けそけそ

　多分大分弁だと思うが、「けそけそ」という言葉がある。落ち着きがなく、あたふたしているような人間に対して、「けそけそするな」と注意する。「ジタバタ」でもなく、「ソワソワ」でもない。「けそけそ」という語感がぴったりくるのである。

　１年ほど前から、散歩の途中でトトそっくりの黒犬と出会うようになった。小さい頃のトトそっくりで、耳の先端が垂れ、真っ黒で胸に白い部分がある。トトも子犬の頃は耳の先端が垂れていたのだが、大きくなるに従って、ピンと立ち上がった。

　その犬に今朝、数ヶ月ぶりに出会った。体はずいぶん大きくなっていたが、トトよりもちょっぴりスマートで、耳の先っちょはいまだに垂れたままだった。が、まったく違うのはその性格だ。オッサンの引っ張るリードを無視し、必死に前に進もうとしたり、突然後戻りを始めたりと、落ち着かないことはなはだしい。心の中で、「けそけそした犬だなあ」とつぶやいたアベさんであった。

　ちなみに似た言葉に「てれてれ」というのがある。こちらは新聞で北九州の人が地元の言葉と書いていたので、おそらく九州北部の方言なのだろう。意味はのろのろとしてだらしない様子を表した言葉だが、かったるそうにダラダラ仕事をしていたりすると、「てれてれするな」とお叱りを受ける。または繰り返さずに「てれーっとするな」と使う場合もある。「てれてれ」や「けそけそ」、こういう方言は大好きだ。