あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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電子書籍と紙の本

2010年11月29日 | うんちく・小ネタ

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電子書籍に関する最近のメディア報道を見ると、首をかしげたくなることがあります。
「電子書籍によって紙の本はなくなるのか」「伝統の文化を消してよいのか‥」など。
全く以て、何ごとも”これが生まれたらこれが消滅する”という二者択一的な論理で語ろうとしています。新しい技術が誕生した時に起きがちなメディアの喰い付き方で、センセーショナルで興味本位の記事が中心となって、紙面を賑わせています。もっと冷静に取材と考察をしてほしいものですが・・・。

紙の本と、電子書籍はその内容や読者の環境によって正しく選択され、共存していくのだと思います。

ITジャーナリスト佐々木俊尚氏の近著「電子書籍の衝撃」を読みました。電子書籍の将来に関する氏の洞察は鋭く、氏はこう言っています。

「決め手はプラットフォームである」重要なのはハード(ブックリーダー)ではなく、プラットフォーム(本を購入して読む魅力的な基盤)である

・・・と。

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これは音楽を例にすると分かりやすいでしょう。
SONYがアップル社の〔iPod+iTunes〕に苦杯をなめた事例を考えるとよいでしょう。
アップルは使いやすい端末と使いやすいオンラインソフトを作り、おまけにきっちりとした課金制度まで確立しました。
これが、氏の言う「プラットフォーム」の大切さでなのです。

「電子書籍は紙を使わずエコである」と言うと、反論が出るかもしれません。
本はブックオフ等を通じて再利用されて読み継がれているのです。
どこが資源のムダなのだ、と。

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私が一番気になるのは、書籍の「返品制度」です。出版社はおびただしい数の本を書店に預け、売れ残ったものは無条件に引き取ります。そういった古い制度が旧態然と続いている現状が今の本販売業界にはあるのです。雑誌の返品率は35%、書籍のそれは40%になるとか。返品された本は、誰の目にも触れられずに廃棄処分されるのでしょう。
再販制度によって、廉価販売の道も閉ざされています。
これくらい売れるだろうという見込み生産で印刷され、ダメだったら廃棄する。この構造こそが、現在の”書籍流通の問題”なのです。

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                                                               しかし、ページをめくる感覚や紙の音、インクの匂い、栞を挟む習慣。マーキングしたり、ページの隅を三角に折ったり、書棚に納めて背表紙が部屋の中のひとつのオブジェになったりする書籍の存在は、まさしく人類の文化の中で最高の宝物であると言ってよいでしょう。

電子書籍のネット販売もすべてがバラ色ではないかもしれません。
作家とネット販売業者と読者だけで、すべてが完結するとは思えないと、問題定義する専門家もいます。

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出版社(編集者)と作家の連係プレーによって優秀な書籍が誕生する場合も多くなるでしょう。
そして、一度デジタル化すれば、いつでもどこでも必要な部数だけダウンロードすることができるのです。これこそ、ムダを生まないエコなシステムだと思うのですが、どうでしょうか?

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都市人口増加一考

2010年11月22日 | うんちく・小ネタ

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『国連世界都市化予測』報告によれば、1900年に2億2000万人(世界総人口の13%)だった都市人口は、1950年には7億3200万人(世界総人口の29%)に、2005年には32億人となり、世界人口の49%が都市に住むようになっています。
同じ報告書によれば、2030年には都市人口は世界人口の60%(49億人)となっていると予測されているようです。

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地域や国における都市部の人口が農村部に比べて増加する都市化・・・。さらに2050年までに、人類の3分の2にあたる60億人以上が都市あるいは町に住むと予測されているほど都市化が進行する予測とか。

都市化に伴い郊外化(住宅が都市外部に移転する動き)など過去に日本で起きた動きも見られますが、無計画で都市が拡大すればスプロール現象(無秩序に拡大)による弊害を生むことにも。

スプロール現象が起きれば、街路が形成されず、虫食い状態に宅地化が進むことになり、道路網が不十分なため自動車の渋滞を招いたり、住宅の密集による災害時の脆弱性などにつながるなど都市機能が低下の懸念が大きくなります。

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しかし、スプロール化した住宅地は、計画性に乏しいが故に逆に土地区画、住宅の種類や形態、住宅の供給年代の多様性をもたらしている面も否定できない一面もあります。
それは、短期には資本や労働などの集約化は生産性を高めるものではありますが、長期には日本でも問題になりつつある水道などの設備の一斉更新やニュータウンの高齢化、企業撤退による職場喪失などがあるためであり、都市政策策定が将来において、吉とでるとは限らないのが現状でもあります。

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都市人口増加が顕著な中国。民族間における問題など過去から引きずる難題も含め、いかに解決策を見いだせるのかが、ひとつの世界的指針になるやも知れません。

