あんなこと こんなこと 京からの独り言

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昔を知り今を知る

2020年05月14日 | うんちく・小ネタ


一昨年、神戸・住吉にスーパー銭湯「うはらの湯」がオープンしました。
はて、「うはら」とは何か。
ネットで調べてみると、どうやら現在の芦屋市~神戸市灘区辺りを古い時代には
「菟原(うはら)」と呼んでいたと判りました。

阪神間の地名は、西暦930年代に記された「和名抄」に記されています。
摂津国の各郡の記載があり、武庫(むこ)・八部(やべ)の間に「兎原(うはら)」が
ありました。万葉かなで「宇波良」と添え書きされていたようです。



明治時代まで、その地は、「菟原郡」と呼ばれ、やがて武庫郡と合併して、
その名が消えたのです。
このような地名の歴史を知らなくても暮らしてはいけますが、知っていると何と
素敵なことでしょう。一千年前、その地の野原にはたくさんのウサギが駆け廻って
いたと、そんな想像に馳せることが出来ます。



「関西と近畿」は、ほぼ同じエリアを指しますが、最近になって「呼称を”関西”に統一しよう」
という動きがあります。
その最大の理由は、「”近畿”がKINKY(風変わり、変態)の語感に似ているから」ということ。
近畿大学の英語表記は、ここに来て「KINKI UNIVERSITY」から「KINDAIUNIVERSITY」に
変わっています。


話は大きく変わります。

「ヨーロッパとは何か?」を語る中で、ローマ文化は実用(万民法、土木)、
ギリシャ文化は観念(哲学)だと言われています。
古代ギリシャでは、小さなポリス間の争いが絶えなかったのですが、戦争中であっても
「聖なる休戦」としてオリンピア競技祭が実施されていました。
19世紀末、フランスのクーベルタン男爵がそれに倣って始めた近代オリンピックの精神は、
単なる「スポーツの祭典」ではなく、精神の発達を願う文化プログラムであったようです。



しかし、今や「商業主義」に…。


古代ギリシャは都市国家の集合体であり、それを束ねる者はいませんでした。
そんな中、紀元前6世紀、強力な軍隊を持つペルシャ帝国が侵攻してきます。
3度に亘る戦争(マラトンの戦いなど)、そして再度ポリス間の内戦を経た紀元前4世紀、
ギリシャの北部マケドニアにアレキサンドロスが登場。
この若き王は逆に古代オリエント世界へ攻め込み大勢力を築くのですが、32才で病死し、
一代で帝国は消滅してしまいます。



「ギリシャという文明世界全体の戦乱・衰亡を救ったのは、文明世界の諸国連盟」であったと
言われています。つまり、都市国家(ポリス)が連盟leagueを結んで国家(コスモポリス)の
運営に当たることになったのです。その基盤になったのが、多数決を基本にするデモクラシーです。

但し、その効果が期待できるのは民衆が「公衆」であるという条件下。
「民衆people」には2つあります。しっかりとした意識を持つ「公衆public」と、
烏合の衆とも言える「大衆mass」。

フェイク情報(=デマ)を流し、大衆を扇動する政治を「衆愚政治」というのですが、
これは現在、世界に蔓延しているように見えます。

1920年、第一次世界大戦後の秩序を構築するために誕生したのが「国際連盟」であり、
1946年第二次世界大戦後に生まれたのが「国際連合」です。

これらは古代ギリシャの歴史から学んだ成果であったことを、今にして気づかされました。