あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

「眠むた」

2010年07月26日 | うんちく・小ネタ

118625

暑いこの季節、東北地方では

  青森ねぶた 
  秋田竿燈  
  仙台七夕
  
                                                                   の「東北三大祭り」と呼ばれる大きな祭りが行われます。時期がほぼ同じであること、場所が東北に集中していることからこの三つの祭りをまとめて楽しもうというようなツアーもあるようです。

「東北三大祭り」だから東北に集中するのは当たり前。「夏祭り」だから、夏に集中するのは当たり前といってしまえばそれまでですが、とはいいながら、その期間がこうまで接近しているのは何か意味があるのではないでしょうか。

6112931

                                                              ◇祭りのルーツは「眠り流し」
東北三大祭りの時期が接近しているのは、ただの偶然ではなくてどうやら理由があるようです。その理由はそれぞれの祭りのルーツが実は一つの行事と結びついているからなのです。そのルーツとなった行事とは

  眠り流し(ねむり ながし)

です。真夏はその暑さから身体は疲れます。それなのに夜になっても暑い日は寝苦しく、睡眠が十分にとれないため疲れがとれません。
この為、身体はだるくて一日中何となく眠いということはありませんか?
昔の人はこの真夏の睡魔はやがて悪い病魔を呼び込む元になると考えて恐れ、これを払う行事を行いました。それが「眠り流し」とか「眠た流し」、「寝惚け流し」などと呼ばれるものです。

7654_2 

「眠り流し」行事は東北に限らず、日本各地に残った行事です。
その行事には共通点が多くあります。例えば時期は大体夏のこの時期であり、川に入って泳いだり、合歓木(ネムノキ)や笹、身代わりの人形(ひとがた)などを川に流すなど禊ぎや、お祓いと思われる行動などです。

5678

合歓木を流すのは「ネムノキ」というその名を「眠り」にかけてこれを川に流すことで睡魔を洗い流してしまおうというものでしょう。七夕に願い事を書いた短冊をつけた笹を川に流すのも同種の行事です(中国から入ってきた星祭りの性格も混じっていますけれど)。

ちなみに、合歓木を流す際には同時に豆の葉も同時に流し
 「ネムは流れろ、マメの葉止まれ」
と唱えるそうです。                                                     (所によっていろいろなバリエーションがあるようですが)
合歓木は「ネム」で眠気。                                                  豆は「マメ」でまめに暮らすに掛けたもの。眠気は流れて、豆に暮らせるようにという願いを込めた言葉なのでしょう。

8533_2 

ネブタ祭りの「ネブタ」と呼ばれる大張りボテを引き回して練り歩くことや、竹竿に沢山の提灯をつけて練り歩くことも、明かりや賑やかさで眠気を払うという行事だといわれます。
青森ネブタ、弘前ネプタ等の祭りの名前には「眠むた」という言葉そのものが残っていますね。

東北三大祭りはぞれの祭りの形は大きく違ってもその根底には「眠り流し」という共通の行事がありますから、日付の一致にも意味があると考えられます。単なる偶然ではありませんでした。                   

121814_3   

コメント (156)

月の上で働く男

2010年07月19日 | うんちく・小ネタ

01b

◇史上初の月の上で働く男
記録に残る月の上で働く男第一号は、アポロ11号で降り立ったニール・アームストロング船長です。1969/07/20に月面から彼が地球に送った、

"That's one small step for a man, one giant leap for mankind."
(一人の人間には小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ)

ということばはあまりにも有名です。

    170

                                                                                   ◇月の上で働く男第一号は、「ハンス」だった?
史上に残った最初の月の上で働いた男第一号はアームストロング船長でしたが、実はもっとずっと早くに月面で働くことになった男がいました。その名はハンス。後世のアームストロング船長の名前が栄光につつまれているのに、ずっと早くに月で働いた、いや働き続けたハンスの名前は、知られていません。

ハンスはドイツ生まれの働き者の男だとされています。働き者ですがひどく偏屈であったとも伝えられています。ハンスは来る日も来る日も働きました。それこそ土曜も日曜も関係なく働き続けました。

ある日曜日、いつものように日曜日も関係なく森に入って薪を拾い、山のような薪を背負って家に帰ろうとしている途上でハンスは一人の男に出会いました。背が高く髪も髭も長く伸ばしたその男がハンスに声をかけました。

日曜日なのに、お前は何故働いているのだ?

