AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

コケのむすまで

2018年08月05日 | ♪音楽総合♪
先月十三の映画館で『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』を鑑賞し、再びライバッハの音源に興味が湧いてきて、さっそくオンライン中古で見つけて購入したのが、牧歌的なジャケットが印象的な『VOLK』というカヴァーアルバム。

今回の映画でも北朝鮮の民謡をライブでカヴァーしていることからも、実はライバッハにとってカヴァー曲はかなり重要な位置を占めており、これまでヨーロッパの「The Final Cowntdown」、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の主題歌、ローリング・ストーンズの「悪魔を哀れむ歌」、そしてなんといってもビートルズのアルバム『Let It Be』の楽曲を、タイトル曲以外をまるまるカヴァーして一枚のアルバムとしてリリースするという、ふざけたようなことまでしている(ポールがこれを聴いてすごく気にいっていたとか)。




で、今回購入した『VOLK』は、全編世界各国の国歌のカヴァーという、なに考えとんねんというか、大それたことを敢行している。
カヴァーされてるのは、ドイツ、アメリカ、イギリス、ロシア、フランス、イタリア、スペイン、イスラエル、トルコ、中国、日本、スロヴェニア、バチカン市国、NSK。
で、案の定、ロシアからは「国歌を侮辱した」ということで入国禁止をくらっている。

ただこの作品、彼らの意図してる事はともかく、内容的にそれほどふざけた作品でもない。
まぁ私の知ってるのは日本の「君が代」とアメリカの国歌ぐらいなのであるが、とにかく楽曲アレンジがとても洗練されていて秀逸。
ロシア国家など、少年合唱団の聖歌のようなコーラス、そしてロシアの発明家が生み出した電子楽器テルミンの音色も導入されていて、とてもこだわりが感じられる。

イスラエル、トルコらへんになると、まぁ元曲を知らないので何とも言えんが、普通にカッコいいインダストリアルナンバーにしか聴こえない。
ヴォーカルのミランは、普段太めの厳めしいダークヴォイスでブツブツつぶやくといったスタイルが主流かと思われるが、本作では実はかなりの美声の持ち主?ていうくらい澄んだ声で歌っているのだが、これはひょっとしたらミランではなく、影のヴォーカリスト(匿名のメンバーもいるらしい)の歌声かもしれない。
いかんせん、謎の多いバンドで自分もよく知らんので。

そして注目に値するのがやっぱり日本の国歌「君が代」のカヴァー(曲タイトルは「Nippon」)。
なんとちゃんとオリジナルの日本語で歌っている。
このアレンジのクオリティがまたすこぶる高い。
水墨画のようなピアノとストリングスのみの伴奏で、厳かでしなやかな美声に透き通るような女性コーラスがのっかるという。しかも他の国歌より3分くらい長い作り込みようで、なにかしら敬意すら感じとれる。

この映像を観るとやはり歌メロを歌っているのはミランやないみたい。そおいえば、映画でもこのスキンヘッドの人チラっと出てきたな。


なんかの世界タイトルマッチで、日本の有名歌手による国辱的な歌唱アレンジの君が代をよく耳にすることがあるが、それこそライバッハを日本に誘致し、是非そういった場で君が代を歌ってもらいたいものである。


まぁラストの「NSK」に関しては、正確にはカヴァー曲ではない。

NSKとは・・・・・
ライバッハのメンバーが1984年に設立したNewe Slowenische Kunst(新スロベニア芸術)という活動組織。
NSKはスロベニアの首都リュブリャナを拠点とし、国境や民族などの概念を超えた多角芸術運動体として活動を開始。
1992年にはSpiritual State(精神国家)を宣言し、モスクワとベルギーのゲントにはNSK大使館を設置し、NSKパスポートの発行や各種展示なども行っている。
NSKはさまざまなアーティスト活動を行う集団が複雑に絡み合い「時間軸上の空間」を形成している。
誰でも、どこに住んでいてもNSK国民になることができ、NSKパスポートを取得することができるという。

こないだのライバッハ講演会でレコード屋の店長さんが持参してたNSKの蔵書。


で、この「NSK」の国歌が一番インダストリアル感がなく、やけにリアルな民族的国歌に仕上がっている辺り、ライバッハのヤバくて強いユーモアが感じられた。


まぁ自分が求めてたのは、もっとバッキバキでメタル色の強いインダストリアルなライバッハの音源であったが、これはこれでなかなか趣のある作品である。
寝るときに聴くととてもよい。


今日の1曲:『Nippon』/ Laibach
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする