足立 真一のTriton Blog

株式投資の実践、グローバルな視点での投資戦略。
銘柄選択は、成長株、中・小型株、新興市場株にバイアスを置く。

あるヘッジファンドの失敗

2007-02-03 20:43:49 | 株式

昨年のヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズの破綻と同じように、商品相場の暴落の余波を受けてヘッジファンドのレッド・カイト・マネジメントが1月に月間で27%も損失を出し問題になっている。運用資産は10億ドル(1200億円)と中型のヘッジファンドであるが亜鉛と銅の暴落の影響を受けた。

亜鉛は過去6年間での最大の下げとなり、銅は10ヵ月ぶりの安値となったダメージを受けた。

亜鉛は今年にはいってから27%も値下がりした。在庫が昨年末に比べて8%増加した。昨年の相場の上昇の一因は、これまで亜鉛の輸出国であった中国が、内需の増加で自給が不可能になり輸入国になったこと。それを理由にヘッジファンドの買いが殺到し価格が異常な値上がりになった。また銅の在庫も2004年来の水準なった。中国に次いで世界第2位の消費国の米国でエレクトロニクス、自動車、エアコンなどへの需要が落ち込んでいる。

ヘッジファンドの運用にもリスク管理の点で問題があった。昨年のアマランスの失敗は天燃ガスであったが、石油の上昇を見込んでの投機の失敗。今回のレッド・カイトは昨年のパフォーマンスが2.9倍と驚異的な数字であったことに対す運用への慢心があった。

世界的な過剰流動性で金利が低水準あり、資金が代替投資のヘッジファンドに流入する。経験のあるヘッジファンドはストップ・ロスを設定、短期に10%以上の損失が出ると反対売買をするが、レッド・カイトにはそのような自己規律ルールが欠けていた。

このヘッジファンドの失敗の裏には中国の存在がある。今週は中国株が下げた。投資戦略の上では中国株の動向に、当面は注目しなければならない。

われわれは資金運用で世界のヘッジファンドで運用しているが、提携しているスイスのプライベート・バンクが昨年は749社のヘッジファンドの運用者と面談した。そのうち運用対象の候補として取り上げ成果を追求し始めたのはわずか10社である。新しいファンドにはすぐには飛び乗らない。特に最近は慎重である。なによりも「過去の成果を重視」という。

市場の平均と大きく乖離するような好成績の先にはリスクが待っている。投資の原理原則である。