あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

シカトしないで

2014年06月21日 | うんちく・小ネタ

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クマやサルなどの野生動物が平野部に出没し、<wbr></wbr>住民や農作物に被害を及ぼすというニュースをよく耳にします。
府・<wbr></wbr>県庁所在地の真ん中に暮らす方々には無縁のネタだろうと思ってい<wbr></wbr>たのですが、先日、<wbr></wbr>知人が夜8時の市内の住宅街でイノシシに遭遇したと話していまし<wbr></wbr>た。
幹線国道の脇道を歩いていると前方から黒い塊が来襲。その瞬間、<wbr></wbr>野良犬に突進され太ももに噛みつかれた幼時の記憶がよみがえり、<wbr></wbr>不覚にもフリーズしてしまったとか。幸いイノシシは目前で直角ターンしてくれて、<wbr></wbr>事なきを得ようですが…。
その翌週、<wbr></wbr>他の知人が近くの幼稚園児のために育てているサツマイモ畑をイノ<wbr></wbr>シシに荒らされたそうです。「大きくなあれ」<wbr></wbr>と目を輝かせながら水やりをしていた園児たちを思うとやるせない、と知人。

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さらに最近、森林学の大家である大学教授が、<wbr></wbr>林業におけるシカ被害の対策委員長を命ぜられたとぼやいていました。「<wbr></wbr>シカのことなど全くわからないから、林学の立場からアドバイスするしかない」<wbr></wbr>と語る教授ですが、ちょっと風貌がムツゴロウ先生に似ているから任命されたのかも知れません…。

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そこで、身近に頻発する野生動物被害を鑑み、<wbr></wbr>現状を勉強することにしました。
まず、野生動物による農作物の被害額は年間200億円。<wbr></wbr>意外なことにトップはシカの80億円。次いでイノシシ、サル、クマ。戦後、<wbr></wbr>シカは絶滅寸前状態で保護政策がとられていたから、<wbr></wbr>戦後の農業はシカがいないという前提で防除対策など皆無。

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なのに、ニホンジカの頭数は261万頭(北海道を除く)で、<wbr></wbr>年間捕獲数27万頭という現状では、<wbr></wbr>2025年に500万頭まで増えてしまう計算です。

よって、捕獲数を60万頭まで増加させる必要があるのです。   ここで重要な点は捕獲したシカを「おいしく食べること」。

欧米では高級食材のシカ肉ですが、日本では不人気。

脂肪分が0.3%と極めて低く(和牛は25.8%)、4.6mgもある鉄分がレバーのような風味を出してしまうのです(和牛の鉄分は2.0mg)。

逆に考えれば低脂肪高鉄分のヘルシー食材なのですから「<wbr></wbr>天然鹿カレー」の販売を開始した「CoCo壱番屋」を見習おうではないですか。

花札の10月札で鹿がそっぽを向いていることから「シカ10」→<wbr></wbr>「シカト」という言葉が生まれたわけですが、<wbr></wbr>我々もシカトしないでシカ肉の利用法を考えねばならないのですね。

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古典落語に学ぶ

2014年06月08日 | うんちく・小ネタ

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まだ落語ビギナーだった頃、寄席で古典落語の人情噺「<wbr></wbr>唐茄子屋政談」を聞いたことがありました。
道楽三昧の若旦那が親族会議の結果勘当となり、<wbr></wbr>食えずに行き倒れそうになっていたところで偶然叔父に出くわします。「<wbr></wbr>仕入れてきた唐茄子を全部売ったら許してやる」と叔父に喝を入れられた若旦那。<wbr></wbr>重い天秤棒にふらふらしながら多くの人の情けを受け、唐茄子は徐々に減っていくのですが…。

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至高の話芸に引き込まれ、<wbr></wbr>江戸落語の世界にどっぷり浸った40分。しかし、恥ずかしながら、最後まで唐茄子が「かぼちゃ」<wbr></wbr>のことだとわからないままでした。

 
ああ、情けない。学がないのは何とも哀しいこと。
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さらに、その翌日の新聞朝刊の記事が追い打ちをかけたのです。<wbr></wbr>その日は8月30日で「蚊の日」。偶然にも「唐茄子屋政談」<wbr></wbr>の中で叔父が若旦那をからかう一節を引用していたのです。
 
「こんなばか、蚊が刺すもんかい。こいつ刺しゃ、<wbr></wbr>蚊がばかンなっちゃう」。
 
落語を知らなければ新聞も読めないというのでしょうか。<wbr></wbr>落語って、インテリの趣味だったんですね。
ならばということで、江戸落語の世界をマスターすべく、<wbr></wbr>当時の生活事情を勉強することにしました。
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唐茄子屋のように天秤棒かついで物を売り歩く職業を「棒手売(<wbr></wbr>ぼてふり)」と呼び、<wbr></wbr>だいたい1日の収入が7000円くらいで月収にして20万円。<wbr></wbr>家族3人暮らしの場合、<wbr></wbr>長屋の家賃が1万6000円で食費が4万6000円。
現代と似たようなものですが、大きく違うのは、<wbr></wbr>薪や炭などの光熱費が9万円もかかっていたこと(炭は貴重品だった)。そして、<wbr></wbr>何と言っても税金と社会保障費の支出がないこと。これは大きい。
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趣味や娯楽の費用は、<wbr></wbr>湯屋が120円で髪結床が480円と安いのです。浮世絵1枚が300円。そば1杯は240円ですが、<wbr></wbr>ゆで卵は1個300円と高い(当時の鶏はあまり卵を産まなかった)。驚きなのは、<wbr></wbr>1か月もかかる江戸と京都の往復がたったの5400円。徒歩だからかもしれません。
そして、歌舞伎観劇は今より高く、桟敷席で5万6000円。<wbr></wbr>一生に一度の道楽だったと言えそうです。ただし、寄席は安くて720円。<wbr></wbr>現在の演芸場は約3000円。
昔も今も落語は庶民の娯楽。<wbr></wbr>かしこまらずに楽しく落語世界にはまろうと思いつつ、かぼちゃの煮物をつつくこの頃です。
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