あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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磯のわかめの立ち乱れ

2013年02月17日 | うんちく・小ネタ

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今から5年程前、ある研究チームが数の子に抗腫瘍活性が存在することを証明し、学会で発表しました。その内容を拡大解釈すれば、「数の子を食べるとガンにならない」ということであり、さらに超楽観的展望だと、「数の子から抗ガン剤ができる」という夢物語でした。

現実的には、子孫繁栄の縁起物としてお正月に数の子を食べる習慣を科学的に証明しただけ・・なのですが、以来、おせち料理の数の子をじっくり噛みしめて味わうようになりました。
そして、今年はわかめも噛みしめました。

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貴重なミネラル供給源であるわかめは、万葉時代にまでさかのぼる縁起物でもあります。北九州市の和布刈(めかり)神社では旧暦元旦の未明に三人の神職が関門海峡のわかめを刈りとって、神前に供える「和布刈神事」が行われていて、710年には神事で供えられたわかめが朝廷に献上されたとの記述が残っています。
また、万葉集にはわかめを含む海藻を詠み込んだ歌が100首近く残されているのですが、その多くは男性が女性に向けて詠む歌に使われているのです。

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「比多潟の 磯のわかめの立ち乱え 我をか待つなも 昨夜も今夜も」…

比多潟の磯のわかめのように、思い乱れて私を待っているのだろうか。昨夜も今夜も。めらめら燃える恋心を、ゆらゆら揺れるわかめになぞらえたのでしょうか。

ならばということで、海藻から燃える水=石油をつくろうとしている研究者たちがいます。筑波大学の渡邊教授が「オーランチオキトリウム」で、神戸大学の榎本教授が「榎本藻」で夢に挑んでいるのですが、現時点では培養液1リットル当たり3~5gの油分が取れる程度で、製造コストは1000円/L(榎本藻の場合)。
これは石油の約20倍にあたります。基礎技術があってもスケールアップが苦手というのが日本の実情ですが、エネルギー問題解決のためにも、ぜひ燃える心で挑戦してもらいたいものです。

数の子を食べて不老長寿を願い、わかめを食べて新エネルギーを想った初春でした。。

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食の感性

2013年02月03日 | うんちく・小ネタ

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つくば市にある国の研究機関、食品総合研究所で食の感性に関する研究が進んでいます。
具体的には、味、におい、食感、外観、偏見、事前情報、食卓同席者等のさまざまな要因が、食の認識にどのような影響を与えるのかを調べる研究で、実験心理学という手法で、人間の心と食の関わりを検証するみたいです。
食品の購買行動に直結する人間の心理が明らかになるのであれば、これは見過ごせません。
気になる成果の一部は、以下のようなものでした。

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◆におい(嗅覚)                                                        嗅覚は、記憶に直結する度合いが最も高く、生い立ちや生活環境で大きく嗜好が異なってくる。例えば、ワカサギと茎ワカメを切って水に浸した溶液のにおいを嗅ぐと、海辺で育った人の多くは「磯や海苔のにおい」と好意的に受け止めるのに対し、内陸部で育った人の多くは「腐敗、下水のにおい」と不快に感じてしまう。

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◆食感(触感)                                                         もちもち、パリパリ、ふんわり等、日本語には食感を表現する単語が445語もあり、これはフランス語の3倍、中国語の2倍。そして、その内の7割が「オノマトペ」と呼ばれる擬音語、擬態語。短歌の世界で作品に広がりを持たせる際の必殺技である。

「サキサキとセロリ噛みいてあどけなき汝を愛する理由はいらず」                                佐佐木幸綱
「君かへす朝の鋪石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」北原白秋

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                                                                   ◆外観(視覚)                                                          霊長類の色彩感覚は熟した果実を検出するために発達したと考えられており、人間の視覚による食品の認識も進化の過程で培われてきたのだ。だから、食材の彩り、盛りつけ、食器のセンスは大事。量販店に並ぶミカンやオクラを包む赤や緑のネット。あれは、「色の同化」という錯視で食材の色を鮮やかに見せるためのテクニックである。

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◆食卓同席者                                                      女性が男性と一緒に食事をする場合、より低カロリーの食品を選択しやすいらしい。低カロリー食品は女性的というステレオタイプ的認知に由来する、印象操作である。

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なるほど。。ピンクのネットで包んだふわふわの花かつおを、低カロリー食品として同伴の卓上に提供しようと目論むこの頃です。