あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

油を売る

2010年10月25日 | うんちく・小ネタ

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先日、仕事帰りに所用で友人宅を訪問したのですが、その際、居間に鎮座 する怪しい魚油のサプリメントを発見しました。
友人を問いただしたところ、「ボケ防止にDHAを摂っているのだ」と開き直りました。
そこで、「青魚とかつお節を食べていれば、食事から魚油やDHAを摂取できる」と、その場でレクチャーすることにしたのです。

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魚油にはDHAやEPAなど、体にいいとされる不飽和脂肪酸が多く含まれています。対して畜肉系の油は飽和脂肪酸で、健康機能はあまりありません。

飽和とは、化合物中にこれ以上水素が結合できない状態で、不飽和は水素が結合する余地がある構造。つまり、不飽和脂肪酸は不安定で、機能性に優れる反面すぐに酸化してしまうのです。だから魚油は臭い訳です。

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ところが、江戸時代の庶民はこの臭くて煙の出る魚油を毎日燃やしていました。行灯の油です。菜種油なら臭みは少ないのですが、価格が魚油の2倍もするため使っているのは遊郭ぐらい。蝋燭はさらに高価で、悪代官か殿様の邸宅にしかなかったのではないか・・とも言われています。

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明るさは魚油や菜種油が豆電球くらいで、蝋燭はその約5倍。庶民は日が暮れると特にすることがなかったから油で十分だったでしょうが、武家屋敷での密談には蝋燭の明かりが必要(?!)だったことでしょう。

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行灯の下部には急須のような油差が置かれていて、油がなくなればこれでつぎ足し、空になれば油売りの行商人から量り売りしてもらったとか。
油売りは、量った最後の一滴まで油を油差に入れなければならず、油のしずくが切れるまでにはかなりの時間を要したと思います。その間を世間話でつないだのが、傍目には無駄話でさぼっているようにも見えた・・・。これが「油を売る」の語源ですね。

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食事から魚油を摂取する利点を友人に語っていたら、あっという間に1時間が経過していました。
思わぬ所で油を売ってしまった仕事帰りとなりました。

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香り

2010年10月18日 | うんちく・小ネタ

最近、香りをビジネスに活用して売り上げを伸ばす事例が急増。
例えば、昨年銀座に国内初出店となった米国カジュアル衣料のアバクロンビー&フィッチ。店内には同社の香水「フィアース」の甘い香りが漂い、非日常の浮かれ気分を演出して、購買へといざなうのです。ホノルル空港のトロピカルな香りでテンションが上がるのと同じ効果ですね。

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また、「除菌」「殺菌」「無臭」「消臭」というマイナスを排除するお題目が主流だった生活用品も、洗濯柔軟剤「レノア」や「ダウニー」のヒットで香りの付加価値を前面に押し出すようになってきました。レノア派、ダウニー派の派閥争い必至の模様(?)です。

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自動車業界も香りに手を染めました。日産の新型「フーガ」は、エアコンから緑の香りと香木の香りが交互に間欠的に流れる「フォレストエアコン」を装備し、運転時の快適さを追求しました。
香料タンクが空になっても、補充をすれば快適さが続きます。
こんな「香りマーケティング戦略」の成功事例ですが、食品の世界では昔から香りを十分利用してきました。

土用の昼下がりにうなぎ屋から漂う蒲焼きのにおい。初秋の仕事帰りにコンビニのレジ横で感じる味染みおでんのにおい。
師走のたそがれ時に木枯らしが運んでくる焼き芋のにおい。
あぁ~、食べたくなりますね。

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香りと購買行動についての研究で知られる早稲田大学の恩蔵直人教授によると、香りは五感の中で最も記憶との結びつきが強い刺激らしく、1997年の調査では、特定の香りをかいだことによって何らかの記憶がよみがえった経験のある消費者が69.9%にも及んだそうです。
なるほど、香りの記憶は色褪せないんだと、改めて認識しました。

色褪せなかったことが災いした事例を思い出しました。
それは、さいたま市の鉄道博物館で、「レムフ10000」という昔の貨物車両の展示で、往時、水産物を運んでいた頃の魚臭さや床の油のにおいを香料で再現したら大不評だったということ。。
まぁ、そうでしょうね。

