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コツコツ

2021年08月15日 | うんちく・小ネタ



リクルート社が、優秀な学生を見抜くポイントとして「就活6ヶ条」なるものを定義してます。

「地頭がいい」
「要領がいい」
「コツコツ地道な努力ができる」
「体力がある」
「人に嫌われない・嫌わない」
「ストレスに強い」    の6ヶ条。

周囲を見渡してみると、中高年の出来物(できぶつ)に共通しているのは「コツコツ」ができる点でした。



昔は「コツコツ」研究に精を出していた技術者も、詰め込んだ知識を武器に要領と段取りで
最短距離を走るようになります。
科学の神様に申し訳ないと思いつつも、成果の皮算用に明け暮れ、費用対効果の求道者に
成り下がってしまうのです。



ところが、73歳になってもコツコツデータを取り続け、2009年の京都賞を受賞された科学者がいます。
米プリンストン大名誉教授のピーター・グラント博士と奥様のローズマリー博士です。

グラント夫妻は1973年から37年間、ガラパゴス諸島のダフネ島でガラパゴスフィンチという鳥の
全個体1200羽にマーカーを付けて観察し続け、ダーウィン進化論の自然淘汰の実証に貢献したのです。



1977年、大干ばつで餌が枯渇。わずかに残った硬くて大きな種子を割るため、
くちばしが太めの個体だけが生き残りました。
メスは生き残りの中でもよりくちばしの太いオスと交配。結果、干ばつを境にくちばしは平均5%太くなったのです。



1983年、平年の14倍という記録的な大雨でジャングルが発生し、小さな種子が豊作に。
結果、小さめのくちばしを持つ個体が大繁殖。小さい種子を食べづらい太いくちばし個体は、
約9割も減ってしまいます。
どうやら、進化は一方向ではないらしいですね。



それにしても気の遠くなる時間軸。気の遠くなるコツコツ。

努力を尽くした者に幸運が訪れるといいますが、特異な気象条件に出会えたのは、
まさにそういうことなんでしょう。

例えば食品をテーマにした研究も然りで、栄養成分も機能性成分も薬じゃないのでゆっくり作用していきます。
短期間で劇的な結果が出ることなどあり得ないのですから、コツコツやるしかないのです。

グラント先生の偉業を胸に、これからの自分の生き方の決意を新たにかえてみようかと思った次第です。