「美しい村」の議員日記

南アルプス山麓・大鹿村在住。自給自足農業、在宅ワーカー、2011年春より村議会議員。

戦略的環境アセスメント

2010年10月17日 | リニア新幹線
 昨日、今日の2日間、信州大学自然環境診断マイスターの人たちの中央構造線地域の地質とリニア中央新幹線についてのセミナーが村内で行われていた。一般の人にもオープンということだったので、昨日は釜沢の調査ボーリング地や夕立神、鳶ヶ巣崩壊地、中央構造線安康露頭を信大の地質学の大塚先生の説明をお聞きしながら回り、今日は飯田市のリニア推進担当の木下さん、地質学者の松島信幸先生、釜沢の自治会長のサイモンさん、延齢草の小林さんのお話を聞き、その後の実習にも参加した。
 
 木下さんは、先日、新聞でもうCルートに決定したかのごとき報道がなされたが、あれは完全に報道のフライングであるとおっしゃっていた。20日に予定される次の交通政策審議会中央新幹線小委員会で、費用対効果の調査などでCルートが一番有利であるという調査結果が公表される見込みだということであって、それこそ超電導磁気浮上方式なのか、従来型の鉄輪なのかだって、建設主体だって、まだ決定したわけではないとのことだった。また、リニアが通った場合のさまざまな影響について、マイナス面も含めて検討しているとのことだった。
 松島先生からは、トンネル自体は、掘ろうと思えば、時間と金をいとわずに最新の工法を駆使すれば掘れる。しかし、掘った後どうなるか、長期的な影響まで考えなくてはいけない。残土の問題、残土から重金属汚染が発生する場合もある。また、周辺の湧水が涸れる、表流水が流れなくなるなど、水のトラブルが起きている。しかし、トンネルというのは掘ってみないと分からないといったお話があった。
 あと、地元のサイモンさん、小林さんのお話を聞いた後に行われた実習は、「戦略的環境アセスメント」の考えに基づき、グループに分かれて、2日間の現地見学や話を聞いた内容、さらに地域の環境調査のデータ等をプロットしながら、それらを配慮したルートを検討してみようという内容だった。
 戦略的環境アセスメントというのは、事業に先立つ上位計画や政策などのレベルで環境への配慮を意思決定に統合するための仕組みで、従来の事業実施段階における環境アセスメントでは、計画がある程度決定した段階での影響評価なので、代替案などの検討を踏まえた意思決定には遅すぎるし、個々の事業を対象にした環境アセスメントではそれらの累積的もしくは相乗的な影響を考慮することが困難といった問題があったが、そうした欠点を補う考え方だそうだ。具体的には、立地に関する複数案を検討することにより、計画の策定過程で環境影響を受けやすい地域を避けることが可能になるとのこと。前原前国交大臣がリニアの検討にはこの戦略的環境アセスメントの考え方を取り入れるといった発言をしていた。
 ごく短時間で、十分な資料もない中で検討したので、極めて大ざっぱなものだったけれど、例えば私が混ぜていただいたグループでは、トヨグチイノデなどの水を必要とする希少植物を守らなくてはいけないので、それらの自生地に影響が及ぶ可能性があるルートは避けるべきだといった話が出た。隣のグループでは蛇紋岩地帯は避けるべきだという地質に着目したルート検討をしていた。
 自然環境診断マイスターの方々は、皆さんそれぞれ植物など自然環境のいろいろなことに詳しい方々だったので、昨日は地質を見て回るということだったけど、キノコや植物にも目が行ったりする。一緒に勉強させていただいて、とても興味深く充実した2日間だった。