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城に近づくにつれて道は細くなり、一列縦隊でしか進めなくなりました。安住軍にとっては多勢の利が生かせなくなりますが、今回は人数が少ないことを気取られずにすんで好都合です。
山名は城に近づきすぎないよう軍を塩梅しながら、檜垣隊が東門を破った合図ののろしを待ちました。
檜垣隊の前にそびえる東門はしんと静まりかえっています。門の手前に、防御柵のつもりなのか、申し訳程度の生け垣が設けられています。
安住の騎馬武者達は、そんなもの蹴散らしてしまえとばかりに突進しました。
城門が眼前に迫った時、突然、生け垣が火を噴きました
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殿は朝早く、守備兵の大半を東門側に移動させました。
生け垣の陰に鉄砲隊を隠し、残りは城内にこもって息をひそめていました。
鉄砲隊には、合図があるまで撃たないよう厳命しました。
夜明けと共に、檜垣隊が迫ってきました。
騎馬隊がぐんぐん近づいてきますが、殿はまだ合図を出しません。
先頭の騎馬の蹄が生け垣にかかろうかという時、殿は「撃て!」と采を振りました。
十分に敵をひきつけたところで一斉射撃をしたので、面白いようにあたります。一発撃つと、お手軽部隊が弾ごめのすんだ銃を射手に渡します。檜垣隊の騎馬武者はばたばた倒れました。
檜垣重正はやむなく一時撤退を命じました。
敵が射程圏外まで後退すると、殿はすぐさま鉄砲隊を城内に戻しました。替わってお手軽部隊が、第二派の攻撃に備えて準備をほどこしました。
東門の銃声は山名時忠の耳にも届きました。山名は首をそちらに振り向けましたが、合図ののろしは上がりません。
発砲したのが敵であれ味方であれ、銃声がするということ自体、不測の事態が起こったということです
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山名は足軽鉄砲隊に東門の様子を見に行かせることにしました。状況を見定めるとともに、味方が危地に陥っているようなら、横合いから援護射撃をさせるのです。
足軽達は連絡道に駆け入りました。行く手をふさぐ丸木の大柵に手をかけ、息を揃えて押し倒します。よいせ、よいせ。
威助どんは、丸木に、忍びの使う糸刃(ワイヤーカッターのようなもの)を結び、それをあらかじめ削っておいた岩の根本に回しておきました。敵兵が柵を倒そうと押すたびに、糸刃がぎこぎこ岩の根を削ります。柵が倒れると同時に、大岩が崖から切り離されて、敵兵の頭上に転がり落ちました。
ろくに戦闘もしていないうちに損害が出て、山名は呆然としました。
自分達にも城方がどんどん弓矢と鉄砲をうちかけてきます。山名はしかたなく、いったん後退し、東門側の様子を確かめることにしました。
檜垣隊は態勢を立て直すと、鉄砲足軽、弓足軽を先頭に再び東門に向かいました。彼らに敵の鉄砲隊をいすくめさせておいて、騎馬隊が突進するのです。
足軽達は鉄の盾をかざして進みます。明騎野は小国のわりに鉄砲の保有数が多いので、弾防ぎを用意してきていたのです。
先頭の足軽が、地面に張られた紐に足をとられて倒れました。土の色と同じ色の細い紐だった上に、鉄の盾が目隠しになって、気づかなかったのです。紐は脇に立つ大木の枝に結ばれています。紐が引かれて枝が折れ、枝にはさまれていた丸太がどどっと落ちてきました
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後続の足軽が大急ぎで丸太をどけて仲間を助けようとしました。檜垣は、彼らに叫びました。
「ええい、道をあけろ! 丸太などそのままでよいわ!」
檜垣には焦りがありました。今回の作戦は、檜垣隊と山名隊が手早く飛水城を落とすことが前提になっています。ここで手間取っていると、本城を攻撃している主君の軍も危険にさらされます。檜垣は馬にむちをくれ、丸太の山をひらりと飛び越えました。騎馬武者達が次々と後に続きます
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ところが―
ちょうど着地するあたりの地面に鉄びしがまいてあったから、たまりません。馬が倒れ、武者達も地面に放り出されました。檜垣の側近の時任継義(ときとうつぐよし)は何とか丸太の山の手前で馬を止め、後続を停止させました。丸太の前後で軍が止まってしまったところへ、城壁の上から銃火が降ってきました。
殿は、ひとしきり銃撃を浴びせると、城門を開いて討って出ました。敵はたまらず逃げ出しました。どんな強敵でも逃げる時は不思議に易々と討てます。殿は、首はとらずに一人でも多くの敵兵を戦闘不能にするよう命じました。
敵が一定の距離まで後退すると、殿はひき鉦を叩きました。深追いは禁物。なんといっても、相手の方が人数が多いのです。調子に乗って追いかけて行くとこちらがやられてしまいます。
檜垣隊は例の崖道のところまで退却しました。崖の上に、南門から退却してきた山名隊の姿があります。山名が馬を巧みに操って崖道を下りてきました。
「どういうことだ。東門にも兵がいたぞ
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「どうやら、われらは明騎野にはめられたようだな。小幡は寝返るふりをして、われらをたばかったのだ」
二人は歴戦の強者らしく、すぐに次の方針を打ち出しました。明騎野勢が彼らの逆をついたのなら、南門の方が兵力が少ないはずです。二隊は合流して、手薄な南門を破ることにしました。崖道を上れる者だけ大急ぎで上らせて、南門に向かって突進しました。
このなりゆきに、一番驚いたのは勘解由でした。
自分の策通りに準備が行われていたことを、ちゃんとこの目で確かめたのに、これは一体どういうことでしょう
