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アート・オブ・ノイズ/ドビュッシーの誘惑

2005年10月16日 23時10分56秒 | ROCK-POP
 アート・オブ・ノイズが復活した。しかも「アン・ダッドリーのAON」ではない、「トレバー・ホーンとホール・モーリーのAON」がである(アン・ダッドリーは参加しているが)。音楽的な内容を一口でいえば、トビッュッシーやドビュッシー風なフレーズ、和音をベースに、モダンなテクノ・ビート組み合わせたものといえる。ただし、ホーン&モーリー復活といっても、聞こえてくる音楽は大方のリスナーから期待されるような、初期のアブストラクトでヘビーなテクノ・ビートはそれほどでもなく、どちらかといえば、理知的な音楽センスと独特な音響美を全面に出した「アン・ダッドリーのAON」を再びトレバー・ホーンがブロデュースしたような仕上がりといえる。

 具体的に云えば、ダッドリーが引くクラシカルなピアノ、サリー・ブラッドショウという人のオペラ風なヴォーカル、無数ナレーション、ラップ、AOR風ないかにもいかにもなサックス、アンビエント風なシンセ、アナログっぽいギター・サウンドなどが、近年現れたあらゆるテクノ・ビートにのっかってコラージュされた音楽といった風情だが、ドビュッシーの様々な楽曲からの引用を含めた静的なリラクゼーション感覚と、時に脅迫的暴力的ともいえるリズムの躍動感の精緻に耕筰する様は新しいAONの眼目といえようか。この妙なる不思議な調和感のようなものは、大げさでもなんでもなく目がくらむほど素晴らしいものだ。その様は、まるで80年代にAoNが登場して以来の10年間のテクノ・ビートを総括しつつ、ついでにドビュッシーを出発点とし、AONを終末点とした今世紀の音楽そのものをも総括してしまおうと、なにやらニヤニヤしながらたくらんでいるようでもある。
 ともあれ、このアルバム、大向こう受けする要素はそれほど多くないと思うが、その筋の音楽関係者(?)にはかなりのインパクトがあるのではないだろうか。

 そんなワケで、私にとって本年度No.1は問答無用でこれで決まりですね。ちなみに、これに近い作品だと坂本龍一の「ライフ(シンセ版)」もなかなか良い仕上がりだったが、ある種の下世話さなポップさも含め、こちらの方が数段練達の作品という気がする。ともあれ、その精緻な音の綴れ織りは耳の悦楽である。ちなみに、この作品久しぶりに現れた「極上の夜の音楽」でもある。(1999/12/19)
コメント (4)
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