あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

あぁ現代病

2015年04月26日 | うんちく・小ネタ


以前にテレビ番組で、画期的なアレルギー治療法が紹介されていました。アレルギー疾患は、1960年頃から急増した現代病です。治療法発見のヒントとなったのが、アレルギー患者が一人もいない「アーミッシュ」と呼ばれる集団の村。
米国オハイオ州にあるこの集落では、移民当時の古典的な暮らしを継続していて、幼少期に家畜に触れることでアレルギー症状を回避できているらしいとのこと。



鍵となるのが「Tレグ(制御性T細胞)」と呼ばれる物質で、花粉などの無害な異物を攻撃する、免疫細胞の暴走を抑えるもの。アーミッシュの人たちは、血液中のTレグが都会人より35%も多いというのです。
つまり、家畜と触れ合う暮らしでTレグが増え、アレルギーが発症しないわけなのですが、これは10年前に提唱されていた「衛生仮説」のバージョンアップ版かもしれません。



年上の兄弟がいる者、A型肝炎感染者、ツベルクリン反応陽性者は、アレルギー性鼻炎の発症率が低いそうです。
つまり、大家族で不衛生な環境がいいという衛生仮説。これを物質レベルで検証したのがTレグ救世主説なのだとか。
この流れで、食品アレルギー予防のため離乳食からアレルゲンを排除する手法は間違っていたということになりました。
実際、幼児期に週3回ピーナッツを食べた群の方が、ピーナッツを避けた群より圧倒的にピーナッツアレルギーの発症率が低かったのです。
食べればそれに対応するTレグができるわけです。





様々な学説に振り回されたアレルギー事情・・・。
名誉挽回すべく、さらなる研究が着々と進んでいるようです。そのひとつが「スギ花粉症治療米」。
2020年の発売を目指すスギ花粉症治療米は、花粉の無害なタンパク質をつくりだす遺伝子をイネに導入し、これを食べることで体内のTレグを増やすという仕組みだそうです。
ただし、Tレグは、病原菌と戦う免疫細胞に対しては作用しないそうです。
3000万人といわれる日本の花粉症患者。炊きたてのスギ花粉症治療米が販売される日が待ち遠しいですね。(本来は2010年に販売予定だったそうですが、食品ではなく「医薬品」としての認可になったため、大幅に実用化が遅れることになりました)




先ずは私から

2015年04月12日 | うんちく・小ネタ




かつお節の消費量日本一はダントツで沖縄県で、1世帯あたりの年間購入量1489gは全国平均の約5倍(2012年総務省調べ)。
ラードに隠れてわかりづらいかも知れませんが、沖縄料理はだしが濃く、比較的淡白な南方系の食材をおいしく食べることができるのです。
そして、だしが効いているから塩加減が少なくてすみ、全国平均と比べて2割も少ない塩分摂取量を達成しています。






日本中が沖縄のようにかつお節を消費してくれれば、減塩で全国民が健康になるでしょう。

ではなぜ沖縄はかつお節をたくさん使用するのか。
それは、中国の影響で「食」にこだわる思想が浸透していて、衣食住の中では食が一番という考えを持っているからだそうです。
よって、かつお節に限らず食にかけるお金は惜しまないとか。

中国人曰く、「中国に衣食住という言葉はなく交通を表す『行』を加えた衣食住行だけど、やっぱり食が一番ね」。

約2000年前に書かれた「漢書」にも、「民以食為天(民は食をもって天となす)」という記述があり、食は中国人の生活の根幹をなすのだとのこと。
そして、中国人は「食指が動く」という慣用句の語源を教えてくれました。




中国の春秋時代(紀元前770年~紀元前403年)、鄭の君主霊公のもとに楚から大きなスッポンが贈られたことがあったそうです。
その時、謁見中だった公子の人差し指がぴくぴくと動き、「こういう時は必ず珍しいごちそうにありつける」とつぶやいたという故事なのです。


その後、スッポン料理に関するトラブルが原因で、公子は主君の霊公を襲って殺してしまいます。スッポンごときで一国の君主が命を落とすのです。
まさに、食にこだわる+感情の沸点が低いという国民性を垣間見る故事ではないでしょうか。



とにかく、沖縄以外でもだしにこだわり、もっとかつお節を消費するべきなのです。
そのためには、「先ず隗より始めよ」。

中国の戦国時代(紀元前403年~紀元前221年)、「どうすれば賢者を招くことができるか」と燕の昭王に問われた郭隗が、

「まず私のような凡人を優遇することから始めてください。そうすれば優秀な人材が集まります」

と……。

あぁ、先ず私がだしを取ることから始めなくてはいけませんね。