あんなこと こんなこと 京からの独り言

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このまま

2020年10月15日 | うんちく・小ネタ

  

夕暮れ時に民家の間を縫うように走るひなびたローカル線に乗っる機会があると、
車内で必ず頭をよぎる妄想があります。

「このまま失踪してみたい」

自分のことなど誰一人知らない異郷の地で、一からやり直す。染みついた垢と
しがらみを捨て、リセットした自分を想像してみるのです。
詮無い願望ではあるのですが、ささやかな鉄旅の一興としては悪くはありません。

そんな願望を叶えてくれるのが、アランジアロンゾ著の写真絵本の
「どこへいくカッパくん(角川書店)」。



主人公のカッパくんは、ある日なんだか切なくなって朝一番の電車で海に向かいます。
そして、車中で居眠りして見た変な夢で、もうひとりの自分がこう提案します。


「いい考えがある このまま失踪する で、やりなおす」

・・・




そういえば、どこでやりなおしているかは不明なのですが、2006年に突然失踪してしまった
生物がありました。

ミツバチです。

当時、世界中で不可解なミツバチの失踪が相次ぎ、数百万もの巣箱が空になり、
授粉を必要とする100種類近くの作物が危機に瀕したのです。
日本国内でもミツバチ不足は深刻で、イチゴ、メロン、スイカなどの栽培に影響が
出ていました(日本で飼育されているミツバチの約2割が授粉用)。
ミツバチ泥棒なんて一見メルヘン(?)な犯罪も発生したりしてます。



全世界におけるミツバチの授粉作業を労働コストに換算すると2150億ドルにも
なるとか。つまり、ミツバチがいなくなれば、この金額がそのまま農作物の単価に
乗ってくるのです。

また、アインシュタインの「ハチが地球上からいなくなると人間は4年以上生きられない」
という真偽不明の予言まで取り上げられたりしていました。



2013年に失踪の原因はネオニコチノイド系農薬だとEUが発表しましたが、反論
も多く、確定はしていないそうです。

そう。ならば、ぜひここに失踪願望説を加えてもらいたいものです。

働き続けたミツバチの思い切った行動に、自身を重ねて観て、こう思いました。

「いい考えがある このまま失踪する で、やりなおす」


そんな勇気、どこにもないからこその、敢えての妄想ですが・・・。


10月

2020年10月01日 | うんちく・小ネタ
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