あんなこと こんなこと 京からの独り言

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江戸・エコ

2016年03月27日 | うんちく・小ネタ



江戸時代の循環型社会をお手本にする取り組みが各方面で行われていますが、個人的にはエコ・クッキング推進委員会の「江戸からエコへ」という提案が最も腑に落ちる内容ではないかと思っています。

提案は、「買い物」「料理」「片づけ」の3要素。



買い物
旬の食材を必要な分だけ簡易包装で買う。旬の食材というと贅沢感が漂いますが、実際は自然の流れに乗ったエコ行動。
例えば、夏に採れる旬のトマト1kgを作るのに必要なエネルギーは1200kcalですが、温室トマトはその10倍の12000kcal。
また、魚の養殖も旬を無視した行為と考えれば、マグロ1kgを育てるのに必要な10kgのエサも反エコかも。
レジ袋なんてのも昔は無かったわけで、ネギがはみ出す手提げかごが昭和の買い物風景でした。





料理
無駄なく手際よく正しい火加減。薪や木炭を燃料にしてかまどや七輪で調理していた江戸時代、無駄な加熱や手間のかかる料理など論外。もちろん、食材も無駄なく端まで使うのです。
そして、エコ・クッキングに協賛している大阪ガスは、炎のはみ出し禁止を提案しています。火加減が強すぎて、やかんや鍋からはみ出した炎は加熱効率上無駄になるらしいのです。ガスの売り上げを伸ばしたい大阪ガスのコメントだからすごいですね。






片づけ
手順を考え少ない水で。水が貴重だった江戸時代、食器は桶に汲み取った水で汚れの少ない順に洗ったそうです。
もちろん、米のとぎ汁や野菜のゆで汁も大事な洗浄水。そういえば、実家でも食器は洗いおけに漬けていたっけ。
何も考えずに流しっぱなしの水道水で食器を洗う今日。大さじ一杯のマヨネーズを希釈するには風呂13杯分の水が必要らしいのですから、洗浄前のふき取りが大事なんですね。




買い物、料理、片づけ。これから時代劇を見る際の注目点。映画「たそがれ清兵衛」で、主人公清兵衛(真田広之)がご飯を食べ終える場面にそれはありました。茶碗に付いた米粒を囲炉裏の湯で流し込んだ後、たくあんで茶碗の表面をきれいにしてそれをポリポリ食べるのです。
茶碗は水洗いなどせず、そのまま食器入れに片づけました。

細部にこだわる映画は、それだけで楽しいものなのです。



木材持久力

2016年03月13日 | うんちく・小ネタ



かつお節を製造する際の重要な工程の一つに「焙乾(ばいかん)」という工程があります。
これは、煮たカツオを煙でいぶす作業で「燻製」と言えなくもないのですが、一般的な燻製と異なるのは香り付けよりも乾燥を主目的にしていることです。
 
煮た直後のカツオは水分が70%前後で、これを10日間かけて20%にまで乾燥させます。
よって、強力な火力が必要であり、毎日大量の薪を焚き続けなければならないのです。



ちなみに、かつお節製造に適した薪は、サクラ、カシ、ナラ、ブナ、クヌギなどの広葉樹。
その薪の量は、出来上がりのかつお節とほぼ同量。つまり、年間2000トンのかつお節を生産する工場は、年間2000トンの薪が必要になるわけです。しかも、伐採後2、3カ月は薪自身を乾燥しなければ使い物にならないため、かつお節工場にとっては薪置き場の確保も悩みの種となっています。

そんなかつお節工場、見学時に最初に目に飛び込んでくるのは山積みされた大量の薪。
それを見た環境保護にうるさい人が、必ず口にする常套句は・・・



「こんなに木を伐採して…、植林してるんですか?」

当然、植林する余裕などなく伐採するのみなのですが、日本の広葉樹林の約4割が放置林であり、放置するくらいなら植林など気にせず伐採した方がいいという研究者も多いとか。
放置するとどうなるか。すぐにうっそうと葉が茂り、光の差し込まない暗闇となり、暗闇だから下草が生えず、下草が生えないから地盤がゆるくなり土砂崩れの危険性が増すことに。



外の明るさと比べた際の相対照度が40%から10%に下がると、森が保持できる降水量が毎時250ミリから100ミリに減少するらしいのです。
最近頻発する土砂災害の一因がここにあるのではないでしょうか。

農林水産省は林業再生に向け、平成21年12月に「森林・林業再生プラン」を策定し、現在28.6%しかない木材自給率を50%まで引き上げようとしています。ここでの木材は住宅建材向けなどの針葉樹で、広葉樹林同様、放置林問題は深刻とのこと。

今度、何かの時に、植林の話が出たら、自信をもってこう答えましょう。

「知ってましたか? かつお節製造における木材自給率は100%です!」