あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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夕暮れに思ふこと

2015年05月24日 | うんちく・小ネタ




大学生の就職活動事情において、「一流企業に就職するための6ヵ条」なるものがあります。

「地頭のよさ」
「要領のよさ」
「継続性」
「体力」
「ストレス耐性」
「人に嫌われない、嫌わない」


の6つです。

このうち、前半の3つが「難関校卒業生フリーパス」で、後半3つが「体育会系フリーパス」とされているそうです。
よって、六大学野球や箱根駅伝で名を馳せた俊英は、6カ条完全クリアの就活王となるのです。
まさに、体育会系のメリットは「根性」で仕事をこなす素養のギャランティであり、
頑なに上下関係を尊ぶ姿勢は組織人として言うことなし。
「頭脳」は後からついてくるというわけですね。



ところが、運動に関する最近の研究では、体育会系にはその「頭脳」も備わっているという成果が出始めているそうです。
ルイジアナ州立大学のチャーチ博士らの報告によると、運動が知能(特に注意力や計画立案力)を求められる仕事を遂行する力を高めることがわかってきたとか。
心臓病、脳卒中、糖尿病やがんのリスクを低減することは想像できますが、運動が学習能力を高めるとは驚きです。



確かに、長時間の運動によって気分が良くなる「ランナーズハイ」は脳内に大量に放出されるエンドルフィンが原因であり、運動によって脳内で集中力や思考力を高める化学変化が起こっている可能性もあります。
この仮説通り、60代と70代の被験者120人を対象とした実験で、運動により「海馬」という脳領域のサイズが大きくなり、ニューロンの成長が促進されることがわかったのだそうです。



もはや運動しない理由はありません。
庭いじりや洗車などのゆっくりした活動を1日に11分以上行うことで、40歳以降の平均余命が1.8年長くなるという米国のデータもあり、運動の効能は計り知れないのです。

ただ、たまに激しい運動をしても1日に6時間以上座っていると逆効果になる可能性があるらしく、デスクワーク人にとっては悩ましい限り…。

とりあえず、洗車の頻度を上げようと思った夕暮れでした。


昭和の野菜感

2015年05月10日 | うんちく・小ネタ



帝塚山大学の稲熊博士は、日本人には野菜に関するこだわりが3つあると論文誌上で語っています。それは、「色で分類する」「葉、果、茎、根それぞれの部位を利用する」「季節で食す」の3つだとか。

●色で分類
緑黄色野菜、淡色野菜という分類は日本独自であり、色で栄養素の摂取を想起させる食育は理にかなっている。米国でも、食事バランスガイドで色分類を取り入れ始めた。
 

●葉、果、茎、根
大地の恵みに感謝し、すべての部位を一番おいしい状態で利用するのは日本人の得意技。

●季節で食す
春の山菜、夏のトマト、秋ナスに冬大根。こんなぜいたくは日本にいればこそ。



ここにもうひとつ加えてほしいのが「昭和の食卓」です。
茹でたジャガイモだけを家族で囲んだ夕食、出回り始めたマヨネーズに馴染めずいつも通り醤油をかけて食べた千切りキャベツ、焼きナスの皮をあちちと剥く母の後ろ姿。
そして、祖父と食べたトマト。



それは今から大昔の小学校時代の夏休み、親戚の田舎に遊びに行ったとある昼下がり。

祖父は私を流し台に誘いました。「トマトを食べないか」二つ返事で冷蔵庫を目指した私の腕を掴み、祖父は「トマトはここにある」と茶箪笥の引き戸を開けたのです。
闇の中に真っ赤に熟したトマトが座っていました。生ぬるいトマトは暗いジントギ流し台の色とともに記憶に焼きつきました。

「どうして冷蔵庫に入れないの?」

「冷蔵庫に入れるとお嫁さんに使われちゃうんだ。じいちゃんのトマトって書くわけにはいかないだろ」

祖父は少し顔を曇らせてこう言いました。



聞くんじゃなかったと後悔。そのくらい10歳程度の小僧にだってわかります。
男二人のデザートタイム。思い出すに哀しい味。茶箪笥で追熟されたあの日のトマトはイタリア産のように旨く、チリ産のように甘く、タイ産のように酸っぱかったのです。

祖父の全人生を詰め込んだ味…と言えたかも知れません。
飽食ニッポンでこんなセンチメンタルジャーニーは笑われるかもしれませんが、それが私達の時代であり私達の野菜感なのです。

切ない食卓は、時に健康成分より胸にしみるのです。