「民放時代劇冬の時代」というコラムを読みました。マンネリ化や制作費の高さが災いして、現在民放で放映中のレギュラー時代劇が「水戸黄門」のみになってしまったとか。
コラム内に、全盛期とされる1976年5月の民放時代劇一覧表が掲載されていましたが、「子連れ狼」「銭形平次」「必殺仕業人」など、昭和の茶の間で楽しんでいたタイトルが合計14本も並んでいました(再放送含む)。
『てなもんや三度笠』
1962年5月6日~1968年3月31日放映
この激減傾向を歓迎する知人がいました。 日本在住25年のインドネシア人、H氏です。日本文化に精通し、日本語も完璧なH氏ですが、時代劇は言葉も時代背景も全く理解できないらしいのです。
「拙者、それがし、おぬし等の人称代名詞は日本語学校で習っていません」
「隠密、参勤交代、尊皇攘夷。単語の意味が分かりません」
なるほど、日本人なら小学生でもわかる単語のため、特に劇中の解説なく話が進行してしまいますが、外国人にとって、時代劇は私たちが思っている以上に、ハードルの高い文化なのかもしれません。
かく言う私も、昔の映画を見ていて時代背景が理解しづらいシーンに出くわすことがあります。
1963年公開の「伊豆の踊子」を見て驚きました。学生服姿の高橋英樹が演じる一高生が、踊り子一座に合流し、上げ膳据え膳勝手気ままな温泉旅行の超VIP状態だったのです。
一高生のブランドはすごかったようです。ヒロイン吉永小百合さんが「一高生と踊り子じゃ釣り合わない」と語るシーンが印象的でした。
川端康成が「伊豆の踊子」を発表した1926年当時のエリートコースは、尋常小学校6年→旧制中学校5年→旧制高校3年→旧制大学4年となります(ほとんどが尋常小学校6年→高等小学校2年で就職)。一高は最難関の旧制高校で、現在の東大教養部。後に東京帝大と合体して現在の東大となっています。
「伊豆の踊子」(主演:吉永小百合)ロケを見学する川端康成
旧学制には、高等小学校、高等女学校、実業高校、大学予科、高等師範学校などのオプションがあり、さらに戦時下では陸軍士官学校や海軍兵学校がコースに加わります。ここまで整理しないまでも、知っていることだと思っていましたが、H氏に説明を求められた時に、絶対的な自信を持てたかどうか・・。
ちょっと前の歴史を勉強して、一高生がちやほやされる理由が明確になりました。
H氏ではありませんが、教科書で習わない時代は、なかなかストーリーに入り込めないものですね。