あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

かつおぶしのおかげ

2012年07月22日 | うんちく・小ネタ

     1       

スリランカ料理には定番の「ポル・サンボール」というものがあります。この料理は細かく削った椰子の果肉に唐辛子とレモン汁を加えて練り合わせ、「ウンバラカラ」と呼ばれるモルディブ製かつお節をブレンドするもので、伝統的なご飯のお供だそうです。
実は、このモルディブの「ウンバラカラ」こそが日本のかつお節のルーツであり、現地では14世紀頃から製造していたとされています。
ただ、かつお節製造に欠かせない燻材(薪)が少ないモルディブのかつお節は、ほとんど燻さない「なまり節」のようなスタイルです。

     _11_4 

これが16~17世紀頃日本に伝わり、豊かな森のおかげでしっかりと燻す日本製のかつお節が完成したことになります。
ちなみに日本でかつお節を燻す際に使用する薪は、サクラ、カシ、ナラ、クヌギ、ブナ、シイ等の広葉樹で、出来上がりのかつお節と等量の薪が必要となります。日本国内のかつお節生産量が年間約4万トンですから、薪も4万トン使用するということ。

   2 

この情報を聞きつけた環境活動家が、世論に噛みついてきました。

「そんなに広葉樹を伐採して、環境に負荷はかからないのですか?植林してますか?」

このご意見に、某国立大学森林学研究室のE教授は心強い回答をしました。

                                                                   「それは逆です。適度な伐採が広葉樹林を守るのです」
                                                                   E教授によると、日本の広葉樹林の約4割が放置林。放置されることで葉が茂り、光の差し込まない暗闇となるとか。暗闇なので下草が生えず、下草が生えないから地盤がゆるくなり、土砂災害の危険性が増すというのです。

   3_2 

外の明るさと比べた際の相対照度が40%から10%に下がると、森が保持できる降水量が毎時250ミリから100ミリに減少するらしいのです。

燻材としての広葉樹の伐採が、森にとって正しい間伐かどうかは精査が必要ですが、豊かな森とかつお節づくりが繋がるのですから、さすが伝統食品の懐は深いといえそうですね。
そして、食品とは全く関係のない森林学の大家のご意見を知るきっかけになったことも、かつお節のおかげだと感謝した次第です。

    1

コメント (124)

天気予報

2012年07月08日 | うんちく・小ネタ

1
  
気象台の天気予報サイトを頻繁に眺めるこの頃です。

1883年に日本で初めて天気図が制作されたそうです。
明治維新によって西洋化される前から、日本では気象観測が行われていました。江戸時代には天文方という役職があり、天文台で気温や気圧の観測を行っていたそうです。

     3       

そして明治に入ってから本格的な気象事業がスタート。1872年、北海道開拓のために、日本で最初の測候所が函館に開設されます。1875年には、イギリスから専門家を招いて、東京・赤坂に東京気象台が設置されたとのこと。

 
 2

               東京気象台

                                                                  その後、各地に次々と測候所が設けられ、日本の気象観測の環境が次第に整ってきます。1882年2月に船の安全をはかるための暴風予想が始まり、その1年後、ついに天気図が作られ、今の基礎となる天気予報が開始となります。
 
    4_2 

             日本初の天気図

                                                                   ただ、当時気象台から発表された天気予報は内容が難しかったらしく、なじめない人も多かったそうです。そこで日刊新聞『時事新報』は1893年から、着物姿の女性のイラストを使った天気予報(傘を差した姿なら雨とか)を毎日掲載したところ、わかりやすいと評判になったとか。いつの時代もお役所の発行する文章は、難解なようですね。

   Jijisinbun

コメント (150)