、父親の死がきっかけです。あの時、デル・ハーミッツの生命を尊重した対処がなされていれば、少なくとも彼女はわれわれの敵にはまわらなかったはずです」
「テロリストのいいなりになればよかったというのか?」
「では、お聞きしますが、そういう場合に人質の命を最優先に考えた所が、その後ことさらにテロの標的になっているでしょうか? 逆に、強硬路線を取ったからといって、以後、テロリストがそこを標的にしなくなったということがありましたか? わたしの知る限りでは、むしろ、結果は逆になっているように見えますが」
 エドゥアールは目を閉じて首を振った。
「いつまでたっても甘ちゃんなのがきみの欠点だと思っていたが、これほどとはな」
「長官。重要なのは、テロリストの要求に対し強硬な姿勢を取るかどうかということではないはずです。人命を優先していったんは要求をのんだとしても、人質が解放された後に一網打尽にすればいいのではないでしょうか」
「セス・ハーミッツを含む組織の全員を捕まえてみせるというのか?」
 テロの捜査に関しては、事件地の捜査機関が管轄を超えて活動できるという条約が批准されている。
「はい。必ず」
「慎重なきみにしては、大きく出たな。いいだろう。そこまで言うなら、やってみろ」
 エドゥアールは言った。
(続く)



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4 コメント

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まってました! (kimekime)
2007-11-17 17:03:25
何か
本当に久しぶりですねナイトchan!
ワクワク!続きがよみた~い!

阪神ファンと女子バレーファンは
確かにダブるのかも知れません!
鋭いご指摘有難うございました!
kimeraはやっぱり阪神ファンなんだ!!!
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kimera25さん (アンジー)
2007-11-17 17:09:22
さっそくのコメントありがとうございます。
随分間があいちゃいましたが…
ブラジルは五輪切符をとったのに、優勝できなかったから監督解任か?と言われているそうですね。
個人的には、結果が期待はずれでも(選手は一生懸命やったんだから)「夢を、感動をありがとう」というメンタリティの方が好きですが、厳しいサポーターが強いチームを作るというところもあるのかもしれませんね。
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「世界の首都・・・・。」難じゃそりゃ~!! (チョロきったん)
2007-11-18 04:18:40
アンジ-さん。ぉっはよう3.~!さっき帰宅して、
今自分の余暇タイム・・・・。明日が、休みでして。
「世界の首都」と呼ばれる・・・エスペラント・シティのスト-リ-!!なか2.!!良いざんす~ょっ。
ユ-ジェニ-=・・・恰幅の良い奴だネッ!!(笑)
組織&テロ=「セス・ハ-ミッツ」絡んでそぅ~。
どんだけぇ~・・・!!チョロ吉も、大きくデタョッ
!!(笑)では。お休みん~・・・。ほなねっ。
返信する
チョロきったんさん (アンジー)
2007-11-18 16:23:55
おかえりなさーい。
余暇&休みを楽しんで下さいね。
ユージェニーは相変わらず元気です。
寒くなるという予報なので、お体気をつけて下さいね。
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