「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

環境大臣意見

2014年06月05日 | リニア新幹線
 今日、リニア環境影響評価書に対する環境大臣意見が国交省に提出された。

中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見の提出について

リニア中央新幹線:アセスに環境相「相当な環境負荷」指摘(毎日)

リニア中央新幹線:建設残土は、地下水への影響は未知数(毎日)

リニア新幹線「地下水、残土対策を」 環境相意見書(日経)

 冒頭、「本事業は、その事業規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」とし、「例えば、本事業のほとんどの区間はトンネルで通過することになっているが、多くの水系を横切ることになることから、地下水がトンネル湧水として発生し、地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。特に、山梨県から長野県にまたがる地域の一部は、我が国を代表する優れた自然の風景地として南アルプス国立公園に指定されており、また、ユネスコエコパークとしての利用も見込まれることから、当該地域の自然環境を保全することは我が国の環境行政の使命である」とあったり、「技術の発展の歴史を俯瞰すれば、環境の保全を内部化しない技術に未来はない」等、なかなか良いことが書いてある。また、「本事業は関係する地方公共団体及び住民の理解なしに実施することは不可能」として、「地方公共団体の意見を十分に勘案し、環境影響評価において重要な住民関与についても十全を期すことが必要」とも書かれている。

 しかし、その後の各論に入っていくと「適切な環境保全措置を講じること」といった表現が目立ち、個別・具体的なことはあまり書かれていない。長野県知事が先月、飯田市長、南木曾町長、大鹿村長と一緒に環境省へ行って要望した工事用車両の通行に伴う生活環境への影響の低減についてや、地形・地質上のリスクが大きい場所における地上構造物の見直しについても全く触れられていない。
 希少猛禽類については、個別具体的なペアについて書かれていて、例えば大鹿村のAペアについては、「営巣中心域近傍を計画路線が通過する計画となっているが、基本的にこの区域の環境の改変は避ける必要があり、人の出入りも極力少なくすべきであることから、営巣中心域及びその近傍を回避する又は営巣期における工事を避けることも含め、専門家等の助言を踏まえ、回避、低減、代償の順で環境保全措置を検討し、講じること」と、しっかり書かれている。でも、大鹿で話題になったミゾゴイについては何も触れられていない。
 水環境については「予測の不確実性は高い」「特に山岳トンネル区間には、多数の断層が確認されており、断層や破砕帯等の透水性が高い部分から大量の湧水が生じる可能性がある。地下水位の低下並びに河川流量の減少及びこれに伴い生ずる河川の生態系や水生生物への影響は、重大なものとなるおそれがあり、また、事後的な対応措置は困難である」と、しっかり書かれている。そして、より精度の高い予測の実施や、その結果に基づき水系を回避又は適切な工法及び環境保全措置を講じること、湧水の最小限化等の工法の検討などを求めている。
 また、発生土については「施設の規模等の見直しを含め、発生量を抑制するよう検討する」ことや発生土置き場の選定については自然度の高い区域や土砂の流出があった場合に近傍河川の汚濁のおそれがある区域等を回避することを求めている。また、発生土置き場ごとの管理計画の作成も求めている。
 
 この環境大臣意見を踏まえて、7月22日までに国交大臣が意見をまとめ、JRが評価書を補正した上で工事実施計画の認可を求めることになる。長期間の追加調査や評価書の抜本的な見直しは求めていないので、スケジュールへの影響は小さいといった内容がどの記事にも書かれているけど、日本自然保護協会の辻村さんはfacebook上で「JR東海は、真摯に受け止め、しっかり時間をかけて影響評価の保全措置を具体的に実効性にあるものに作りかえないと、自ら未来のない技術であることを認めることになる」と書かれていた。真摯な対応を求めたい。

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