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主婦目線と現場感覚

2010年10月11日 | うんちく・小ネタ

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日本商工会議所が発行する月刊誌に、「光る女性の視点」という特集記事があり、主婦目線で成功した5つの商品やサービス事例が紹介されていました。その内の2つが普段よく利用するものでした。

まず、地下鉄駅構内などで目にする「のりかえ便利マップ」。乗り換え時の移動距離が最短で済むよう、便利マップで乗るべき車両番号を確認します。これは、よく見かける光景です。
このマップを開発したのは、株式会社ナビット社長の福井泰代さん。
専業主婦時代にベビーカーの長男と地下鉄に乗った際、エスカレーターやエレベーターの場所がわからず苦労したことがきっかけで、マップづくりを開始。5ヶ月かけて都内256駅の調査を完了させ、2年後にマップが東京メトロに採用されて、株式会社ナビットを立ち上げたそうです。

現在、同社はスーパーの特売チラシ検索サイト「毎日特売」や、学習塾案内の「e-juku-walker」など幅広いサービスを提供しています。

主婦目線の教訓その1…「嫌だなと思ったら、そこにビジネスチャンスがあると思え」。

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                                                                   次に、JR大宮駅構内にある「駅弁屋 旨囲門(うまいもん)」。
競合ひしめく「エキナカ」の中で、1日600~1200個の駅弁を売る繁盛店。

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この店を繁盛店に変えたのは、経営母体である日本レストランエンタプライズ大宮営業所所長の三浦由紀江さん。44歳の時、専業主婦を卒業して初めて仕事をしたのが上野駅構内の駅弁屋。
時給800円のパートながら、主婦目線で気づいたことを実行し、売り上げを伸ばしたそうです。そして9年後、大宮営業所所長に大抜擢されたのです。

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気づいたこととは、自分が売りやすい商品を売る、自分が食べておいしい商品を売る、自分のやりたいように売場を変更する。
あたりまえの感覚を大事にしたそうです。

主婦目線の教訓その2…「学歴、経験、年齢は関係ない。大切なのは、自分で限界をつくらないこと」。

すばらしいお二人ですね。
ひらめきがビジネスとして定着しても、自身が経営者やマネージャーに上り詰めても、決して失うことのない主婦目線と現場感覚。
ヒットの種は現場にあるのだといえそうです。

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印象派誕生の理由

2010年10月04日 | うんちく・小ネタ

                                                               印象派として知られるモネやルノアールは日本でもっとも人気の高い画家です。

印象派の最大の特徴は光の表現。それまでの絵は室内の暗い照明の中で描かれることから、光というより影の部分を強調した、写実本位のものが主流になっていました。

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しかし、技術の進歩により、チューブ入り絵の具が開発され、画家たちは野外に飛び出すことが可能になり、降り注ぐ光のもとでの絵画表現が可能になったのです。

こうした中で1874年、モネ、ルノアール、セザンヌらによって展覧会が開かれました。この展覧会に出品した作品にモネは「印象 日の出」というタイトルをつけました。

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                              「印象 日の出」 

                                                               この絵のタイトルから印象派という呼称が生まれ、後にこの展覧会は「第一回印象派展」と呼ばれるようになるのですが、発表当時は、この絵の評判は散々だったそうです。批評家たちの目には、ぼんやりとした色彩で描かれたこの絵は従来の写実本位の絵から大きく外れていたからで、だから、人前に出すことさえ恥ずかしい失敗作だと決め付けていたようなのです。

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                              モネ                                                            

                                                                   それでも、モネはその後も「ぼんやりとした色彩の絵」を描き続けます。光はさまざまな色を見せてくれるからと、モネは自分の心象に写ったままの光景を描くことへのこだわりを決して捨てようとはしなかったのです。

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                               ルノアール              

                                                                  しばらく時間はかかりましたが、やがて美術界の主流は、光の表現を大切にした印象派を高く評価するようになっていきます。

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                                セザンヌ                                                                   

                                                                     ただし、印象派の誕生の影にチューブ入り絵の具の開発が絡んでいたことを知っている人は少ないでしょうね・・・。

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