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日本人の生活様式を変えたもの

2010年11月15日 | うんちく・小ネタ

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                                                        今夏、「土俵の“鬼”」、元横綱初代若乃花・花田勝治さんの訃報が流れました。
現役時代の凄さを知っている方もいらっしゃるでしょうが、若い方には「若乃花」というよりも、相撲界の重鎮であった「二子山親方」・・と説明した方が良いのかも知れません。
積み重ねた努力や実績に裏打ちされた親方時代の語り口がとても味わい深く、多くの方々に愛されていた方でした。

千代の富士:31回、朝青龍:25回、北の湖:24回、貴乃花:22回…。

そうした優勝回数と比べると若乃花のそれは10回と少ないような気もしますが、記録には表れない強さ・魅力があったのでしょう。

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「洋酒を飲むと足腰が弱くなる。日本酒を飲むと足腰がどっしりする」
二子山親方がそういう意味のことを言っていたと、以前読んだことがあります。

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そういえば、噺家の故・古今亭志ん生も、
「洋酒を飲むとショ〇ベンになるが、日本酒を飲むとウ〇コになる」
と言っていたそうです。
真偽のほどは定かではありませんが、名人・達人がそう言っているのですから、そうなのでしょう(?)。
現在の相撲界についての苦言その他、もっといろいろな話を伺いたかったものです。

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この数十年で日本人の生活様式はずいぶん変わりました。その一つが「トイレ」ではないでしょうか。

私が子供のころ、自宅はもちろん、公共施設などのトイレは圧倒的に和式が多かったのですが、今はどこに行っても洋式が主流です。楽な姿勢で用を足せるのが、普及した理由なのでしょう。実際、公衆トイレに駆け込み、洋式は「使用中」で和式しか空いていなかった時など、なんだかハズレくじを引いてしまった気になります。

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その昔、ある外国人プロレスラーが雑誌のインタビューで「和式のトイレは脚がガクガクして、とてもつらい」と話しているのを読んで、「レスラーのくせに情けないな」と思ったことを覚えていますが、今ならこのレスラーの気持ちがよくわかります。和式のトイレは、このまま日本の社会からどんどん減って「尻すぼみ」の運命をたどる(!?)のかも知れませんね。

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食育

2010年11月08日 | うんちく・小ネタ

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秋の味覚の代表的なものの1つ秋刀魚が、今年は不漁のようです。
秋刀魚が食卓にあがると秋の訪れを感じますが、今年は連日の酷暑のため秋を感じるどころか、まだまだ体は冷たい素麺や冷やし中華を求めています。
そんな折、コンビニでは早々におでんが並び均一セールのおかげか、よく売れているようです。夏、秋、冬の食べ物が混在しているこの時期、体重管理には気をつけたいものですね。


作家小川洋子さんは料理を作ることが好きで、「料理の喜び」という表題のエッセイにこう書いています。
「人生にこれほど創造的でスリリングな営みがあるのに、それを知らないままでいるのはもったいない。」
「皆家に帰って、台所に立ち、愛する人のため、今日一日頑張った自分のために、料理をつくるのだ。偉大な自分の能力を、一皿の美味しい料理のために捧げるのだ。この喜びを知らないでいては、人として生まれてきた甲斐がないではないか。」

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かなり、力が入った文章ですが、私も少々同感です。料理は創造そのもので、アートだと言っても良いでしょう。アートした喜びの後に、食べる喜びもあるのですから止められません。

関西ローカルのお昼のワイドショーに「ちちんぷいぷい」という長寿番組があり、その中にお気に入りのミニコーナーがありました。それは「今日の晩ごはん何?」というもの。

例えば、高校生の女の子が家に電話をかけます。いつもの調子で母親が出ます。娘「今日の晩御飯、なに~?」と訊くと、すると母は「すき焼き~」とか、「たこ焼き~」と答えます。
また、「何がいいの?」と母親が問いかけると娘は「焼き肉~」と、甘えます。
外食に出ようと誘う親もいます。「何にも考えてないけど」と答える母親もいます。
学校や職場を出て家路へ向かう。そんなとき、一家で囲む夕食を想像する・・・。
今晩は何を作って待っていてくれているのだろう? 

