あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

コーラ療法

2012年02月20日 | うんちく・小ネタ

       2_2

コーラを飲むと歯が溶ける。このフレーズ、誰もが一度は耳にしたことがあると思います。
歯や骨はリン酸カルシウムでできており、確かにリン酸カルシウムは酸に溶けます。しかし、人間の体はそんなに「やわ」ではありません。コーラや炭酸飲料ごときの酸成分で歯が溶けることはないのです。 コーラメーカーにとっては迷惑な迷信だったと言えます。

1_3   

ところが、医療の現場でコーラを使用した迷信のような治療効果が報告されていることを日経メディカルで知りました。コーラが胃石を軟化したというのです。
胃石は胃の内部にできる石のような固まりで、食物残渣や毛髪などが集積してできるとされています。大きな胃石になると腸管で詰まって腸閉塞を引き起こすこともあり、硬くて粉砕できない時は外科手術も覚悟しなければならないものです。
そこでコーラ・・・なのです。

3

神戸百年記念病院の前川医師は、4センチ大の硬い胃石を生じた80歳代の患者にコーラでの治療を試みています(患者が糖尿病だったこともあり、実際はダイエットペプシを使用)。
就寝前と翌朝に計2リットルを飲ませ、昼に内視鏡で観察すると、果たして胃石は軟化。さらに2リットルを追加で飲ませたところ、翌朝内視鏡下で細かく破砕できたのだそうです。
胃石の成分は98%がタンニンでした。

 4

不思議なことに、コーラの前に試した同量の炭酸水では胃石の軟化が見られなかったそうですから、とすると、コーラ特有の成分が効いたということになります。
前川医師は「機会があれば炭酸の抜けたコーラで試したい」と語っていました。
それで効いたら主役は炭酸ではなく、紛れもなくコーラということになりますね。

前川医師は、海外の論文でこのコーラ療法を見つけたらしのですが、最初に試した医師は幼き日の「あの迷信」を思い出してコーラを手に取ったのでしょうか。
きっかけは何でもいい。
迷信から医療が生まれることもあるのだと思いました。

Photo_2


楽なアプローチ

2012年02月05日 | うんちく・小ネタ

 4_4   

渡辺貞夫氏の京都桃山ライオンズクラブ結成50周年記念チャリティ・コンサート「風の巡礼」のサックスをTV放送で観ました。
ピアノとドラムとベースは五束六文 。オーケストラは同志社大学ザ・サード・ハード・オーケストラの若手でしたが、御年78歳のナベサダさんのリードで、テクニックの凄さを感じさせない、肩の力が抜けた良い演奏でした。

ナベサダさんは、よく「日本ジャズ界のリーダー」と言われ、「本場で通用する数少ない日本人」とされていますが、実際にライブを見ると「出身地や国籍なんて音には全然関係ない」という当たり前のことを痛感します。

  5_2 

出所や来歴にこだわるのは、日本人の長所か短所なのか、・・たぶん両方だと思っています。

万世一系を象徴として崇め、心の拠り所とする伝統は長所。先代の偉業にすがり、無能な二世議員が意味なく跋扈する政治は短所。
地域産品を育成し、まじめに取り組む1次産業が評価される市場は長所。過度のブランド信仰で、産地偽装を誘発する気質は短所。

毎年、食品の産地偽装で騒がれています。そんな産地偽装を化学の力で見抜く研究が進められているのです。

    1

首都大学東京の伊永先生らは、農水産物中の炭素・窒素・酸素の安定同位体を調べ、産地を特定することに成功したそうです。
DNA鑑定では判別できない同一種でも、産地が異なれば安定同位体の存在比が変わってくるのです。
安定同位体とは、同じ原子番号でありながら質量数が異なる兄弟のような原子。例えば、炭素の質量数は12ですが、同位体炭素の質量数は13。 同じく窒素は14と15、酸素は16と18。これらの存在比を指紋のように捉え、産地を特定するというのです。

 3

ウナギの国産、中国産、台湾産を比較すると、餌と飼育方法の違い(路地/ビニールハウス)で窒素の同位対比が、飼育地の緯度の違いで酸素の同位対比が変わるらしいとか。これらをデータベース化することで産地の特定ができるのだそうです。

    _11_3 

すばらしい研究成果ですが、産地偽装の摘発という世俗的で泥臭い世界に最先端の化学を応用するのは、なんだか肩の力が入りすぎているような気もします。

ナベサダさんのように、もっと楽にアプローチしたいと思う今日この頃です。

2