あんなこと こんなこと 京からの独り言

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あの時、しっかり学んでおけば

2018年12月17日 | うんちく・小ネタ


大学時代、何の興味も持てなかった文化人類学の講義。単位を取るためだけにあるような教養課程において、その象徴のような学問だと思っていました。
ところが、社会の垢にまみれながら本や映画や傑物との出会いが数十年ばかし堆積した今日、ちょっとだけ文化人類学を学んでみたくなりました。



民族、宗教、イデオロギー、言語と進化、戦争と平和、文化と文明。
そんな知的好奇心を満たすTV番組があったのです。

「ダイアモンド博士のヒトの秘密」というタイトルで、全12回にわたって講師をしてくれたのが、「人間はどこまでチンパンジーか? 人類進化の栄光と翳り」「銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎」等の著書で有名なUCLAのジャレド・ダイアモンド博士。



各回のタイトルを見ただけでワクワクします。
「1.6%のドラマ」「動物のコトバ、ヒトの言語」「夫婦の起源」「不思議いっぱい ヒトの寿命」「農業は人類に何をもたらしたか」「進化から見た文明格差」「地球外生命体も進化する?」



第1回目の講義を紹介すると・・・、ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いは僅か1.6%であり、宇宙人から見ればヒトは「第3のチンパンジー」であるという内容。
ヒトとチンパンジー分かれたのは500万年前。300~200万年前にヒトが2足歩行を始め、アウストラロピテクス、ネアンデルタール、ホモサピエンスに分かれました。



ホモサピエンスが残ったのは、発達した言語を持っていたから。言語があれば計画を立てることができ、他の種より優位に立てる…。

そして、最も興味深かった講義が地球外生命体を論じた回。

大宇宙には他の生命体もいるだろうに、なぜエイリアンが地球にやってこないのかの解説が怖かったのです。



結論は、「高度文明は長続きしないから交わらない」。
地球誕生から45億年、生命誕生から35億年ですが、交信できる文明はマルコーニが無線電信を発明した1901年以降。

しかし、2050年には核戦争と環境破壊で文明は崩壊するというのです。
この間たったの150年。
長続きしない高度文明では異星人どうしが交わる可能性が低すぎるというのです。

え~っ、2050年には文明が崩壊するの?

詳細を学ぶべく、ダイアモンド博士の著書を読みあさる今日この頃です。


映画好き

2018年12月02日 | うんちく・小ネタ



動物の中には「群れ」をつくる種がいます。
一見、弱い動物たちが自然界で生き残るために仲良く助け合っているように見える「群れ」ですが、英国のハミルトン博士は1971年に次のように異説を唱えました。

「生物の群れは、集まってくる一匹ずつの個体が自ら利己的にふるまった結果、でき上がる」



例えば2羽の小鳥が空を飛んでいるとして、もう1羽の小鳥が新たに飛ぼうとする時、すでに飛んでいる2羽の間を飛ぶのが最も安全なのです。

なぜなら天敵の猛禽類が真っ先に目を付けるのは外側にいる鳥だから・・・。

さらに新たな1羽が3羽の間に入り、自然と群れができ上がります。
そして、群れの真ん中にいる鳥が最も安全なポジションを確保することになるのです。



ハミルトン博士はこれを「セルフィッシュ・ハード(利己的な群れ)」と表現しました。

常に命の危険にさらされる弱い動物は群れを作り、隣人を犠牲にして生き残ろうとするしたたかな野郎なんですね。



この話を聞いて、最近見た映画「007ドクター・ノオ(1962)」のショーン・コネリーを思い出しました。
一匹狼の強さを持ちながら、時に群衆に紛れ、時にボンドガールに隠れて敵に向かうジェームスボンド。
昔のシリーズほど「利己的な群れ」で生き残るシーンが多かったように思います。

   
 

ショーン・コネリーだけじゃありません。

酒場の1人酒が似合いすぎる「カサブランカ(1942)」のハンフリー・ボガート。

寝台列車で群衆に紛れた「北北西に進路を取れ(1959)」のゲーリー・クーパー。

無口でむさくるしい浪人に男を感じた「椿三十郎(1962)」の三船敏郎。

群れながらも孤独だった「大脱走(1963)」のスティーブ・マックイーン。

家族と食卓を囲むシーンでドンの風格を漂わせた「ゴットファーザー(1972)」のマーロン・ブランド。



どの男優も群れとうまく関わった渋すぎる一匹狼でした。

男前という大前提が必須だとは思うのですが、CGも特撮もない昔の映画だからこそ、動物的な色気がスクリーンから立ち上がるのではないでしょうか。

ハミルトン博士も、映画好きに違いないと思った次第です。