あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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真逆の方法から誕生したもの

2016年02月28日 | うんちく・小ネタ



私の学生時代、ガチガチの土グラウンドで体育の授業や部活をやっていたので、すり傷は日常茶飯事でした。
運動後に水道水で土を洗い流し、オキシドール(過酸化水素水)で殺菌してガーゼを当てるという、今では全否定されている手法で当たり前のように手当てをしていたことを覚えています。



オキシドールを使うと細菌と一緒に表面細胞も死滅してしまい、傷口がより傷んでしまいます。
またガーゼは傷を治す体液を吸い取って乾燥させるから、治りも遅くなるのです。

要するに、傷口をウエットにした方が早く治るわけで、そのためにラップで傷口を覆う「閉鎖療法」とか「湿潤療法」と呼ばれる民間療法が浸透してきました。もちろん、湿疹ができやすいというラップの欠点には注意しなければいけませんが。

それにしても、これほどまでに真逆の治療が正統派になるとは、うさぎ飛びの廃止と同じくらいの驚きです。
治癒の目安だったかさぶたが、傷跡を残す悪のしるしとされてしまうなんて・・・。



さらに2015年、最先端の傷治療法が臨床試験を終えました。ハーバード大学のエバンズ博士は、傷口治療で皮膚移植をした際、血管が移植組織に十分な酸素を届けていないことで治癒が遅れることを発見。
そこで、酸素濃度を色で表示する包帯を作ったのです。酸素が豊富だと包帯は緑に見え、酸素が欠乏している部分は黄色からオレンジ、さらには赤く光って警告するというすぐれもの。
看護師が包帯の赤い警告を見たら医師に連絡し、問題部位の血流や酸素濃度を改善する処置を施すことが出来ます。これはすごいですね。

ウルトラマンのカラータイマーのごときハイテク包帯。
頭に巻いたら、脳の酸欠状態も表示してくれるでしょうか。ついでに心の酸欠なんかもモニターできて、赤い警告を見た人がやさしくケアしてくれる…。

いろいろ妄想してしまうハイテク包帯の出現なのです。


生の声の大事さ

2016年02月14日 | うんちく・小ネタ



海外勤務で子供をバイリンガルにするには小学4年生から6年生の3年間の滞在が理想だとか。
これより早いと日本語があやしくなり、遅いと外国語が定着しないそうです。
また、中学から日本の学校に行くことで大学受験にも何とか間に合うとのこと。



この俗説に科学的根拠があるかどうかは不明ですが、人間の言語獲得に関する研究は非常に難しいといわれています。
1970年、ロサンゼルス市の児童福祉当局は、生まれて以降ほぼ完全に社会から隔離されて育った「ジーニー」という全くしゃべれない14歳の少女を保護しました。ジーニーは学習によって語彙をすぐに習得したものの文法はうまく獲得できず、言語学習に関する限界年齢を絞るのに役立ったそうです。もちろん、こうした事例研究は故意にはできません。



そこで実験動物の出番なのですが、テルアビブ大学の研究グループは「エジプトルーセットオオコウモリ」に着目したそうです。
親から発声を学ぶこのコウモリは人間の子供と同様、熟達していないうちは「片言」のコウモリ語しかしゃべれないらしいのです。
まず、5匹のコウモリの子をそれぞれの母親とともに群れから隔離して育て、成体どうしの会話を聞かせないように、離乳後、これらの子コウモリを1ヵ所に集め、スピーカーを通じて成体コウモリのおしゃべりを聞かせたとか。
一方、別のコウモリ5匹は群れの中で育て、生まれた時からコウモリどうしの生会話を聞かせました。



結果、群れ育ちのコウモリは初期の片言が最終的に成体の会話に変わったそうですが、隔離されて育ったコウモリは成長してからも未熟な発声のままだったそうです。
これは、以前米国で行われた中国語会話のビデオ教材を使った幼児教育実験と同じ現象です。ビデオ教材では全く中国語に反応を示さなかった乳幼児が、全く同じ登場人物が全く同じレッスンを生で実施することで、即座に反応したというもの。

やはり生声が必要なんですね。

ところで、哺乳類であるコウモリを実験に使うのは当を得ていると思います。コウモリのコミュニケーションは、自分のステータスを示す鳥の歌よりも人間の言語に近いのです。
黄金バットやバットマンなど、コウモリの擬人化にはちゃんとした根拠があった・・・ようですね。




歳を重ねると

2016年02月01日 | うんちく・小ネタ



京都大学の伏木先生によると、「脂」「砂糖」「だし」の組み合わせには病みつきになるおいしさがあるらしいのです。
脂×砂糖=ケーキ、脂×だし=ラーメン、砂糖×だし=すき焼き等々。
なるほど好物ばかり。そこで脂や砂糖には生活習慣病のリスクがあるため食品メーカーは低脂肪や低糖分メニューを提案して売り上げにつなげているわけですね。



ところが、そんな商品が吹っ飛ぶ「脂肪分の多い食事を続けても太らない」という東京農工大木村准教授らの研究成果が報告されました。
体内のたんぱく質「ニューデシン」が太りやすさに関わる物質であることを突き止め、遺伝子操作でニューデシンを作れないようにしたマウスを実験に使ったそうです。




その結果、高脂肪食を16週間食べた通常マウスの体重が41gだったのに対し、ニューデシンのないマウスは体重32g。脂肪組織で脂肪の分解と燃焼が激しく起こり、体温も0.5℃ほど高かったとか。
即人間に当てはまるわけではありませんが、何らかの応用はできそうです。

まあ、多くの人は齢を重ねると、脂の多いものは自然と食べられなくなり、脂の摂り過ぎなど心配ご無用の感はあるのですが…。




たとえば40歳のある日、「日清焼そばUFO」が胸やけがして食べられなくなったとか・・・。
1食558キロカロリー。
次に50歳で「マックフライポテトMサイズ」を断念。こちらは1食454キロカロリー。
このままいくと、60歳で「ミスタードーナツオールドファッション」をあきらめることに?!
1食328キロカロリー。

売れているコンビニの「おかかおにぎり」が1個180キロカロリーであることを考えると、UFOもポテトもオーバーカロリーであるには違いありません。ただ、病みつきになる脂の味も捨てがたいものです。

四国地方の方言で脂っこい味のことを「むつこい」と言うようですが、山形弁だと「むつこい」は「かわいそう」という意味になるそうです。

歳を重ねるということは、「むつこい味が食べられなくなった。あぁ、かわいそうなこと」・・・なのでしょうか。