あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

青蘆

2009年08月30日 | うんちく・小ネタ

                                                               

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子供の頃の思い出ですが、どこだったのか、ある川岸には、川が運んできた黒土が堆積していて、そこに楊(やなぎ)の木と蘆が沢山生えていました。

川岸一帯の楊や蘆は誰の所有物でもないので、伐ろうが抜こうが子供のし放題。
この楊と蘆の茂みで、楊や蘆を伐ったり抜いたりして遊んだ記憶があります。

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「蘆(あし)」は、「悪し」に通じると言うことで、不吉な感じがするということで、「葭(よし)」と言い換える場所もあります。


【青蘆】 (あおあし)

夏の水辺に青々と茂っている蘆。夏の季語。
                     《広辞苑》

                                                         蘆は日本各地の水辺に群生するイネ科の多年草。
春に芽を出し、六~八月になると薄に似た細長い葉を青々と茂らせる。
薄よりたくましく、高さは二~三メートルにも及ぶ。
この青々と茂った緑の蘆を「青蘆」という。青葦とも書く。
                            《花の歳時記》

                                                                    

今の時分だと蘆の背は高くて、蘆の茂みに踏み込むと小さな子供の場合、すっぽりと蘆の中に埋没してしまいます。
四方皆、蘆の葉に閉ざされた中で、頭の上だけに開けた視界の先に、夏の狭い空が見えてる・・・そんな状態になります。

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青葦の茂みの中で、狭い青空を見上げ、蘆の葉の葉擦れの音を聞きながら、繰り返される季節が無限に残されているわけではなくて、何十回と夏空を見上げるうちに、いつか蘆の茂みの中に自分がいなくなってしまう日が来るんだなと、子供ながらに感じたという手記が、何かの本にありました。

現在も、沢山の蘆が生えている場所が日本随所にあります。
そうした景色を何かでみつけては、生い茂る蘆の茂みを眺めると、蘆に囲まれて空を見上げた風景を想像することがあります。

青蘆の季節。
あぁ、日本の夏。

青葦の茂みの中から見上げた空は・・・

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地蔵盆

2009年08月26日 | うんちく・小ネタ

                                                                                                                                                        地蔵盆は、主に近畿地方で行われる行事です。
今年は終わってしまったばかりですが、地蔵盆は「お地蔵様」の名前で親しまれる地蔵菩薩の縁日、8/23~25に行われる行事で、元は地蔵会、地蔵祭などと呼ばれる法要でした。
現在は子供中心の行事となっているようです。

お地蔵様の縁日は毎月24日とされていますが、お盆の直後の縁日は特に盛大に行われ、近隣のお地蔵様を洗ったり前掛けを交換したりし、供物や灯明を捧げたりしてこれを供養します。
地蔵盆は本来は旧暦の7/24の前後に行われる行事でしたが、現在はもっぱら月遅れの行事となって、8/24前後に行われるようになっています。

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◇近畿地方で盛んなのは昔から
                                                                    守貞漫稿に、

七月二十四日 大阪諸所地蔵祭
大阪市中、諸所ののき下等に壇を作り、棚を架し、地蔵を祭る者ははなはだ多し。江戸の稲荷に比すべし。今日、必ず皆これを祭る。

という記述もあります。
また、南総里見八犬伝の作者である滝沢馬琴が、この地蔵盆の時期に京都を旅して、夜遅くまで灯明を灯し、六地蔵巡りを行い、また大人達は酒盛りしながら町内問題を話し合ったといった昔の地蔵盆の様子を書き残しています。

守貞漫稿の著者、喜田川守貞も滝沢馬琴も共に江戸に暮らした人。
江戸で暮らした二人にとっては大阪や京都で行われる地蔵盆は物珍しい行事だったようです。

他の地方の方には、この日、道に面して立っているお地蔵様に沢山の灯明が灯され、日が暮れてから子供達がそのお地蔵様にお参りしている様子を目にすると「今日はなんかのお祭り?」と不思議に思いながらこの光景を眺めることになりそうです。

                                                           ◇子供の六地蔵巡り
                                                                お地蔵様は「地蔵菩薩」ですが、他の菩薩様や如来様とは違ってなんだかグッと身近な存在です。
お地蔵様は全ての人々を救い、成仏させるまで、自分は決して成仏しないと誓った菩薩様。そのため弱い者たちにとってはことさら有り難い菩薩様で、身近な救い主であることが、人々に親しまれる存在となった理由でしょう。

