あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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早起きしたい時は赤身

2010年06月28日 | うんちく・小ネタ

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 294c                                   地球上の多くの生物は、1日周期の体内時計を持っています。
人間の体内時計は約25時間周期であり、光の情報を頼りに1時間の時計のズレを修正しているのです。
だから、真っ暗な状態よりカーテンを開けて朝日を浴びた方が目覚めがいいわけです。

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そして、最近の研究で、食事にも時計を調整する機能があることが明らかになってきました。

マウスに脂肪分の多い餌を与えると、23.5時間周期の体内時計が長くなり、生活のリズムが乱れるのだとか。
また、餌に高脂血症治療薬を混ぜると周期が3時間程度早くなり、早起きになるそうです。

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つまり、食事によって脂質代謝を変化させるだけで、体内時計も動くことがわかったのです。
脂っぽいものばかり食べていると、ぐうたら生活になってしまう・・ということ・・ですね。シメの焼肉は胃の負担だけでなく、目覚めにも影響していたのです。
  
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戦前の日本ではマグロは赤身が極上とされ、「アブ」と呼ばれていたトロは見向きもされませんでした。
みんな早起きな時代でした。
また、当時の食事は塩分がかなり高かったのですが、この高塩分食にも体内時計を早める働きがあったのだそうです。

  「朝だ夜明けだ潮の息吹 

      うんと吸い込むあかがね色の 

              胸に若さの漲る誇り」                                                                                   

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月月火水木金金の艦隊勤務は、低脂肪と高塩分の食生活が支えていたのかもしれません。

今後、食事と体内時計の研究が進むと、国際線の機内食が時差ボケを防ぐメニューになり、提供時間も工夫されるに違いないでしょう。

このような「時間栄養学」に期待が集まっているのだそうです。

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原色の記憶

2010年06月21日 | うんちく・小ネタ

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                                                                 昔日の記憶が時にセピア色になるのは、その方が映像として美しいと脳が都合よく解釈するからかもしれません。

黒ニスの板塀、灰色の煙突、褐色のどぶ川…。確かに、色のない昭和の原風景をカラー映像にしたところで、リアルな貧乏長屋が蘇ってなんだか哀しくさせるだけです。

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そんなモノトーンの記憶の中で異彩を放つ商品が3つあります。

夏の朝、庭の井戸水で歯を磨く祖父の歯磨き粉は「タバコライオン」で、コップは「ワンカップ大関」の空き瓶。
そこに、夏休みの工作で行き詰まった子供がランニングシャツに短パン姿で、「木工用ボンド」片手に現れます。

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タバコライオンの赤、ワンカップ大関の青、木工用ボンドの黄。この3つの原色は、記憶のランドマークとして定着すると同時に、平成の今も各企業の定番商品として燦然と輝いています。

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タバコライオン(昭和37年発売)。長方形の真っ赤な容器に入った粉末タイプのヤニ取り歯磨き。歯磨き粉というくらいですから、粉末タイプが正統。タバコライオンの発展系として、チューブ入りの「ザクトライオン」も発売されているようですが、やはりここは粉末でないといけません。

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                                                                ワンカップ大関(昭和39年発売)。一升瓶が主流の時代にコップ酒を提案し、発売15年で年間1億本を達成した大ヒット商品。
青地に白で書かれた「One CUP」のデザインは今でも斬新です。

木工用ボンド(現在の黄色い容器は昭和47年発売)。何とも言えないボンドの匂い。白濁の液体が透明になる不思議。工作の友は、空き瓶やかまぼこ板と共に夏休みの風物詩でした。今は商品名が「ボンド木工用」になっていて、ちょっと寂しい・・ですね。 
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優れたデザインは生活と一体化し、記憶の風景に溶け込みます。
セピア色にするにはもったいない原色もあるのだと思いました。

