AMASHINと戦慄

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きゅっきゅきゅー、きゅっきゅきゅー

2013年10月13日 | やっぱりメタル!!
8月初旬にディスクユニオンで購入した人間椅子の最新作『萬燈籠』を今更ながらレビュー。
今回ディスクユニオンで購入した理由は、特典にTシャツ(写真上)が付いていたからであるが、もうひとつの特典『インストアイベント参加券』は当然のことながら無駄になった。まぁTシャツも今後着る機会はなかなかなさそうだが。



本作は、今年5月に行われたOzzfestの反響の煽りを受け、その勢いそのままで作り上げていったといってよい。まぁ和嶋氏本人もかなり意識したと、各インタビューで述べていらっしゃる。
http://www.qetic.jp/interview/ningen-isu-130812/102724/
だから最初本作を聴いた時は、ドゥーミーな楽曲もあまりなく、こじんまりとしたものばかりで、サウンドもやけにモダンになったし、こりゃ完全に新参のファンに迎合した作品になってもーとるなぁ、と少し残念な気持ちになった。
しかし、今回メタルバンドとしての意識が高まっていることも事実で、そのモチベーションの高さが飽和状態にあった最近の人間椅子の作品に比べて一歩抜きん出た形となって、聴き応えは十分であった。1曲1曲の特性もクッキリしており、2、3回聴けばスッと頭に入ってくる馴染みやすい内容となっている。

まず、前作のツアーから出囃子で使用されていた“此岸御詠歌”が今回冒頭に収録されているのがうれしい。このチリ~ン、チリ~ンという行脚僧が鳴らすような鈴の音色は、「これから人間椅子の冥界への扉を開く心の準備はいいですかな?」という、新参の方に対しての期待と不安を煽る効果としても絶大である。
しかし、今回のワジー、#2“黒百合日記”から気合入ってるね。最近ここまで変調の激しい楽曲はなかったな。この曲の時点で人間椅子の魅力が50%くらい盛り込まれているといっていい。で、本作中これが最も長尺の曲となっている。



津軽三味線奏法が炸裂する#4“桜爛漫”も、和嶋氏の和風ギター技が光る良曲だが、歌のキーの高さ的にナカジマノブ氏が歌いそうな曲だな。ノブ氏は今回#8“蜘蛛の糸”でリードVoをとっているが。
にしても、今回はますますワジーのギターが全編を通して冴え渡っている。
#5“ねぷたのもんどりこ”にしても#6“新調きゅらきゅきゅ節”にしても、コーラスパートなど、明らかにライブで盛り上がることを想定した作風であるが、そんな勢いだけかと思われる楽曲でも和嶋氏の卓越したアイデアがキラリと光っている。
特に“ねぷたのもんどりこ”でみせるファズギターソロは、ねぷた祭りでの笛の音色をイメージしたもの。
笛の音色ギターといえば、5th『踊る一寸法師』収録の“モスラ”でも、原住民の笛の音色を自作のファズで再現したことが思い出される。この人はほんと平成のブライアン・メイだと思う。
語り歌の#9“十三世紀の花嫁”は、どう聴いても“世界に花束を”の二番煎じソングでちょっと気恥ずかしさすら覚えたが、和嶋氏の夢の中に登場した寺山修二が歌っていた歌からヒントを得たという経緯などを聞くにつけ、だんだんと味わい深くなってくるものがある。

しかし、和嶋氏のギタリストとしての衰えを知らぬ職人的技術、そして彼の広範囲に及ぶ豊富な知識とイマジネーションから成る無尽蔵の楽曲センスには毎回舌を巻く。人間椅子はタダの和製ロックバンドではない。それは楽曲を一聴すればわかる人にはわかる。正直、人間椅子を聴いて「なんかお経みたい」などと、その辺の流行のヒット曲しか聴かない人みたいな感想しか出てこない人には情緒というものが欠如しているのだと思う。とにかくセンス・オブ・ユーモアを解せない人間は、イカ天の司会者を務めてた三宅裕司みたいにヘラヘラ笑うしかないだろう。
テクニックばかりが先行するプログレメタルバンドなんぞ、今の時代掃いて捨てるほど存在するが、人間椅子みたいな楽曲センスと情緒ある世界観を持ったメタルバンドは、世界中探してもなかなかいないだろう。


最後に、私が今回最も注目を寄せていた“狂気山脈”、“ダンウィッチの怪”に続く久方ぶりのクトゥルー神話曲#11“時間からの影”について言及すると、う~ん、イントロからそれなりに宇宙的な雰囲気も醸し出されているし、激しく変調もするのだけれど、なんだか小さくまとめられた感じで先の名2曲と比べるとずいぶんと中途半端な気がする。
ま、これはアーサー・ブルック・ウィンタース=ホール牧師の断片的な『エルトダウン』の粘土板を表したものと考えればいいかもしれないが。チープな歌詞内容になっても、せめて<大いなる種族>や、“忌むべきトゥチョ=トゥチョ人の精神”などのキーワードを盛り込んで欲しかったかと。
『時間からの影』に関しては、『ラヴクラフト全集 3』(創元推理文庫)に収録されていますので、この曲に感銘を受けた方は是非お読みになることをオススメいたします。
超銀河からやってきた、精神だけで時空を移動する恐るべき<イースの大いなる種族>の脅威についての物語で、ラヴクラフト作品の中でもかなり特殊な部類となっており、これを最高傑作にあげるラヴクラフティアンも決して少なくありません。<イースの大いなる種族>に関しては、本ブログでも何回か取り上げておりますが、アホと思われそうなので読まれないことをオススメいたします。

イースの大いなる種族(仮住)
        


今日の1曲:『黒百合日記』/ 人間椅子

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4 コメント

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>録ン露織さん (あましん)
2014-05-30 20:25:51
私の友人で正統派な音楽しか聴かないヤツも同じことを言っておりました。
ようは理解できない、あるいは理解しようとしないのでしょう。
好みはあるかもしれませんが、歌以外でも魅力的な要素はたくさんあるのに、「お経みたい」なものにとらわれて、本質的な部分が見えてこないのでしょうね。

まぁベースボーカルの人は実際住職みたいなカッコしてるので、説得は難しいんですが・・・・
返信する
Unknown (録ン露織)
2014-05-29 23:08:28
「なんかお経みたい」
一字一句全く同じことを父に言われました
センスオブユーモアに欠けてますねぇ
美声がなくたって歌唱の技術やセンスがなくたって歌は上手く歌えるということを知らないんだと思いますねぇ
返信する
>ジョニーAさん (あましん)
2013-10-31 23:03:06
感想ありがとうございます。

人間椅子の作品は、やっぱ後からジワジワくるものがありますよね。
最近では「猫じゃ猫じゃ」がいい塩梅になってきています。
「新調きゅらきゅきゅ節」でのギターソロが、今までにないくらいメタリックで頑張っている感じがいたします。
やっぱこのあたりオズフェス客を意識したんでしょうね
返信する
萬燈籠感想 (ジョニーA)
2013-10-29 23:12:41
「ねぷたのもんどりこ」 と「新調きゅらきゅきゅ節」の2曲が
人間椅子の重さをいい意味で中和して、アルバム全体を
聴き易くコーティングしてる気がしますね~~。
「十三世紀の花嫁」も、歌詞にちょっと鼻白むところがあっ
て、しばらく早送りしていましたが、最近そのメロディアス
な間奏などの虜になっています♪
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