お地蔵様に、とげ抜き地蔵、延命地蔵、子育て地蔵など苦難を肩代わりしてくれる身代わり地蔵となるのも、人々を救ってくださる菩薩様だからだと思います。

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さて、地蔵盆には炎天を避けて、日が暮れてから町内のお地蔵様を巡り歩きます。これを六地蔵巡りといいます。六地蔵とは人々が輪廻する六道、天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道をそれぞれ巡る地蔵菩薩で、この六地蔵によって全ての人々が救われる訳ですから、一年に一度くらいはたっぷりお礼をしないといけませんね。
六地蔵巡りをすると、無病息災・延命長寿の御利益があると言われています。

もっとも、現実の六地蔵巡りでは、子供達は巡り歩く各所でお菓子がもらえるので、延命長寿の御利益より、目の前のお菓子という御利益の方がありがたいのかもしれません。

 
近畿での行事とはいっても、例えば、和歌山では地蔵盆の風習は無いようです。

皆さんの住む場所では、地蔵盆、行われているでしょうか。

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環のある惑星から環が消える日

2009年08月22日 | うんちく・小ネタ

 
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 「三重(さんじゅう)の最も遠い惑星を見た」

と1610年にその惑星に望遠鏡を向けたガリレオは書きました。
ガリレオの作った望遠鏡は、今からは考えられないほど性能が悪い(レンズの作りが悪い)ものでしたから、現在なら誰でも知っているこの惑星の姿を正しく捉えることが出来ず、

  三つの星が直線に並んだ惑星

と見誤ったのでした。
彼はまたこの星を「耳のある惑星」とも表現しています。
その惑星の名前は土星。おなじみの環のある惑星です。
         
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◇ガリレオを悩ませた星
ガリレオは既に木星に衛星を発見(木星の4大衛星、通称ガリレオ衛星のこと)していましたから、どうやら土星にも二つの巨大な衛星があると考えたようです。

ただ木星の衛星が日々その位置を変える天体であるのに対して、土星のこの巨大な衛星は位置を変えることなく同じように土星に張り付くように見え続けました。不思議な惑星でした(だから、「耳のある惑星」と表現したのでしょう)。

その形状から、ガリレオを悩ませたこの土星の耳ですが、それから 2年後、この耳はさらにガリレオを悩ますことになりました。あんなに特徴的だったその耳が消えてしまったからです。
そしてさらに 1年たつと消えたはずの耳は再び何事もなくその姿を現しました。神出鬼没の不思議な土星の耳でした。

結局のところガリレオを悩ませたこの土星の耳の謎は、ガリレオが生きている間には解けることはありませんでした。

                                                            ◇そして今年もまた・・・
ガリレオを悩ませた土星の耳は今では子供でも「土星の環」として知っています。
望遠鏡による観望会などを開くと、見たい天体の第一位は土星。
みんな口を揃えて言います。

  土星の環っかが見たい

と。
「土星の環」とひと口に言いますが、環と言ってもひとつではありません。
現在知られている土星の環はA環~G環までの 7つあり、さらに探査機などによって幾つかの「環」が見つかっていて、全部併せると11(2009年の時点で)になります。

A~G環がどのように並んでいるかというと、内側から順にD環,C環,B環,A環,F環,G環,E環の順となります。ただし、私たちが普通の望遠鏡や写真などで見知った土星の輪はA,B,C環あるいは、これに D環を加えたものです。

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一見すると一枚のように見える土星の環ですが、実際の環は沢山の小天体で構成されています(各々の直径は、数十m 以下の氷のような物質だと考えられています)。
環の幅は数万キロもありますが、厚さとしては数百m を越えない(おそらくは100m以下)もので、幅に比べるととても薄いものだと言うことが出来ます。
            
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ともあれ、土星といえば「環」と言うほど有名な土星の環ですが、今年はその土星の環っかが消えてしまう年、環の消失する年にあたっています。
なお、環の消失はおよそ15年に 1度起こる現象です。ガリレオを悩ませた、土星の耳が見えなくなる現象は、この15年に 1度起こる現象だったのでした。

                                                            ◇土星の環の消失
環の消失といってももちろん環が跡形も無く消えて無くなるわけではありません。単に見えなくなってしまうだけです。
既に一昨年、昨年くらいから土星の環はどんどん細くなってきていました。
そして今年はついに消失と呼ばれる現象が起こります。

既に説明したとおり土星の環は大変に薄ものですから、真横から見ると全く見えなくなってしまいます。地球がこの環を真横から見る位置にくるのは今年の 9/4です。

さて、環を真横から見る位置に地球がくるのは 9/4ならもう少し後にこの話を書けばよいものを、こんなに早く書かなくともいいのに・・・と思われそうですが本日書いたのにはそれなりの理由があります。
それは、8/11に環の消失が起きたからです。

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この環の消失は、地球からでは無く太陽から見て環が真横に見えるために起こる現象です。
土星の環も、惑星や衛星がそうであるように自分で光っているわけでは無く、太陽の光を反射して光っているわけですから、太陽に対して真横を向く位置にくると、反射する面が極々わずかになりますから、事実上見えない状態となります。