ハンスは答えました。

日曜に働くのは俺の勝手さ。それが悪いというのなら罰でも何でも当てればいい。

これを聞いた男は顔をしかめてこう言いました。

日曜日は六日間十分に働いた身体を休め次の週に備えるための日だ。頭も休め身体も休め、そして他の疲れた人々を労るための日だ。その日ですらも働きたいというのなら、ほれ、あの月の上にでも行ってずっと働き続けたらいい。

男がこう言って森の奥に去って行くのと、ハンスの足が地面を離れて月へ向かって浮かび上がるのとは同時でした。

そして、月の上で働く男第一号の栄誉に浴した働き者のハンスは、今日も薪を背負ったそのままの姿で働き続けているので、月の黒い模様は薪を背負った男の姿に見えるのでした。
(以上、ドイツの昔話でした)

01_3

日曜日はキリスト教では「仕事を休んでよい日」なのではなくて「仕事をしてはならない日(神のために捧げられた日)」だったのですね。仕事が忙しく日曜日も仕事という方々、もし髪と髭を長く伸ばした男と出会ったときには、

私は仏教徒です

とでも答えないと、月の上まで仕事を持っていかなければならなくなるかも知れませんよ。気を付けましょう・・。

                                                        ◇1969/07/20、日曜日
さて、伝説上の月面で働く男第一号のハンスの可愛そうな話をしたところでふと気になりました。                                                                  アポロ11号が月面に着陸した1969/07/20は日曜日。日曜なのに、「人類にとっては偉大な跳躍だ」なんて言いながら働いていたアームストロング船長とオルドリン飛行士の運命や如何に?

908_2

0123                                当時の合衆国大統領JFケネディとジャクリーン婦人                                                        (執務室でTVの生中継を注視)

                                                                  幸いなことに、月面には髪も髭も長い男は現れず、二人の飛行士は月の軌道上で一人寂しく待っていたマイケル・コリンズ飛行士と共に地球に帰ってきました。良かったですね、ハンスのように永久に月面を歩き回りながら、働かなくて済んだのですから。

アポロ11号の飛行士達の信じる宗教が何教であったのは、私のあずかり知らない話です。

78

07_3 

コメント (148)

『謎が謎を呼ぶ』世界文学の巨人

2010年07月12日 | うんちく・小ネタ

       1_2    
ウイリアム・シェイクスピア
世界文学の巨人としてあまりに有名なイギリスの作家ですが、実は、その生涯には謎が多いのです。
世界文学史上最高の転載とはいったい何者だったのか、実は、これまでにも様々な説が囁かれてきました。                  

   400p_3  

生まれたのは1564年4月23日「頃」なのは確かなようですが、その頃は誕生日を記録する決まりが無かったので、正確な日は判りません。
ただ、亡くなったのが1616年の4月23日なので、生まれた日も同じ日の方が大作家らしいという(ちょっと無理のある)理由で、4月23日が誕生日とされています。
ちなみに、生まれた年と亡くなった年を語呂合わせで覚えるなら、「人殺し(1564)の出てくる芝居をいろいろ(1616)書いたシェイクスピア」。

E7949fe5aeb6_5                                            シェイクスピア生家                                    

生まれた場所は、ストラットフォード・アポン・エイボンという小さな町。
地元の学校(日本の高校みたいなもの)で学んだ後、18歳で年上の女性と結婚していますが、これはその頃でもかなり若い結婚です。
そのあと、ロンドンで劇作家として名前が出てくる1592年まで、どこで何をしていたのかはよくわかっていないようです。

E7949fe5aeb6e381aee38182e3828be794b                           シェイクスピアの生まれ育った町

経歴に謎が多いこともあって、昔からシェイクスピア別人説もささやかれてきました。
シェイクスピアのサインはいくつか残っていますが、すべて綴りが違っています。
自分の名前もちゃんと書けない、大学にも行ってない人物に、こんな素晴らしい教養溢れる作品が書けるものなのかどうか。
本当は別の有名人が書いたのではないか・・というわけです。
大学に行かないと教養がない、創作出来ないというのは失礼な話ですが、ともかく「本当の」作家候補として、シェイクスピアと同じ年に生まれた劇作家クリストファー・マーロウや哲学者フランシス・ベイコンなど多くの名前が挙げられています。
                                309_2

シェイクスピアより先に劇作家として活躍していたマーロウは、シェイクスピアが知られるようになったちょうどその頃、酒場での喧嘩で殺されています。
その殺人事件も謎が多く、「別人説」ではシェイクスピアと入れ替わる為のカモフラージュではないかとも推理されています。
「人殺し」の年に生まれたシェイクスピアに殺人事件が絡むとは面白いですが、さて、その真相は?