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お手軽部隊は、南門の防護柵と一緒に東門の柵も作っていました。骨組みだけならどちらも同じなので、勘解由が別の場所を見分している隙に、東門の分はそちらへ持って行って艤装を施したのです。
勉強と称して勘解由につきっきりだった若侍は、実は東門の作戦準備を勘解由に気づかれぬよう、彼を誘導する役割でした。大岩の細工や、丸木の罠を仕掛ける時は、彼が勘解由を上手く別の場所に連れて行ったのです。
兵を移動する時は、殿と正木老人が、最後の手順確認といって軍議を開き、彼を足止めしました。
勘解由が神経をとぎすませていれば、あるいはその動きに気づいたかもしれません。しかし、勘解由は殿を甘く見ていました。ひよわで脳天気なバカ殿とばかり思っていたのです。
勘解由は、明騎野を手土産に安住に召し抱えられるという野望が潰えたことを悟らざるをえませんでした。もちろん、明騎野にとどまることもできません。彼に出来ることは、何とか明騎野を脱出することだけです。また浪人に逆戻りですが、命があれば再びチャンスがめぐってくるかもしれません。
山名・檜垣の両隊は、南門に突撃しました。
白兵戦になれば、安住武者は一騎当千。明騎野勢を破る自信はあります。檜垣は、南門に攻め入ったら、城に火をかけるつもりでした。できれば飛水城は無傷で手に入れたかったのですが、既に大幅に段取りが狂っています。本軍との連携を考えると、力業でもいいから、とにかく早く飛水の城兵を黙らせなければなりません。
連絡道の脇を風のように走り抜けた時、突然大地に大穴があきました。
先鋒の騎馬が落とし穴に落ち、後から来た騎馬は穴に落ちた味方に躓いて転倒しました。
大岩のあった連絡道の崖上に明騎野兵が現れ、安住軍の側面を攻撃してきました。城の中からこの崖の上に出られる通路がつくられているので、東門の兵がそこを通ってかけつけたのです。こういう小国の山城は、天然の地形を上手く利用して作られているものです。
さしもの安住兵も大混乱に陥りました
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特に、年若い兵や、下級の兵は、指揮官の命令もきかず一目散に逃げ出しました。彼らには、飛水城に続く道が生き物のように自分達に襲いかかってくるように感ぜられたのです
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上級武士達は何とか秩序を保って退却していますが、飛水城攻めは完全に失敗です。伝令がこの事態を本軍に伝えるべく疾走しました
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本城を守っている大殿様と茶飲み友達は、安住軍の猛攻に懸命に耐えていました。
こちらも少ない人数で何とか敵に損害を与えるべく、工夫をこらしていますが、安住勝利も智慧のある武将です。大軍を巧みに駆け引きして、火のように攻め立てます。城方は押され気味です
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不意に、敵方の圧力が弱まりました。敵の旗が反転し、安住軍が後退し始めました。
城方は何が起こったのかわかりません。罠かもしれぬと慎重に敵の動きを見守っていました。
敵はどんどん後退して行きます。どうやら安住に帰って行くようです
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城方は知らないことですが、飛水城攻めの失敗が総大将に伝えられたのです。明騎野勢を挟撃するどころか、このままでは自軍の側面や背後を衝かれかねません。安住勝利は引き際を心得た大将です。即座に撤退命令を出しました。
こうして明騎野は危機を脱しました
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この合戦の戦功第一は殿とされました。身内に内通者を抱えながら、安住軍を撃退して城を守ったのです。大殿様は大喜びでほうびの金銀を下さいました
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殿はそれを家来一同で頭割りにしました。一人ずつ名前を呼び、ねぎらいながらほうびを授けました。「あの生け垣はよくできていたな」「あんな大穴をよく短時間で掘れたな」「そちの射撃はまことに正確であった」等々。
最初は、「おれの方があいつより働いたのに、頭割りなんて不公平だ
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勘解由はいつのまにか姿を消していました。
こういうキャラクターはしぶといので、また思いがけないところで名前を聞くかもしれませんね
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(おわり)
炉端でリフレッシュして下さいね。
気温が変化する時は、体調注意ですね。
バカと野と思っていたら意外と強かったのは織田信長や武田信玄・・・・
少数の兵ながら鉄砲を巧みに操ったのは真田幸村のよう・・・・
色々な歴史が融合した作品に思えましたね
平和的に解決して何よりでした
素敵な作品ですね。
見せていただき、siawase気分です。
歴史物、・・・・・・。
好きです。
昨日も、コメント及び応援ポチに、深謝です。
そうですね。自分が読んだ歴史小説とかが下敷きになっていると思います。
飛水城防御作戦は、ちょっとだけ徳川の上田攻めを撃退した真田家の作戦を勉強しました(笑)
今回は珍しく殿がいいカッコしています。
楽しんで頂けたなら嬉しいです。
まさか軍師殿が裏をかかれていたなんて!?
殿はできる人だったんですねー☆
逃げ出したと思われる軍師殿のしぶとさを楽しみにしています!(笑)
勘解由は殺しても死なないタイプなので、きっとまた何かやらかすでしょう(笑)
太平記の笠置攻防を彷彿とさせる活劇です。
すごいものにたとえて頂いて光栄です。
F1マシンにもついている、あの秘密兵器は出番がなかったですね