NY株は来週月曜日の休場を控えて小幅高で終わった。
今週はダウ平均+1.2%、S&P500+1.4%、ナスダック+1.7%だが、日経平均は+4.8%。
海外ではヨーロッパのほか、エマージング市場も軒並み高。週間では日経平均が+4.8%でNY株を上回った。
相場を押し上げた原動力は円安への転換である。NY市場では79.53円で終わり80円台が視界にはいってきた。きっかけは日銀の追加の資産買い上げで、米連銀の長期的な低金利政策にあと押しされて、久しぶりに積極的な姿勢を示したことだ。
年初来、ユーロ圏での金融不安が昨年に比べて軽減されてきた感じを強くするが、その根底には昨年12月にECB(ヨーロッパ中央銀行)の発動したLTRO(3年物資金供給)がある。新任のドラギECB総裁が打ち出したこの金融政策は、特にヘッジファンドの運用者の間では高く評価された。ユーロ圏の銀行を対象に無制限に近い資金を1%という低金利で3年間供給する。
LTROという日本であまり聞きなれない言葉だが、バーナンキ議長の第1弾、第2弾のQE(金融緩和政策)に匹敵する。前任のトリシェ総裁と異なり、ドラギ新総裁の現実的な行動力として効果がじわじわと出てきた。
週末の東京市場での注目点はこれまでオリンパス、東京電力と並んで市場をけん引してきたSNSゲーム関連の株価の下落である。
グリー、DNAの投資家には欲求不満がつのる人気である。
理由は2つある。市場の人気が円安関連に向かったこと、いまひとつは一部に言われる株価の割高感である。
本日の日経新聞の第1面の「転機の企業収益・迫られる構造改革」のなかで「グリーの営業利益は800~900億円と3倍近くになり米フエィスブックと遜色ない。「非製造業は非効率」。規制や非関税障壁に守られた時代の常識を見直すときかもしれない」という記事はこれからの、日本経済の進路を示す問題提起として注目される。
グリーの今期(2012年6月期)の営業利益は1000億円に乗せる。2月初めの決算発表時に同社の田中社長が「アマゾンはいまやモノのEコマース企業でない」と10年間の企業の変貌と成長の足跡を分析した。グリーが目指すのはアップルやアマゾンが米国の新成長企業のモデルを形成したように、現在の豊かな手元流動性を日本企業の未開拓の分野に投資して次の新しいビジネスモデルを育てることにある。米国で12月に公開されたジンガ(ZNGA)を追い抜き、SNSゲームでは世界一になった。このような視点で株価と経営者を評価すべき時にある。
フエィスブックは数ヵ月以内に公開されるが時価総額は10兆円近いといわれる。グリーの時価総額は5500億円と20分の1である。日本企業で国際的に活躍する数少ないネット企業になる可能性を秘めている。
アップル、グーグル、フエィスブックを追いかける日本企業だ。