あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

百獣屋

2011年11月28日 | うんちく・小ネタ

    2_2

44_11_3 
日本人が肉を本格的に食べ始めたのは明治維新以降。西洋の食文化の影響を受けて、すき焼きの起源ともいわれる牛鍋やトンカツなどの肉料理が登場します。

1_8

                                                             ただ、西洋文化が入ってきたからといって、普通はすぐに「西洋料理は肉だ」となる訳ありません。何の抵抗感も無く日本に肉料理が浸透できたのは、表向きには肉食を忌避しつつも肉を食べる習慣があったからのようです。

  12_11_2 

明治維新前の江戸時代にも猪、鹿、兎、熊、狸、牛などの肉が食用として提供されていました。ただ、やはり肉を食べることは人目をはばかったようで、猪肉を「牡丹」「山鯨(やまくじら)」、鹿肉を「紅葉」などと呼んで自他に対して誤魔化し(言い訳)をしていました。

66_11

ところで、江戸時代にこれらの肉を扱っていた店は、様々な獣の肉を提供する店という意味から「百獣屋(ももんじや)」と呼ばれていたそうです。

3

一方、尾のある獣や毛深い獣を嫌って、関東でお化けを意味する「モモンジイ」と呼んだことから、それらの肉を扱う店も「ももんじ屋」と呼ぶようになったという説もあるそうです。
言葉通り、妖怪を売ってるお店だったら覗きにくらいなら行ってみたいものです。

1_2
  享保3年(1718)創業の猪料理店 (東京墨田区両国)

コメント (130)

チョコレートは発酵食品

2011年11月14日 | うんちく・小ネタ

     3
                                                                日本の伝統食品は、その多くが発酵食品です。
味噌、醤油、酒、みりん、納豆、鮒寿司、かつお節…。
たまたま微生物に侵されてしまった貴重な食材を捨てずになんとか活用したいという日本人の知恵と、それを後押ししたのが温暖湿潤気候でしょう。

このような文化人類学的背景の帰結として、稲藁に包んだ煮豆が藁の菌で納豆になり、江戸に下したかつお節にかびが生えて枯節になりました。
それは、発酵食品は緻密で、粘り強くて、ちょっとだけアバウトな日本人の得意技だと思っていました。

しかし、熱帯地方にも世界に広がる発酵食品があったのです。

 4

なんと、チョコレートです。

厳密にはカカオ豆の発酵が灼熱の赤道直下で行われているということなのですが、恥ずかしながらチョコレートが発酵食品だとは知りませんでした。
しかも、熱帯地方での発酵。

 5

無知を反省しつつ、発酵過程を調べて見ました。
まず、ラグビーボール大のカカオの実「カカオポッド」から、カカオ豆とパルプを取り出します。
この時使用するナイフや農民の手、発酵設備の木箱とそれを覆うバナナの葉などに発酵菌(酵母、乳酸菌、酢酸菌)が常在していて、パルプの糖分を栄養源として4~7日間程度の発酵が進行。

発酵の目的は、香り付け、色付け(発酵前のカカオ豆は白い)、渋味と苦味の除去などですが、チョコレートメーカーの研究者をして「デタラメ」と言わしめたらしい熱帯地域のいい加減な発酵で、最終商品が規格内に収まるのは神業だそうです。

     2_2 

ちなみに、発酵以降の工程は気温が高すぎるとチョコレートが溶けてしまうため、温帯地方でしか行えないのだとか。

そもそも発酵は目に見えない微生物の仕事で、所詮はブラックボックスで謎に包まれた工程なのです。
しかし、それをコントロールして安全な加工食品に仕上げ、食卓に提供するのがメーカーの仕事。デタラメはまずいですが、ある程度のアバウトを受け入れる鷹揚さがないと、発酵食品は扱えないといえそうです。

   1_2 

ちょっとビターなチョコレートをかじりながら、はるか熱帯の微生物に思いを馳せたいと思った秋の夜でした。

 6_2 

コメント (137)