あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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信じれば・・・

2014年09月22日 | うんちく・小ネタ



プラセボとは新薬の臨床試験などで使用される「偽薬」のことで、有効成分が入っていない砂糖やデンプンのかたまりのことです。
治験者は新薬か偽薬かわからない状態で薬を投与され、症状を観察されるのですが、新薬の効き目は「新薬効果-偽薬効果」で表現しなければならないとか。つまり偽薬にも結構な比率で「効き目」があるのです。


例えば、うつ病の治療で抗うつ剤による治療効果の80%以上をプラセボ効果で実現できるという報告や、いかなる治療群も35%が偽薬に反応するという報告があります。



プラセボ効果の歴史は古く、18世紀までさかのぼります。ドイツ人医師メスメル「動物磁気」という概念を主張し、磁気を帯びた器具を用いて患者体内の磁気の流れを変えるべくひどい痙攣を起こさせ、症状を劇的に改善させたそうです。

これに疑問を抱いたフランクリンとラボアジエは、1784年に「磁気を帯びた木」をてんかん患者に抱いてもらったところ、同じように痙攣を起こしたと記録にあります。

全く磁気など帯びていない「木」であるにもかかわらず・・・。




この話を聞いて、量販店の空きスペースなどでよく見かける電位治療器の体験会を想像してしまいました。保健所の指導をかわすため数ヶ月単位で場所を変えながら、巧妙なトークで高額な治療器を販売しています。科学的根拠はよくわからないのですが、体験して効果を実感して購入するのですから、プラセボ効果をビジネスに応用した事例といえなくもありません。

電位治療器は極端な例だが、医療の現場でも新たな治療法として偽薬を使用できないか検討が始まっているそうです。ただ、患者を欺き、本物の薬を投与されていると思い込ませることは倫理的にまずいですね。




そこで、患者を欺かないですむ方法の一つとして着目したのが、医師の思いやり。
過敏性腸症候群の患者を対象にした研究では、医師が患者に示す配慮や気遣いが大きいほど、患者は症状が和らいだと回答しています。

フランクリンとラボアジエの態度もプラセボになるということですね。

こうなると食品業界も黙っちゃいない(?)。思いやりと気配りと洗脳で「めちゃくちゃおいしい」と思い込ませる、「プラセボ販促」を考えるのはどうでしょうか。
もちろん、「偽食」が御法度であることは言うまでもありませんが・・・。



レ レレのレ

2014年09月07日 | うんちく・小ネタ



簡潔なビジネス文章の要諦は、少ない言葉で多くの情報を伝えることだと考えています。
そこで役立つのが漢文の素養。

趣や風流には欠けるが、大和言葉に比べて少ない語数ですむ漢文をベースにすると、無駄をそぎ落としたシンプルな文章に到達するのです。

極端な例で言えば、有名な「偶成」の一節


「少年易老学難成 一寸光陰不可軽」
(しょうねんおいやすくがくなりがたし いっすんのこういんかろんずべからず)



たった14文字で、「若者はあっという間に年をとり学ぶべきことを学ばずに終わる。時間を無駄にしてはいけない」という42文字の内容を伝えられています。

あぁ、学生時代にもっと漢文を勉強しておけばよかった。レ点と返り点を見ただけでクラクラしてしまい、漢文の良さに全く気づかなかった・・。まさに、学成りがたし。




いま、そんな毛嫌いしていたレ点が「半強制のレ点ビジネス」というブラックなネタで脚光を浴びているそうです。

携帯電話会社がユーザーに「1ヶ月間無料」の不要なオプションを付け、1ヶ月後の解約忘れを狙うせこいビジネスのこと。あえて解約方法をわかりづらくしているから、多くのユーザーが解約を忘れてオプション料金を払い続けるのです。




店員が申し込み用紙にカタカナの「レ」に似たチェックをするため、「レ点ビジネス」と呼ばれるようになったそうですが、オブション1つにつき1000円程度の販売奨励金が入るわけで、レ点はショップの生命線ということになるとか。

このような不健全商法に手を染めた理由は、やはりショップの採算性悪化。

今や携帯電話市場は成熟期に差し掛かり、出荷台数は激減。その上スマホになって接客時間が膨れあがり、販売効率が悪化しているという背景があるのです。


隣家の黒電話を拝借していた昭和世代にとって、電話を販売する店に人があふれるという状況は今もって理解不能ですが、それならそれで正しく扱いたいもの。


「契約易忘金難成」
(けいやくわすれやすくかねなりがたし)


文章も携帯もレ点には要注意なので・・す。