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菩薩フォルム

2010年06月14日 | うんちく・小ネタ

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時々、フィギアスケートの浅田真央選手が菩薩さまに見えてきて、競技の結果に関わらず、その存在をありがたく感じることがありました。
とにかく不思議な安心感(?)があるのです。
日本人はこういう身を委ねたくなるような、ありがたい安心感にとかく弱いとか…。
この感覚をクルマのデザインに生かしてヒットしたのが、1988年発売の初代日産シーマ。バブルの象徴的高級車は、鎌倉大仏の安心感が基本コンセプトだったそうですね。
日本人は大仏さまの巨大な膝の安定感に、心底安らぎを感じるとかで、膝のカーブを徹底的に解析して、シーマの曲線美に反映させたとのこと。なるほど、高級車=安心感という切り口を日本人の宗教観に落とし込んだ開発者のセンスはすごいですね。

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                                                                   ならば、菩薩さまの安心感を商品パッケージの曲線に生かしてはどうか・・。
食品の世界で曲線美といえば、やはりコカ・コーラの「コンツアーボトル」でしょう。
「曲線の傑作」という二つ名を持つこのボトルが世に出たのは1916年、日本上陸は1956年。開発コンセプトは「暗闇で触ったときにもそれがコカ・コーラのボトルとわかるもの」。  そして、モデルはココア豆。・・・菩薩さまでは・・なかったですね。

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                                                                 ならば、1961年に栄久庵憲司氏のデザインで世に出たキッコーマンの醤油ボトルはどうか。モデルは不明ですが、あのどっしりとした安定感とふくらみのある曲線。もしかして菩薩さまかなと思ってしまいます。

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                                                                  食品の安全安心が不条理なほど過剰に叫ばれる昨今、菩薩さまの安心感におすがりするパッケージデザインは正しい選択かも知れません。
もちろん、シーマがそうだったように、菩薩さまの力をお借りするからには、真の安全安心と信頼感を追求した、覚悟ある中身にしなければなりません。
                                                                 浅田菩薩を見るたびに、そんなことを考えてしまうこの頃です。

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付加価値

2010年06月07日 | うんちく・小ネタ

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庭園での演出に、なんと2万円のお代を付ける料亭が京都にあるそうです。
夕闇が迫る頃、美しい女性が池のほとりにぼんぼりを置くと、その柔らかな光が水面を走って座敷に届き、庭の光景が一変する。この一瞬を味わうと、1人2万円プラスになるらしいのです。

ものすごい贅沢ですが、客が絶えないというのですから、暴利ではなく付加価値といえるのかも知れません。                                                        道楽ではなく経済・・なのですね。

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ならば私にも、2万円かけて味わってみたい付加価値があります。ただし、小説の世界ですが・・・。

それは、藤原伊織のハードボイルド小説「テロリストのパラソル」に登場する新宿の「吾兵衛」というバーのホットドッグです。
注文があってからキャベツを切り、フライパンにバターを溶かしてソーセージを軽く炒め、千切りキャベツを放りこんで塩と黒コショウとカレー粉をふりかけ、キャベツをパンにはさんでソーセージを乗せ、オーブンレンジで加熱。頃合いを見て取りだし、ケチャップとマスタードをスプーンで流すというもの。

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1996年にドラマ化された際、ショーケンが吾兵衛のマスター役でこのホットドッグを作っていたのですが、めちゃくちゃに美味しそうだったのです。
京都から新宿まで約2万円の交通費をかけて食べに行く価値は十分にあると思ったくらいでした。

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ところで、「原価なしで付加価値のみ」という商品があります。                            …占いです。
作家の角田光代さんが、取材で10件の占いを受けました。名前と生年月日や時間、生まれた場所のみを伝えた場合、手相、四柱推命、占星術などの占い手法の違いで結果に差が出るかどうかを検証する企画でした。多くの占いの基盤が統計学であることを考えると当然かもしれないのですが、その結果はほとんど同じになったそうです。                            ただし、値段は3000円から2万円までさまざま。                                   「人が目に見えないものを『買って』もいいと思える金額の幅」と角田さんは評していました。

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                                                                 ぼんぼりの光に2万円、ショーケンのホットドッグに2万円、迷える未来に2万円。

付加価値のかたちはさまざまですね。

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