BE HAPPY!

大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

Chain(5)

2007-11-21 21:54:39 | Angel ☆ knight
  

  「レイオット・オハラ、元UF空軍の戦闘機パイロットで、『無血の撃墜王』の異名がありました。これが、レイと呼ばれている人物だと思われます」
 オペレーション・センターのチーフ、ミリアムは、空軍から送られてきた情報をスターリングに伝えた。シルフィード777の追跡画像は、軍も共有回線でモニターしていた。それを見た空軍士官達は、
―あんな飛び方ができるのは、レイオットしかいない。
と、口を揃えて言ったという。
「レイオット・オハラ…あの、マグダード爆撃事件の?」
「ご存じなんですか? 本部長」
 スターリングは頷いた。UFが「テロの王国を叩く」と称して、マグダードに仕掛けた戦争に、レイオットも空軍パイロットとして参加していた。彼は、敵の機体を一発で操縦不能に陥らせ、なおかつパイロットには脱出のチャンスを与えるという神業的な技量を持っていた。
「それで、『無血の撃墜王』なんですか」
「そうです。国際社会は『人道的な戦い方』と評価しましたが、大統領はそうは考えなかった。養成に時間のかかるパイロットを殺さなければ、敵の兵力を損なったことにはならないと、何度も軍に叱責のメッセージを送りました」
 大統領は、SI(シークレット・インテリジェンス、機密情報部)の得た情報を元に、ピンポイント空爆の指示を出した。目標は軍事施設のはずだったが、実際には、指示された場所は医療施設が集中している地域だった。
 レイオットがこれに気づいて、僚機に爆撃中止を呼びかけた。基地からは、予定通り爆撃せよという指示が届いた。
「どうしてですか? 完全な誤爆じゃないですか」
 ミリアムは目を見開いた。
「これは…当時取り沙汰された憶測でしかありませんが、大統領は、最初から医療施設を破壊するつもりだったふしがあるんです。あの地域には設備の整った病院が集中していた。あそこを爆撃すれば、負傷したマグダード人は満足な治療を受けられなくなり、したがって、落命する確率も高くなります」
「…ひいては、兵力が減殺される。そういうことですか?」
「大統領がそう考えていたという証拠はありません。ただ、日頃からそういうことを口にしてはいたようです」
 レイオットは、ついには、「行くなら、おれを撃墜して行け」とまで言った。そうこうするうちに、マグダード空軍がスクランブル発進してきたので、撤退せざるをえなくなった。レイオットは殿をつとめて、皆を基地に帰投させた。
「彼は、帰還するなり捕らえられて軍法会議にかけられました。判決は銃殺刑でした」
「そんな…」
 ミリアムは口元に手を当てた。
「軍の人間も、納得がいかなかったようです。助命嘆願が行われ、ストライキにまで発展した。彼は随分人望があったようですね」
 大統領もこれには手を焼いたようだ。娘の大学卒業を理由にレイオットを「恩赦」にした。
 だが、彼が釈放されたその夜、自宅がテロリストに爆破された。マグダードの過激派集団『イズマール』が、即座に犯行声明を出した。レイオットはちょうど近所のコンビニに買い物に出かけていて助かったが、彼のパートナーは爆死した。大統領は、「テロの王国にヒューマニズムは通用しない。我々が正義の鉄槌を下す」と演説した。
「その事件のことは知ってます。おかしな点がいくつもあったんじゃないですか?」
「ええ。目撃証言などから、実行犯のマグダード人が数人逮捕されましたが、彼らを指揮していたのはUF人だった。マグダード戦争に反対する、良心的兵役拒否者だと言っていたそうです。だが、『イズマール』は民族主義者の集まりでもあります。UF人を信用して重要な役割を任せたとは考えにくい」
 さらに、その後、『イズマール』の幹部の一人が、オリガ・オークレーというジャーナリストに、「あれは、われわれのしたことではない」と語った。『イズマール』は当時、資金難にあえいでおり、テロ行為をしたくともなかなか身動きがとれない状態だった。
―そんな時に、どこかの誰かが『イズマール』を名乗って行動してくれた。他の幹部連は、誇りをかなぐりすてて、これを追認したんだ。
「数ヶ月後、このインタビューを行ったオリガ・オークレーは変死しました。最終的には事故死とされましたが、他殺の疑いも濃厚でした」
「それって…」
 ミリアムが言いかけた時、オペセンの若い職員がプリントアウトを手に現れた。
「レイオットは、爆破事件後、ブッシュ・パイロットのような仕事をしていたようです。運輸・交通省に不定期航空事業者の登録がされています」
 ミリアムは、レイオット・オハラという名前が判明すると同時に照会をかけさせたようだ。相変わらず手際がいい、とスターリングはプリントアウトに目を落とした。
「現地のパイロット組合に電話で問い合わせたところ、レイオットは数ヶ月前から姿を消しているそうです」
「どうやら、レイという男は、レイオット・オハラに間違いなさそうですね」
 スターリングが呟いた時、デスクの電話が鳴った。対テロセクションのラファエルからだった。
―本部長、シルフィード777が大統領官邸前に出現。大統領と補佐官のいる執務室に突っ込むと言っているそうです」

 UF大統領、スタンレーは自分の見ているものが信じられなかった。
 シルフィード777の白い機体が執務室の窓の先、わずか数メートルの空中に浮かんでいる。シルフィードはヘリコプターのように垂直離着陸やホバーリングが可能だった。
「空軍は何をやっているんだ。なぜ、ここまで来る前に撃墜しなかった」
―おれは軍にいたんだぜ。警戒システムを知ってりゃ、裏をかくことだってできるさ」
 無線を通じて、レイオットの声が言った。
 空軍機がようやく777を取り囲んだが、あまりにも777と執務室の距離が近いため、手を出せずにいた。
―この通信にはオーバーライドをかけた。あんたとおれのやりとりは、軍や警察にも流れてる。おれと一緒に地獄へ行くか、自分のやったことを全て白状するか、好きな方を選びな。おっと、動くなよ。逃げようとしたら突っ込むぜ」