そしてしばらく地球からは土星の環の影の部分を眺めることになります。影の部分から見る土星の環は淡く、普通の環の姿とは違った一風変わった姿となるのですが、今回は土星が太陽に近い方向に見える時期にこの状態となるため、この影の側から見た環を見るチャンスが少ないのが残念です。

                                                  ◇土星は今、どこに見える
土星は日が沈んでから暫くは、西の空の低空に見る事が出来ます。
土星が西の空に沈む時刻は20時30分頃。
日没後、西の空が晴れていたら望遠鏡を土星に向けてみると、環のないちょっと情けない姿の土星を見ることが出来るはずです。
                                                               ガリレオを悩ませた、耳のない土星をあなたも眺めてみませんか?

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水引

2009年08月19日 | うんちく・小ネタ

                                                                 【水引】(みずひき)
1.進物用の包紙などを結ぶのに用いる紙糸。細い紙縒(こより)に水糊を引いて乾し固めたもの。多くは数条を合せて、中央から染分けにしたもので、普通、祝事・進物用には紅白・金銀・金赤などを用い、凶事には白・藍白・黒白などを用いる。
                                            

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2.タデ科の多年草。山野の陰地に自生し、茎は高さ約60センチメートル。通常、葉の表面に暗紅色の斑がある。夏秋の頃、赤色の小花をまばらに穂状につけ、それを 1に見たてた。
白い花のものを「銀水引」、紅白まじりのものを「御所水引」ともいう。
ミズヒキグサ。漢名、毛蓼。「水引の花」は秋の季語。
                            
                             《広辞苑》抜粋
                                             
語源辞典を引くと、

・紙縒を水に引き渡して染めたところから
・紙縒に糊水を引くところから水引の紙縒の義
・潤沢をもって人倫の交わる礼儀の祝象とするところから
・神仏の供養や人に物を贈る時、水を添えるインドの風習の代用として金と銀の水引をそえたところから

などの語源の説が有ります。                                                これは最初の広辞苑の 1. の水引の説明。
冠婚葬祭の際には、紅白の水引を使うべき?  はたまた、金銀?
紅い方が左だったか、右だったか・・・と思い悩んだ挙げ句、最初から水引が結ばれている出来合いの包で間に合わせてしまう、あの水引の説明です。

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一方、 2. の水引はといえば、これは水引草という植物のこと。
水引草は、林や藪に普通に生える多年草。普通は雑草の一つとして数えられ植物です。花は小さく花弁はなく、顎が四裂し、上の三裂は赤色、下の一裂片は白色・・・と、植物図鑑の説明にあります。

花が小さくて、そんな細かなところまではなかなか判りませんが、30cmも有ろうかという細長い花穂に、点々とこの小さな花が並んで、上から見ると赤色に、下から見れば淡白に見え、なるほど紅白の水引のようでもあります。
そんな水引草が、つい最近、道ばたの藪の中から何本も、その長い花穂を周囲の草の上に差し掛けているのを見つけました。

 
それにしても、水引の花は華という呼び名には似つかわしくないほど「華」のない花。こんな地味な花に目を留めて、「水引」なんていう洒落た名前を考えたのはどんな人だったのでしょうか?
現代だったら、ただの雑草としてかたづけられてしまったかも知れませんね。
                                            

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水引の花が咲いたということは、知らぬ間に季節は秋へと移り変わる準備をはじめたということでしょうか。
 
暦の上ではとっくに、夏から秋へと季節が移り変わる、そんな時期でしたね。

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大都市のためのアイデンティティ

2009年08月14日 | うんちく・小ネタ

                                                               7月29日の「天国に一番近いビル」という記事の中で、アラブ首長国連邦のドバイの世界一の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」をご紹介しましたが、今度はすぐにでも崩れるような姿の超高層ビルの建築計画が登場し、海外で話題になっています。

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注目されているこのビルはタイ・バンコク中心地に建設される予定で、建物の公式名称「MahaNakhon」。
ドイツ出身の有名建築家オーレ・シェーレン(Ole Scheeren)が設計したMahaNakhonの外観は、すぐにでも崩れるような姿で、遠くから見ると建物の中間がつぶれたような感じになっています。
また、テラスとバルコニーが不規則的に飛び出していて、崩壊寸前にも見えます。

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建物内部には200戸の集合住宅、パブリックガーデンや交通ハブ、五つ星ホテル、レストランなどが入る計画になっています。
このMahaNakhonは77階建てで、今年の秋に着工される予定だそうです。

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あなたはこのダイナミズムに、どんなアイデンティティを感じるでしょうか?

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