      

      1623e3838fe383a0e383ace38383e38388e                                                  

         舞台「ハムレット」案内(1623年版)                                    

     Bochi_2

     Bochi2_2 
        上2枚 ウイリアム・シェイクスピアの墓地
              (英国ホーリー・トリニティ教会)

コメント (150)

「半夏生」の生える頃

2010年07月05日 | うんちく・小ネタ

2001736785
                                                               7/1は半夏生(はんげしょう)。
半夏生は七十二候の一つでありかつ、雑節の一つにも数えられています。
昔は「半夏半作(はんげはんさく)」といい、この日までに田植えを終えられれば、なんとか平年作の半分の収穫は見込めるという田植え終了の時期の目安となっていました。

現在ではこうした実生活での節目としての役割は薄らぎ、そのちょっと不思議な名前から、「そう言えば・・・」と思い出される日になっています。
この日は天から毒気が降り山菜や筍などに宿るため、こうした物をとって食べるのを忌むとか、井戸に毒がしみ込むのを防ぐため蓋をしなければならないといった迷信がありました。
流石に今は信じている人はいないと思いますが、そうした慣習は残っているかも知れませんね。

                                                                ◇「半夏生ず」か「半夏生生ず」か
七十二候の半夏生の名前は元々は「半夏」という植物が生える(生ずる)ということです。半夏はカラスビシャク(烏柄杓)というサトイモの植物のことです。
   
  213632 カラスビシャク

                                                                   さて、本家の「半夏」はこの植物ですが近頃は、半夏生というと「半夏生」という名前の植物が紹介されることが多くなっています。

 23167 半夏生   
                                                                こちらはドクダミの仲間の植物です。この植物は夏の頃花を咲かせるのですが、花が咲く頃になると葉っぱの白化現象ということが起こり、緑色の葉っぱが付け根から半分ほど白くなってしまいます。この白くなったところがまるで白粉を塗ったかのようだということで半分だけ化粧したもの、則ち

  半化粧(ハンゲショウ)

から、この白化現象が起こる時期とその発音との一致で「半夏生」と呼ばれるようになったのだとか。
ちょっと笑い話になりそうな話ではあるのですが、確かにこの「半夏生」の姿を見ればわからないでもないと思えます。

ただし残念なことにこの半分化粧した半夏生ですが、現在ではあまり見かけることがなくなってしまいました。

                                                                ◇半夏生の鯖・蛸・うどん                                             半夏生には、一部の地方では、この日に食べる物があります。                                                                    

                                                             ◇福井県の「半夏生鯖」
福井県では大野市を中心として半夏生には焼き鯖を食べる慣習があるそうです。これを称して「半夏生鯖(はんげしょうさば)」。

鯖といえば、庶民派青魚の代表。昔からよく食べられた魚ですが、料理の本など開くと、食べ頃は主に脂ののる秋とあります。半夏生の時期ではちょっと時季はずれかも知れませんね。

半夏生鯖の由来は、昔この地方を治めた大野藩の殿様が田植えが終わった時期に農民の労をねぎらうと共に、疲れた身体に滋養をつけるためと鯖を食べることを奨励した為だとか。
昔は、食事に魚がつく何ていうことは滅多にないことで、かなりの贅沢。この日ばかりは贅沢してもいいよと言うことなのでしょうか。

また田植え前は酒や魚肉を断って、物忌みするという風習もありましたから、もしかするとこの物忌み明けという区切りの意味もあったのかも・・。

56008790_2 

                                                              ◇京都の「蛸の日」
7/2 は「蛸の日」となっています。これは半夏生の時期には蛸を食べるという慣習があるということから生まれた記念日です。
 
なぜ半夏生に蛸を食べるようになったのかということについては、今のところ由来に関する情報がありません。

                                    56329623_2 

                                                            ◇香川県では「うどんの日」
また、この日は「うどんの日」でもあります。
この日は、香川県生麺事業協同組合がうどんの消費拡大を狙って制定したもの。香川といえば讃岐うどんの本場。うどんの日も納得。ただ、なぜ半夏生に?

これに関しては、もしかしたらですが麦の収穫時期と関係しているかも知れません。麦は半夏生の前あたりに収穫されます。関東などでは麦の収穫を畑の神様に感謝するために収穫した麦から作った団子を供える行事がありましたから、それから類推すると、新麦から作ったうどんを祝いに食べるといったことが行われていたのではと思われます。

5678_2 

                                                                 

                                                                      

  ☆…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆…

  7月7日で、このブログをスタートさせて1周年となりました。
  いつの間にか…という思いと、まだまだという複雑な想いが
  交差しながらも、温かいコメントに支えられた結果としての
  一年であったと、深く感謝しております。

  まだまだ未熟で未完な仕上がりばかりですが、BLOGの
  概念を何かひとつでも超えられるサイトに育てていきたいと
  念じています。どうか末永くご愛読戴けますよう、今後とも
  宜しくお願い致します。

  ☆…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆…

コメント (154)