あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
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手順よくチャチャチャとやれますか?

2017年09月17日 | うんちく・小ネタ



大学生が地域の特産品を活用して加工食品を開発するというプロジェクトがありました。
地元の食材を使った加工食品を試行錯誤しながら、大学生たちが試作しているのはこだわりの手料理であり、これを加工食品に昇格させるには大きな壁がいくつもあります。



 
こだわり手料理は、贅沢でレアな食材を調理し目の前のあなたにその場で提供する。
 加工食品は、安価で安定確保できる原料を加工し全国不特定多数に供給する。
 こだわり手料理は、手間ひまかけてじっくりとブレを楽しみながら調理する。
 加工食品は、効率と歩留りと生産性を追求していつも同じ味に加工する。
 こだわり手料理は、できたてを提供する。できればカウンターで。
 加工食品は、殺菌して出荷する。できれば賞味期間1年で。
 


あぁ、食品メーカーはこんな難儀な壁を超えているのかと、あらためて思い知らされました。



つまり、こだわり手料理と加工食品は対極。

目の前にいる人に炊きたてのアツアツご飯を出せば、たいてい「うまい」と言ってくれるものが、全国津々浦々に何万という数の加工食品として送り出せば、当然「まずい」という叱責も浴びるのです。

これは、手紙と論文の関係に似ています。
 

 
気持ちに糸目を付けず、切ない感情をそのまま伝える手紙。
 心を整え、素材を整理して論理的に組み立てる論文。
 時間をかけ、特定の相手を想いながら訥々と綴る手紙。
 無駄を避け、不特定の相手に考察と主張を伝える論文。
 翌日読むと恥ずかしくなる手紙。
 何年たっても評価のぶれない論文。



こうやって比べると、加工食品と論文はドライで味気ないものに見えてしまいますが、料理や手紙に込めるような熱い思いを注がなければ売れる作品にはなりません。



そんなこともあってか、ある加工食品会社の入社選抜試験では、小論文の代わりに料理を課題としているそうです。
美味しさは不問らしいのですが、食材選びのセンス、調理の段取り、試食会でのプレゼン力などを評価し、加工食品開発の技量を見抜くそうです。
 
採否の決め手は、何よりも段取りの良さ。「段取り力は仕事力」なのだそうです。



新東京お土産菓子?

2017年09月03日 | うんちく・小ネタ



京都のお土産ランキングだと、100選とか50選なんていうものもあり、数が多くてどれが上位定番商品なのか、悩んでしまいますが、東京は意外と定番となるお土産菓子が少ないようです。

それでも、「喜ばれるお土産ランキング東京編」・・・っていう調査をすると必ず上位に選ばれるのが「東京ばな奈見ぃつけたっ」。
スポンジケーキ+バナナカスタードクリームで8個入り1080円。
お土産とは言っても、特別な東京とのつながりはないようですが、1991年の発売以来売り上げを伸ばして今や年間生産量3000万本だそうです。
敷居の低さで「買いやすさ」を演出し、昭和のバナナ世代にダーゲットを絞ったマーケティング戦略がよかったのかも知れません。



そう、昭和の日本人はバナナに弱いのです。

病気の時しかバナナを食べられなかった人。
遠足の時、バナナはおやつかどうか迷った人。
バナナの叩き売りに吸い寄せられた人…。

さっちゃんだけじゃない。
みんなバナナが好きなんです。

ところで、バナナは大学の農学部における育種学講義ネタとしても絶大なる人気を誇るとか。
それは、何もしなくても種なしだから。



ふつう、植物が子孫を残すために生殖細胞を作る場合、減数分裂を起こし染色体の数が2組から1組になります。
この生殖細胞が別の個体の生殖細胞と合体して染色体の数が元に戻るのです。両親の性質を受け継いだ新しい個体「2倍体」の誕生です。

ところが、まれに染色体が2組のまま合体し、合計4組できてしまう場合があります。

これは「4倍体」。
4倍体が減数分裂した生殖細胞と、2倍体が減数分裂した生殖細胞が出会うと、2+1で「3倍体」ができます。
3倍体は染色体のセット数が奇数だから正常な減数分裂が起こらないわけです。
だから生殖細胞ができず、種もない・・・。
ふだん食べているバナナは3倍体ということですね。



バナナは自然交配の末に偶然3倍体となった種なしのお手本なのです(ちなみに種なしスイカは人工的に3倍体をつくります)。
そんなお手本3倍体のバナナですが、種がないことが欠点にもなります。種がないバナナを殖やすには株分けしかありません。

なので、遺伝的に全く同じものだらけ。遺伝子の多様性がないということは病気に弱く、絶滅も考えられなくはないのです。

もし絶滅したら、また3倍体バナナを探そうではないですか。

「3倍体バナナ見ぃつけたっ」

こんな商品名でお土産菓子を作ったら売れるかな・・・。