 777のコックピットで、レイオットも、
(まさか、こんなことになるとはな)
と思っていた。同乗者を全て射出した後、燃料計を見ると意外に燃料が残っていた。
(何とまあ、燃費のいい機体だ。これなら、DCまで飛べるな)
と思った瞬間、あの男と対決しようと決めた。最愛のパートナーを失って以来、抜け殻のようになっていた心に火がついた。
―きみが何を言っているのか、さっぱりわからない。何かデマを吹き込まれて、それを真に受けているようだが―」
「ごたくはいい。おれの質問に答えろ。1つ。マグダードで軍事施設とされていた場所が病院だとわかったのに、爆撃続行の指示を出したのはなぜだ。2つ。おれの家を爆破させ、オリガ・オークレーを殺したのはあんたか? 30分以内に答えろ。燃料が切れたら突っ込ませて貰う」
―答えるのは簡単だ。1つ目は、わたしの得ていた情報はあくまで、あそこが軍事施設だというものだったからだ。夜間の爆撃だった。きみが見間違えた可能性もある。SIが何ヶ月もかけてつきとめた情報を信じて当然だろう。2つ目はどちらもノーだ。これでいいか?」
 よく言うぜ。レイオットはため息をついた。いくら夜間だからって、あれを軍事施設と間違えるほど目の悪いパイロットがいるものか。暗視スコープでも確かめたし、第一、軍事施設があれほど無警戒であるはずがない。
 爆破事件が『イズマール』の仕業ではないことなど、爆弾の飛来する音と閃光でわかった。あれはUF製の爆弾だ。実戦を経験した軍人をなめて貰っては困る。
 彼の疑いは、アリサ・オークレーの話によって裏付けられた。最初に会った時、彼女は姉の死の真相を調べたいので協力してくれと言ってきたのだ。
―大統領にとって、あなたは危険人物だった。あなたが英雄視されたら、マグダード戦争が正義の戦争に見えなくなってしまう。だから、マグダード人が、いわば、恩を仇で返すようなテロ行為をしたことにして、こんな国は武力制圧するしかないという方向に持って行こうとしたのよ。姉はその事実に迫った。だから、殺されたんだわ。
―ひどい話だな。
 怒りは覚えたが、彼の心は奮い立たなかった。
―悪いが、おれはもう何をする気力もないんだ。ただ、死ぬ時がくるまで生きてるだけさ。
 その後、彼女は『フリーダム』に身を投じ、再び彼に接触してきた。
―あなたに死に場所を提供してあげる。この腐った世界を変えるための起爆剤になってちょうだい。
 それも面白いかと思い、計画に加わった。だが、実際にやってみると、長官に16区の住民を犠牲にさせて決起のきっかけにするという作戦はどうにも性に合わなかった。セスには悪かったが、契約違反をした。100万スターをロン達に持ち帰らせたのは、違約金のつもりだった。
「あんたがしらを切るのはわかってたよ、スタンレー。だが、そんなことはもうどうでもいい。おれと一緒に死んで貰う」
―レイ、やめて」
 思いがけない声が耳朶を打った。
「レックス…?」

(続く)



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3 コメント

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「ミリアム!?」聞いた事有る是っ・・・。 (チョロきったん)
2007-11-22 00:04:35
アンジ-さん。晩2.こ!ミリアムって突っ込んだ名前では・・・ないかっ!!(笑)肉の焼き方教室にて
・・・!!??ネッ。(云なっ。)死んで貰うと言う
例&礼=ちゃうって。レイそぅ2.!!でも、死んでどぅ~なるぅ・・・!?死ぬのは本人は、良いかも知れんだが・・・残された親族を考えて!!外国じゃ~
ない。日本は、未だ2.そう言うメンタル的なのは、
出来てないと言うのか=従兄弟&其れ又鳩子迄に及ぶ
問題に発展する!!可笑しいょっなっ!!想わん。
アンジ-さん。まっトニカク「世の中から逃げては、
難も・・・解決にならん!!」と言う事ょっ!!ネッ
・・・。ヤッパチョロ吉=そぅ想うねん。政治家の先生達は、逃げて&逃れて弟子=秘書達に擦り付ける。
でも、どぅ~ょっ・・・死に義は!?「難か=無残な
死に方&病魔に襲われてる!!」チョロ吉は、想う、
云うのは、ホンマ簡単!!でも間違って居なければ、
通しても良いと・・・。少しでも変化が有ると感じた
なら、少し言葉を変える主張する!!でしょ。ネッ・
・・アンジ-さん。(大人って)=それ程でもないょっ!!変な死に方支度ないだけょっ・・・(笑)
では。  なが2.と。      ほなねっ。
返信する
すごいことに!! (めめ)
2007-11-22 10:12:14
こんにちは!

なんだかすごい展開になってきましたね!
レイオットにそんな過去があったんですね。
次はなにが起こるのでしょうか??
続きを期待しています!!
返信する
まいど! (アンジー)
2007-11-22 20:06:35
 チョロきったんさん
そうです、ミディアム・レアーのミリアムです
たしかに、そうですね。「あんなに悪いことをしても何の報いも受けないで」というような人は、ろくな死に方をしていないことが多いようですね。
チョロきったんさんのお考えに同感です。

 めめさん
突然出てきた大統領とレイオットの過去(笑)
自分でも、「あら、こんな話になっちゃった」という感じです
自戒は最終回でーす。

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