暑いこの季節、東北地方では
青森ねぶた
秋田竿燈
仙台七夕
の「東北三大祭り」と呼ばれる大きな祭りが行われます。時期がほぼ同じであること、場所が東北に集中していることからこの三つの祭りをまとめて楽しもうというようなツアーもあるようです。
「東北三大祭り」だから東北に集中するのは当たり前。「夏祭り」だから、夏に集中するのは当たり前といってしまえばそれまでですが、とはいいながら、その期間がこうまで接近しているのは何か意味があるのではないでしょうか。
◇祭りのルーツは「眠り流し」
東北三大祭りの時期が接近しているのは、ただの偶然ではなくてどうやら理由があるようです。その理由はそれぞれの祭りのルーツが実は一つの行事と結びついているからなのです。そのルーツとなった行事とは
眠り流し(ねむり ながし)
です。真夏はその暑さから身体は疲れます。それなのに夜になっても暑い日は寝苦しく、睡眠が十分にとれないため疲れがとれません。
この為、身体はだるくて一日中何となく眠いということはありませんか?
昔の人はこの真夏の睡魔はやがて悪い病魔を呼び込む元になると考えて恐れ、これを払う行事を行いました。それが「眠り流し」とか「眠た流し」、「寝惚け流し」などと呼ばれるものです。
「眠り流し」行事は東北に限らず、日本各地に残った行事です。
その行事には共通点が多くあります。例えば時期は大体夏のこの時期であり、川に入って泳いだり、合歓木(ネムノキ)や笹、身代わりの人形(ひとがた)などを川に流すなど禊ぎや、お祓いと思われる行動などです。
合歓木を流すのは「ネムノキ」というその名を「眠り」にかけてこれを川に流すことで睡魔を洗い流してしまおうというものでしょう。七夕に願い事を書いた短冊をつけた笹を川に流すのも同種の行事です(中国から入ってきた星祭りの性格も混じっていますけれど)。
ちなみに、合歓木を流す際には同時に豆の葉も同時に流し
「ネムは流れろ、マメの葉止まれ」
と唱えるそうです。 (所によっていろいろなバリエーションがあるようですが)
合歓木は「ネム」で眠気。 豆は「マメ」でまめに暮らすに掛けたもの。眠気は流れて、豆に暮らせるようにという願いを込めた言葉なのでしょう。
ネブタ祭りの「ネブタ」と呼ばれる大張りボテを引き回して練り歩くことや、竹竿に沢山の提灯をつけて練り歩くことも、明かりや賑やかさで眠気を払うという行事だといわれます。
青森ネブタ、弘前ネプタ等の祭りの名前には「眠むた」という言葉そのものが残っていますね。
東北三大祭りはぞれの祭りの形は大きく違ってもその根底には「眠り流し」という共通の行事がありますから、日付の一致にも意味があると考えられます。単なる偶然ではありませんでした。