あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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感情を読み取る

2015年02月16日 | うんちく・小ネタ



人は、顔の表情や身振り、声の調子などから相手の感情を読むことが出来ます。
当然のことだが、他者の心理状態をうまく感知できなければ良好な人間関係は構築できず、「空気が読めない人」というレッテルを貼られてしまうのです。
身近な交友関係はもちろん、国家の安全保障さえも感情の察知力に左右される場合があり、米国では人の顔に表れる感情が読み取れるよう、警察官や警備関係者を毎年数百万ドルかけて訓練しているとか。
時代を遡って大河ドラマ「軍師官兵衛」の演出でも、家臣たちが織田信長の表情を読みながら「親方さま」の思考回路にシンクロしようと苦労するシーンをよく見かけました。




当たり前の意見を述べるイエスマンでは登用されませんし、勇気を出して逆目を張って逆鱗に触れたのでは首が飛んでしまいます。
その絶妙なバランス感覚で出世街道を爆走したのが豊臣秀吉ですが、きっと親方さまの感情を読む力が長けていたに違いありません。

ある年、安土城下で行われた大相撲興行で、結びの一番終了後の観客が出口に殺到して将棋倒しになり、けが人が多数発生したと記録に残されていました。

家臣たちは、「道を広げてほしい」「警備員を増やしてほしい」などと、コストのかかる対策ばかりを陳情したようです。



当然、信長の表情が険しくなり、察知した秀吉は「金のかかることばかり申して親方さまを困らせるな」とフォロー。
代案のなかった秀吉は信長から打擲されるのですが、「サルの言う通りじゃ」とその場がなごんだとありました。



結局、信長のアイディアで結びの一番の後に別の興行を設けて帰る人の分散化を図り、コストをかけない安全運行に成功します。
この「別の興行」は『弓取り式』として現代の大相撲にまで継承されています。





「さすが親方さまじゃ~」と歓喜する秀吉。
『弓取り式』は絶妙なるその場の秀吉の判断がもとになり、時代を超えて続く行事になったのですから、感情を読む力は偉大な効果を発するのだといえそうです。

現代の会議でも似たような光景を見た気がします。
警察官もFBIもサラリーマンも、デジタル時代だからこそ顔を突き合わせるコミュニケーション力が重要なのです。


最強種

2015年02月01日 | うんちく・小ネタ




横浜国立大学の研究チームが、「都会で暮らせる人、暮らせない人」というおもしろい研究成果を日本生態学会で発表しました。


具体的には野生動物が対象で、多摩丘陵と房総半島の都市化エリアにセンサーカメラを設置し、タヌキやアライグマ等のどのような特性が都市環境に適応しているのかを調査する内容です。
結論は、「雑食性で体のサイズは小さいが繁殖力が強く、樹上で生活できる」ことが都会暮らしの哺乳類に必要な条件でした。



ふと、イソップ寓話「田舎のネズミと町のネズミ」を思い出しました。町でごちそうを食べようとすると人間がやってきて、狭い穴から一目散に逃げるシーンがあります。
「いくらすばらしいごちそうがあっても、こんなに危険な場所では暮らせません」と帰り支度をする田舎ネズミのセリフがメタファーとなって、本当の幸せとは何かを読者に問いかける冒険譚でした。



一方、鹿児島大学農学部の研究チームは街路樹のポプラを使って同様の研究を行ったのです。
遺伝的に同一のクローンポプラを田舎と都会に植樹し3年間の成長を調べたところ、都会のポプラの方が2倍も成長が早かったとか。都会では多量の窒素酸化物がオゾンと反応し、田舎よりオゾン濃度が低くなっていることが要因らしいのです。

有害な窒素酸化物のおかげでこれまた有害なオゾンが減り、結果、ポプラがよく育ったということ。毒をもって毒を制す。どうりで皇居や御苑の緑が深いはずです。



都会のサラリーマンはどうでしょうか。
横浜国大の研究よろしくホームの混雑を軽快にすり抜け、駅前の居酒屋で何でも食べて高層マンションの寝床に戻る。そして、鹿児島大の研究成果を取り入れるなら、過酷な満員電車通勤や交通渋滞も適度な「毒」となって都会のサラリーマンをたくましくする・・・。



快適すぎる気候や快適すぎる環境はかえって体を老化させるわけで、一見不健康に見える都会のサラリーマンの方が存外長命なのかも知れません。
近い将来、過酷な都市部で生き抜く最強種として、都会のサラリーマンが学会発表される日が来るかも?。