あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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今回はちょっとだけ辛口です

2023年08月15日 | うんちく・小ネタ


今年は店頭でいちじくをよく見かけました。豊作だったのでしょうか。
スーパーの青果コーナーや産直市に低価格であふれていたので、
1日に1個ずつ熟した「一熟(いちじゅく)」を毎日1個ずつ食べてみました。







アラビア南部で紀元前3000年ごろに栽培が始まったとされるいちじくは、
1630年長崎に渡来。
以後、その栽培のしやすさから全国に普及し、昭和の後半では家庭の庭先でも
見かけることがあった果物でした。
小学校時代、実家の前が集団登校の集合場所になっていた関係で、庭に実る
いちじくは大人気。
もぎたての証である白い汁を制服に付けながら、悪ガキたちはいちじくを手に
学校を目指したものでした。






庭先からいちじくを失敬して集団登校。こんな「サザエさん」でも見かけなくなった
昭和のひとコマですが、実はこの風景にはナチスドイツが深く関わっていたのです。

それは、集団登校の基盤となる校区制を考案したのがナチスだからなのです。
天才的発明といわれる校区制は、全くコストをかけず、同じレベルで画一的な人材を
作り出すことができる画期的システムなのです。






例えばある学校が音楽教育に注力したとします。すると必ず音楽の苦手な生徒の
親からクレームが来ます。「私たちは学校を選べないのだから、勝手な方針変更は
困る」と。理科教育に注力したとしても同じ事ですね。


つまり、校区制下ではPTAが勝手に学校を監視してくれて、画一的教育環境が
保たれることになるのです。
個性的教育が叫ばれ、私立学校が台頭し、校区制が消滅しつつある今日ですが、
かつての高度経済成長を支えた画一的人材作りに校区制が貢献したことは、
紛れもない事実なのです。







自動車、電器製品など大量生産型産業には、一人の天才より多数の同レベル
人間が必要だったのです。
GAFAに代表されるIT産業の勃興を目指し、一人の天才を生み出そうとする
教育改革。
これからの日本になじむでしょうか。
コツコツ技術を積み重ね、規律を守るモノづくり精神こそが日本を支えている
ようにも思います。

いちじくを食べながら、遠い日の集団登校に思いを馳せたのです。