これぞまさしく”シアワセの原風景”だと思います。

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反対に、どうにも眉をひそめたくなる食番組が増えてきました。「○○だけを食べて1週間過ごせるか?」「この店の人気ベストテンを当てるまで(食べ続けて)帰れまテン」、そして高級料理を食べて設定金額からハズレた者が全員分の食費を支払う・・・。
何ともお粗末な番組構成企画です。飽食の時代を象徴しているようでもあり、食育どころの話ではありません。食の荒廃が進んでいるのです。
その旗を振っているのが、こういったTVのバラエティ番組だと言えそうです。ラーメンやご当地グルメを扱った番組はそれなりの視聴率が取れます。それをイイことに、局は安易に乗っかかり、結果として「料理」に対する敬意や本来あるべき姿を見失うことになっています。

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テレビ東京の看板番組「TVチャンピオン」が戻ってきました。特番として放映されたテーマは「小学生料理王選手権」。
料理自慢の子供たち30人がマイ包丁を持って集まったそうです。
第1ステージの「オリジナル丼作り」で8名に絞られ、第2ステージの料理の基本技スピード勝負で4名に絞られます。オムレツが思うように作れず泣き出す子や負けた悔しさに号泣する子が続出したとか。
それだけ料理をつくることが好きで、自信があったのでしょう。やはり、親が料理人や料理教室の先生といった環境の子供が多かったみたいで、子供は親の姿を見て育つということかと、我が身を振り返り、今更ながらに反省・・。

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準決勝は自分がゲットした地元の食材を使ってアウトドア料理を作るというもの。鯵を使ったリゾットや、フライパンで作る簡易版の”くんせい料理”など、大人顔負けの創作料理。その結果、お菓子使いがうまい男の子と将来は母親と一緒に立ち呑み屋をやりたいという、おませな小学3年生の女の子が決勝戦へ進みます。

決勝戦は見ごたえがあったようで、テーマは「大胆アレンジ洋食3品勝負」というもので、洋食の定番であるオムライス・コロッケ・ハンバーグを独自のアイデアで創作するもの。中もで感心させられたのは、男の子が作った「大阪風オムライス」で、ボール状に握ったチキンライスを何とタコ焼き器で、溶き卵コーティング。 これは聞いているだけでもスゴイ! 子供ならではの発想力にうなってしまいました。
女の子も負けてはいません。コロッケ対決では、甘鯛をそぼろにしてポテトと混ぜ合わせ、”揚げない”コロッケに。
彼女はメタボなおじいちゃんに食べさせてあげたい、と泣かせる言葉を添えたそうです。(大人の演出でないことを祈りたいですが・・)
大接戦になった実力派同士の対決は最年少の女の子が優勝し、小学生料理王のトロフィーを手にしたようです。

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お釜でご飯を炊いたり、”焼かない”ハンバーグを作ったりと、ややヘルシー指向に走りすぎているのかもしれませんが、末楽しい子供の姿に感動を覚えます。
こんな風に自分の目で食材を選び、工夫をして料理を作る子供たちが増えれば、日本の未来は明るいでしょう。

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社長は何系

2010年11月01日 | うんちく・小ネタ

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日本は文系優位の社会構造だと言われています。
多くの企業経営者が文系出身で、上場企業の社長の理系比率は3割にも満たないそうです。また、自然科学系の公的研究機関でも文系がトップになることが多いとか。たまに理系出身の政治家が総理になって大変な騒動を引き起こすものだから、ますます「理系には任せられない」状況となっているの・・でしょうか。(まさか・・)

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では、なぜ理系は経営者に不向きなのか。
まず、銭勘定ができない。理系の行動規範は常に真理の追求であり、フィールドは大自然で、気持ちは昆虫採集に興じる少年のまま。
ある意味オタク。実験データから法則を見いだすことはできても、損益計算書から限界利益率をはじくことには、想定や推測等も必要で苦手。加えて、データが全てだから融通が利かず、経営のためには時に「はったり」も必要でも、そんなマッドサイエンティスト的行為は、「錬金術師に身を落とすのか」と頑なに拒んでいたり・・・。(やや無茶苦茶な推論ですが・・・)

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理系不遇の我が国の産業界ですが、自分の技術や研究成果を活かして独立し、社長になった4人の技術者が専門誌で紹介されていました。
プラズマディスプレイの「篠田プラズマ」篠田社長(富士通OB)、リチウムイオン電池の「エナックス」小沢社長(ソニーOB)、量子ドットレーザーの「QDレーザー」菅原社長(富士通研究所OB)、半導体の「ザインエレクトロニクス」飯塚社長(東芝OB)。

世界最先端の技術を持って安定大企業を飛び出し、やりたいことに人生をかけた技術者たちは、その後の銭勘定の苦難や、「はったり」の修羅場をどうくぐり抜けたのかを聞いてみたいものです。

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エナックス社のリチュームイオン電池使用車

                                         

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ザインエレクトロニクス社の半導体

                                                                 ふと、1990年にフジテレビ系列で放送された「ラストダンス」というドラマを思い出しました。化学会社に勤める地味で真面目な研究員「真田左平」が特許を取得して12億円の大金を手にし、副社長として経営に参画。結果、さまざまなドロドロに巻き込まれ、人生が狂ってしまうというストーリーを主演の児玉清さんが悩める技術者を見事に演じていました。くわばらくわばら。まずは、銭勘定のできるビジネスマンをまだまだ目指そうと思いました。

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