あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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新世界ワイン

2012年10月28日 | うんちく・小ネタ

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チリやアメリカのカリフォルニア、オーストラリアなどのワインは「新世界ワイン」と呼ばれることがあります。
紀元前からワインがつくられていたフランスやイタリアなどと比べれば、その歴史は確かに浅いかもしれません。
でも「新世界ワイン」の中でも古い、チリワインの歴史の始まりは、大航海時代が始まった15世紀頃。決して“歴史が無い”訳ではないのです。

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キリスト教の儀式に用いられるワインは、布教に欠かせない存在。
チリワインの栽培は、キリスト教の司祭によって持ち込まれた苗木から始まりました。
チリの気候はワインの栽培に適しており、1851年に「チリのぶどう栽培の父」と呼ばれるシルヴェストーレ・オチャガビアが、フランスから高級ぶどう品種を導入して以来、より本格化していきました。

何よりチリワインの特徴を決定づけたのが19世紀後半のこと。
この時「フィロキセラ」というブドウにつく害虫が大流行し、ヨーロッパのワインは滅亡の危機に瀕しました。
しかし、チリは西に大西洋、東にアンデス山脈、北に砂漠、南に南極と、自然の要塞で囲まれていたため、この害を受けなかったのです。

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フィロキセラの発生以降のヨーロッパでは、この虫に耐性の強いアメリカ種のブドウに接ぎ木して苗を育てるようになりました。
しかし、チリは今でも接ぎ木無しで植えられていて、フィロキセラ大発生以前のピュアな品種特性が味わえる、大変貴重な産地となっています。

近年、ワインの品質も飛躍的に向上し、より注目の集まるチリワイン。その奥深い魅力をゆっくりと味わってみたいですね。

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やりにくい世の中なのです

2012年10月14日 | うんちく・小ネタ

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食に関するエッセイの名手が池波正太郎であることは言うまでもなく、伝説の名著「むかしの味(新潮文庫)」片手に銀座を食べ歩いた輩がいることを聞いたことがあります。

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そして、料理小説「食道楽(岩波文庫)」の著者、村井弦斎。
明治後期に大ベストセラーとなった本書ですが、なんと食育を勧めるくだりがあるのです。

「体育の根源も食物にあるし、智育の根源も食物にある。してみると、徳育よりも智育よりも体育よりも食育が大切ではないか」

その上、病気の治療に効果があるとされる料理が数多く紹介されていたものですから、日露戦争の出征兵士への贈り物になったり、中流家庭の嫁入り道具になったりもしたのだとか。

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そんな村井先生が、普及に努めた最高の食材ベスト3が 卵、豚肉、クルミでした。

「消費量によって国の文化が知れる」卵、 「安価で栄養満点の」豚肉、 「天然物の食料品の中で最も滋養分が多くて、体に有益な」クルミ。

ならばということで、この3つの食材を同時に使用するメニューを試作する食品加工メーカーがありました。

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まずはベーシックな「豚肉のクルミ揚げ」。叩いて下味を付けた豚肉を溶き卵+片栗粉に漬け、クルミをまぶして揚げます。まあまあの味。外観はクジラの竜田揚げみたいです。

次に、オリジナルの「焼き豚クルミ味噌丼」。味噌、酒、みりん、砂糖、叩いたクルミを鍋で加熱しながら混ぜ、最後に卵黄を加えます。これを焼き豚丼にトッピングして完成。クルミ味噌がアクセントになって美味しい・・。
試食会ではまあまあ好評だったそうですが、若手社員に釘を刺されたのでやめることに。

「卵、豚肉、クルミは3つともアレルギー物質ですよ」  とのこと。

村井弦斎先生もびっくりの、やりにくい世の中なのです。

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