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ロリン・マゼール / DG初期録音集 1957-1962

2005年10月01日 23時05分52秒 | クラシック(一般)
 今やポジション競争からも一歩引いて、枯淡の巨匠みたいになっているロリン・マゼールだけれども、デビュウ当時はかなり才気渙発な新鋭だったらしい。らしいというのは私がクラシックを集中的に聴いていた1980年代前半頃、既にマゼールはクリーブランド管弦楽団の首席に就任して、どちらかというと危なげのない巨匠一歩手前の中堅という感じの演奏ばかり出していて、人からの評判や雑誌で読んだりするほどに才気渙発とは思わなかった。

 ただ、ウィーン・フィルとの「春の祭典」第2分で大太鼓が連打する場面で、いきなりテンポを落として異様な効果を上げたり、ニュー・フィルハーモニアとの「ボレロ」でフィナーレ直前でこれまたテンポを落とし、フィナーレを印象深いものにしていたとか、そういう部分で才気みたいなものを感じたりはしたけれど、当時、私の聴いた他の作品の大部分、たとえばCBSのマーラーとか、テラークの一連の録音については、ほとんど優等生的なおとなしさしか感じられなかったというのが正直なところだった。

 さて、このボックス・セットはその才気煥発だった頃のマゼールがベルリン・フィルを振った一連の録音を集めた8枚組、当時のマゼールはDGでベルリンの他にもRIAS放送響、EMIでフィルハーモニアやフランス国立管との演奏をレコード化していたから、当時の活動のごく一部ということになると思うが、さすがに相手がベルリンだけあって、ウィーン~オーストリア系の作品が多い。とりあえずディスク1の「運命」を聴いてみた。

 若さにまかせたという感じの猪突猛進な推進力と時折見せる鋭いアクセントが印象的で、第1楽章など荒れ狂う嵐の如き演奏だし、第2楽章の変奏曲でも各変奏の描きわけるというよりこれまたひとつの流れに収束させてしまったような演奏で、節々にデモーニッシュな表情を見せるあたりはなかなかのもの。第3楽章はもはや映像的といいたいような色彩感を感じさせ、「像のダンス」と称されるトリオの部分ももはや像が飛び上がって宙を舞っているようなダイナミズムだし、第4楽章では、ブリリアントな金管テーマをちょっと間延びさせた形で演奏させて、前半は遅めかつ抑圧的な進行、オヤとか思っていると、第3楽章が再現された後、待ってくしたとばかり大爆発する。要するにここまでリスナーを我慢させていたワケで、いやぁ、こういうのが若き日のマゼールの才気だったんだな、と納得することしきり、当時はかなり抵抗もあったろうなと、想像するのに難くないユニークな演奏だ。

 ついでに書けば、これが収録された58年のベルリンといえば、まだカラヤン色に染まっていないフルトヴェングラー統治期の往年の音色を温存していた時期だけあって、ここで聴ける重厚な音色は、それ自体現在ではめったに聴けない高カロリーな質感を感じさせて、マゼール云々は別としてもそれだけでも魅力的だ。
 

[Disc:1}
・ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67 「運命」
・ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
[Disc:2}
・ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 作品90
・ブラームス:悲劇的序曲 作品81
・ベートーヴェン:序曲「献堂式」 作品124
・ベートーヴェン:12のコントルダンス WoO.14
[Disc:3}
・シューベルト:交響曲 第2番 変ロ長調 D.125
・シューベルト:交響曲 第3番 ニ長調 D.200
・シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
[Disc:4}
・シューベルト:交響曲 第5番 変ロ長調 D.485
・シューベルト:交響曲 第6番 ハ長調 D.589
・シューベルト:交響曲 第8番 ロ短調 D.759 「未完成」
[Disc:5}
・モーツァルト:交響曲 第1番 変ホ長調 K.16
・モーツァルト:交響曲 第28番 ハ長調 K.200
・モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
・メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 作品90 「イタリア」
[Disc:6}
・メンデルスゾーン:交響曲 第5番 ニ短調 作品107 「宗教改革」
・ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」 作品17(抜粋)
[Disc:7}
・チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
・チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36
・リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 作品34
[Disc:8}
・プロコフィエフ:バレエ組曲「ロメオとジュリエット」より5曲
・レスピーギ:交響詩「ローマの松」
・ムソルグスキー:交響詩「禿山の一夜」
・ブリテン:青少年のための管弦楽入門 作品34


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