あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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泣くこと

2017年01月29日 | うんちく・小ネタ



スポーツの感動シーンに涙はつきものですが、リオ五輪での卓球の福原愛選手の悔し涙は特に印象深いものがありました。

「今日の負けの原因はすべて私にあります」

団体準決勝でドイツに敗れた後の福原選手のコメントは、サラリーマンとしては言いたくても絶対言えないフレーズでした。
「売上不振の原因はすべて私にあります」なんて言おうものなら、その瞬間からすべての敗戦処理を引き受けねばならないのです。




悔し涙の塩分は嬉し涙より高いらしいので、福原選手はしょっぱい思いでこのコメントを口にしたことでしょう。
ところで、涙は身体から出る他の体液に比べて研究がかなり遅れています。
それは新鮮な涙を大量に集めるのが大変だからだとか。
よって、涙を流すという人間の基本的な行為の目的については謎だらけなのです。
多くの動物種が共有する原始的なコミュニケーション手段なのか、社会的絆を築くのに必要な人間特有の行為なのか、はたまたマイナスの感情をリセットするカタルシスなのか。




この疑問を解決すべく、イスラエルの神経生物学者ソベル博士は、涙を急速凍結する方法を完成させ、世界の研究者が利用できる「涙バンク」の設立に取り組んでいます。
ソベル博士は、女性の涙には近くにいる男性のテストステロン値を下げ、興奮を鎮めるフェロモンが含まれていることを発見した涙のスペシャリストです。
さらに研究を発展させ、涙は気分や食欲に影響するのか、男女の涙に違いはあるか、タマネギを切った時に出る涙は感情的な涙と成分が異なるか等、わくわくするテーマで人が泣く理由を解明しようとしています。




近未来、眼鏡に組み込まれた涙検出器が成分を検知し、その時の感情やメッセージがフレーム上に表示されるようになるかも知れません。

いや、そんなまどろっこしいやり方ではコミュニケーションにならないか・・・。
とにかく、性別、年齢別で大量の涙が必要になるわけで、ソベル博士は号泣する人を捜し求めていると聞きました。
涙もろい私でよければ、いつでも協力・・しますよ。




昭和の正月

2017年01月15日 | うんちく・小ネタ


本来、日本のお正月は「年神様」を迎える儀式として存在しました。
家族を厄災から守ってくれた年神様を家に迎え、一年間無事に過ごせたことを感謝しつつ、新年の幸福祈願を込めてもてなします。

だから、我が家の入口がよくわかるように門松を立て、年神様と共におせち料理を食べるために両方の先端が細くなった「両口箸」を準備します。



その時、年神様は「年もち」を配り、この餅をもらった瞬間に人間は1つ年齢を重ねます。だから、昔は正月を境に年齢が変わっていたのです。

年もちの名残がお年玉ですが、大人になると年を食うばかりでお年玉がもらえないのは不条理ですねぇ。

このような感謝と祈りに満ちた厳粛な神事が起源なわけですから、浮かれたカウントダウンと騒々しい初詣はあるべき姿とは程遠いと思うのです。




静かだった昭和の正月。
一切の活動を停止した町の凛と張りつめた空気。親戚一同が集まった部屋に漂う練炭の匂い。すごろくに飽きて飛び出した広場にこだまするベーゴマの音。

しびれるほどに懐かしい頃です。

そんな昭和の正月のかけらでも体験できるかと期待し、東京のお台場の「台場一丁目商店街」を覗いた知人がいました。

昭和30年代の下町を再現したこの商店街、スバル360が止まっていたり、赤い屋根の電話ボックスがあったり、ホーローの看板があったりとディテールに抜かりはない上に、ベーゴマ大会やけん玉大会などの演出も完璧だったそうです。



でも、、期待していたものは何ひとつなかったとか。空気、匂い、音、全て違う。

年間来場者数250万人で売上20億円を目論むわけだから当然のように人であふれ、そこには騒々しい「今」しかなかったとのこと。

これでは年神様も逃げ出してしまいそうです。




ところが、意外な場所に昭和の正月はあったのです。それは工業試験場。さすがは公的施設。仕事始めの第1週目は活動停止状態で空気は凛。

閑散とした建物の中にはひねもす暖を取るストーブの匂いが漂い、ときおりフラスコの触れあう音が人気のない廊下に響く。

あぁ、この雰囲気。

私たちの税金で作ったレトロ正月のテーマパーク(?!)。


年神様のご加護があらんことを。



迎春

2017年01月01日 | うんちく・小ネタ