AMASHINと戦慄

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ノルマンディー脱出作戦

2013年10月06日 | しねしねシネマ
本ブログでも、Earth Music & EcologyのCMの件で物議を醸した、アキ・カウリスマキ監督作『ル・アーヴルの靴みがき』を近所のイオンシネマにて鑑賞。
ま、この作品実は2年前に公開された映画で、今回のは国連UNHCR協会が主催する「ヒューマン・シネマ・フェスティバル2013」という、入場無料のチャリティ映画上映会での一プログラム。
いや、近所の田舎イオンのシネコンで、アキ・カウリスマキ監督の作品が、しかもタダで見れるなんて、こんなオイシイ話はないっつーことで。

今回はフィンランドではなく、北フランスの港町、ル・アーヴルが舞台となっており、まぁ国連の難民支援機関が選抜してる映画だけあって、アフリカから漂着した難民の少年と、靴磨きで細々と生計を立てている初老のフランス人マルセルとの絆を描いた、カウリスマキ流コメディ風味がほんのりと香るヒューマンドラマが描かれている。
もともとアキ監督の作品には、「敗者三部作」というのがあるくらい社会的に立場の弱い者にスポットが当てられる傾向がある。
まず、ハードボイルドな冒頭のシーンからすでに惹き込まれてしまうのだが、今回はアフリカ難民を取り扱っているということでかなり話がスケールアップするのかと思いきや、うん、いつもの坦々とストーリーが展開する色彩豊かな典型的なアキ映画だった。



難民少年の脱出作戦劇とはいえ、窮地を乗り越えた後「ヒャッホ~ウ!!」と闇雲にうかれはしゃぐバカガイジンも出てこないし、へらず口を叩く小生意気な子役も登場しない。
そこに出てくるのは素朴な町の商売人ばかり。その表情にもやはり欧州独特の哀愁を漂わせており、とにかく登場人物ひとりひとりに、なんとも言えぬ魅力がある。主人公マルセルの奥さん役の人は『過去のない男』にも出演してた女優だな。フランス語も話せるのかぁ。
話の内容は全然違うけど、各シーンに私のお気に入り映画『過去のない男』と似通ったシーンが随所に見受けられ、それほど目新しさは感じなくあまりにも事がうまく運びすぎるハッピーハッピーな展開に少し物足りなさを感じたが(まぁ私の評価は『過去のない男』基準となってしまっているので)、アキ監督作に初めて触れた方には、もの凄く斬新でシンプルで心温まる作品に仕上がっていると思う。ラストのオチなんかも見事で、劇場で感嘆の声をあげる人もチラホラと。うん、いい映画だった。
そうだ、今回もまた犬がいい味を出してたな。彼もタハティに続き、カンヌ国際映画祭でパルム・ドッグ賞を受賞したのだとか。

あと、バンド演奏シーンが出てくるのもアキ作品の欠かせない要素。
マルセルがアフリカ少年のロンドンへの密航資金繰りに奔走するシーンが坦々と映し出されるのだが、それが町でチャリティコンサートを開催してその収益金で補うというもの。それには頼りのロックシンガー、リトル・ボブの助けが必要だったが、彼は今奥さんと仲違い状態でふさぎこんでいる。その夫婦仲をマルセルが取り持とうとするのだが、これが割と簡単に事がすすみ、「え!?このシーンって、いる?」って、このロッカーのちょっと小太りの池乃めだかを彷彿とさせる風貌も相まって、思わず劇場で吹き出しそうになった。
この下りは、アキ監督本人が実在のロッカーであるリトル・ボブを個人的に出演させたくて無理矢理ねじ込んだ感が否めない。だって演奏シーンみっちり映してるもん。
ま、こういうのも含めて実にアキ監督作らしい。



リトル・ボブに関しては、70年代からイギリスなどで人気を博したル・アーヴル出身のミュージシャンらしく、地元では「ル・アーヴルのエルヴィス」と呼ばれていたとかいないとか。
ググってたら私好みのアルバムジャケットを発見したので掲載しておきます。



まぁ今回この上映会に集まった人たちは、タダだから観に来たのか、アキ作品が好きで観に来たのかは定かではありませんが、こんなハートウォーミングな話の映画を見終わった後なら、誰だって寄付したくなりますわなぁ。

オススメ度:★★★★

今日の1曲:『Libero』/ Little Bob

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